うつ病の初期症状|身体や心に表れるうつ病のサイン

うつ病の初期症状|身体や心に表れるうつ病のサイン

うつ病は、ストレスなどが影響して脳の神経伝達物質がアンバランスになることにより、気分や感情をはじめとした心身の不調が現れる病気です。
症状が重くなると自殺願望も芽生えやすくなるため、軽症のうちに治療することが重要です。
気分の落ち込みが激しい、感情のコントロールが効かないといった状態が続き、うつ症状の可能性を感じたら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

うつ病になりやすい人の特徴

うつ病は持って生まれた性格も影響しやすいと言われています。

例えば、変化への対応が苦手な人は、日々変わる周囲の環境に不安を感じやすいでしょう。人に頼まれると断れない人は人間関係が苦しみに変わりやすく、周囲の目・評価が気になる人は生活しているだけで強迫観念にかられやすくなります。

また、社会的にも評価される責任感が強い、仕事熱心というすばらしい特徴も、几帳面・完璧主義という性格がプラスされると、仕事の質と量の矛盾に悩む傾向があります。

このように、社会で生きる私たちは知らず知らずのうちにストレスをため込んでいきます。その負荷が許容範囲を超えることで、次第に抑うつ状態になっていく場合が