寝ても寝ても眠い原因は? うつ病か過眠症の可能性が

ひたすら寝てしまうのはうつ病?それとも過眠症?

ひたすら寝てしまう原因とは?
なぜいくら寝ても眠いのか

夜間十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中に起きていられないような病的な眠気がある状態を「過眠」といいます。
日中活動している時間帯でも激しい眠気に襲われ居眠りをしてしまったり、眠ると丸一日でも眠り続けられてしまうような症状が見られます。

過眠の原因はいくつか考えられますが、「睡眠中の身体的な症状のために深く眠ることができず、慢性的な睡眠不足になっているタイプ」「 睡眠をコントロールする脳の機能がうまく働かず、日中に激しい眠気が起こるタイプ」などがあります。

病気の症状

過眠は「過眠症」という病気そのものだけでなく、他の病気の一つの症状として現れることもあります。

  • ・睡眠時無呼吸症候群

    睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止を繰り返す睡眠障害です。
    肥満体型の人が発症しやすいのが特徴ですが、痩せていてもあごが小さい人は睡眠時無呼吸症候群になりやすい傾向があります。
    睡眠時なので本人にあまり自覚がないことが多いですが、息苦しさによって一晩中「睡眠→無呼吸→覚醒→睡眠」を繰り返すため、常に眠りが浅く日中も激しい眠気に襲われやすいでしょう。

  • ・ナルコレプシー

    ナルコレプシーは、日中に突然眠り込む睡眠発作が特徴的な睡眠障害です。
    危険な作業中や食事中など、通常では考えられない場面で強烈な眠気に襲われて、居眠りしてしまうような場合はナルコプシーが疑われます。
    また、笑った時、うれしい時、得意気になった時、不意の出来事が起こった時、怒った時など感情の変化が生じた時、ふいに力が抜ける「情動脱力発作」が起こることも特徴です。
    入眠時に、いわゆる「金縛り」と呼ばれる麻痺状態に陥ったり、幻覚が生じたりする傾向もあります。

  • ・うつ病

    うつ病は代表的な精神疾患で、気分障害の一つです。
    精神症状のみならず、身体の不調を感じることが受診のきっかけになることも少なくありません。身体症状としては、過眠以外にも、不眠・食欲の変化・身体のだるさなどが特に訴えの多い症状です。

日常生活上の問題

生活環境と睡眠には深い関係があり、なんの前触れもない過眠は生活環境の改善によって治る可能性があります。

  • ・睡眠不足

    仕事や育児などに追われて慢性的に睡眠不足の状態。長期間にわたって睡眠不足が続くと、睡眠不足症候群などの病気が発症する可能性も。

  • ・睡眠の質を低下させる環境

    音、光、温度、湿度、寝具などの原因によって、睡眠がおびやかされている状態。
    好きな音楽やテレビであっても、その音が睡眠の質を下げているケースはよく見られます。
    寝る前にスマホの光(ブルーライト)を見ていると脳が休眠状態に入れないことも問題視されていますので気をつけましょう。

  • ・食べたり飲んだりしたものの影響

    アルコール、カフェイン、抗アレルギー薬、睡眠薬などを摂取すると、眠りが浅くなったり目覚めた後も体がだるかったりと眠くなる原因がつくられます。

うつ病になると1日中寝てしまう場合があるのはなぜ?

うつ病になると1日中寝てしまう場合があるのはなぜ?

うつ病になると「一日中よく眠る」というのはよくある症状の一つ。
人はストレスを感じたりつらい出来事が起こったりすると、「その場から立ち去りたい」という欲求にかられ物理的にも精神的にも逃げたくなることがあります。うつ病における眠るという行為はその逃避の1パターン。
「寝逃げ」とも言われており、人間にもともと備わっている防衛本能でもあります。

睡眠は心身の疲労回復になくてはならないものです。ですからうつ病中によく眠るというのは決して悪いことではなく、ストレス過多の状況から身を守るために必要だといえます。

一方で、うつ病では「眠れない」「眠りが浅い」という不眠症状も一般的です。
うつ病の発症をチェックする国際的指標「ハミルトンうつ病評価尺度(GRID-HAMD-17)」に不眠が含まれていることからも、うつ病と不眠の深い関係がわかります。

もちろん、不眠の人がすべてうつ病であるというわけではありません。
ですが、うつ病患者さんのうち80~85%の人が不眠を訴え、不眠症状のある人はぐっすり眠れている人に比べ、うつ病になるリスクが1.5倍から2倍になるという研究結果も発表されています。つまり、不眠によるうつ病発症の可能性は決して低くないのです。

非定型うつ病について

非定型うつ病は、特に若い女性に多く見られるうつ病のタイプで、従来のうつ病(定型的なうつ病)とは全く違う症状が出ることで「非定型」とされます。

その特徴的な症状は、「気分の落ち込みに浮き沈みがある」「他責的」「過食」「過眠」などがあげられます。

従来のうつ病では、落ち込んでいる状態がずっと続きますが、非定型うつ病では好きなことや楽しいことをするときは元気になります。また、一日の中でも朝や午前に落ち込みのピークがある従来型に対して、非定型うつ病では夕方にピークがくることが多いです。

また従来のうつ病では、すぐに自分自身を責めてしまう傾向が強いですが、非定型うつ病では周囲を責める傾向が強いです。

従来のうつ病では、食欲不振や拒食傾向が強く、不眠に悩まされることが多いですが、非定型型うつ病では過食に走り、過眠になることが多いです。

こういった症状のせいで、非定型うつ病は甘えやわがままと誤解されることが少なくありません。

いつも眠くならないための
予防法

日中の眠気を予防するためには、まずは睡眠の質を高めることが重要です。睡眠の質は、環境や運動、食事など日々の生活習慣を見直すことで改善が期待できます。

  • ・睡眠環境の見直し

    ぐっすりと熱睡することで睡眠の質は高まります。そのためには寝室の温度、湿度、寝具、光、音、匂いなど眠りやすい環境を整えることが大切です。
    室内は最適な温度と湿度に調整し、清潔な寝具を用意しましょう。光には覚醒作用がありますので、カーテンは閉めて部屋を暗くすると良いでしょう。また寝る前のスマホは睡眠を妨げますので、寝る30分位前からは画面は見ないようにしましょう。
    寝る前にリラックスできるような音楽を聞いたり、良い香りのアロマを炊いたりすると、リラックスできます。

  • ・食生活の見直し

    たくさん寝ても疲労が回復しない場合は、エネルギー不足が考えられます。疲労回復にはバランスの取れた栄養のある食事が大切です。特にタンパク質・脂質・糖質の三大栄養素とこれらの栄養素をエネルギーに変えるビタミンB群は積極的に摂取しましょう。
    そして、就寝前の食事は、消化活動によって睡眠を妨げますので、特に注意しましょう。

  • ・嗜好品の見直し

    アルコールは寝付きをよくしますが、途中で目覚めやすくなってしまいます。途中で目覚めるとなかなか寝付けなくなり、睡眠の質を悪化させることになります。
    そして、コーヒーやお茶、チョコレートなどに含まれるカフェインは、摂取すると眠りが浅くなりやすいので、気をつけましょう。寝る前のタバコも避けた方が良いでしょう。

  • ・適度な運動とぬるめの入浴

    運動不足は睡眠を妨げることがありますので、毎日散歩や軽いジョギングなど行ったり、ストレッチや体操をしたりなど、体をリフレッシュさせることが大切です。軽く体を動かすことで深い眠りにつきやすくなります。
    また、寝る前にぬるめの温度の湯船にゆっくり浸かって1日の疲れを取ってから寝るのも良いでしょう。

まとめ

ひたすら寝てしまう原因は、日頃の忙しさや睡眠不足のせいで体が休息を求めているのかもしれません。
しかし、その症状が長引く場合は、うつ病など精神疾患を発症している可能性もあります。眠りすぎることを、まじめな人ほど怠けている、気がたるんでいると捉えがちですが、睡眠は健康のバロメーターでもあります。
たかが睡眠と考えず、不眠や過眠が長く続く場合は、専門家への相談も視野に入れましょう。早めの対処が病気の早期発見につながり、早期の治療につながります。

初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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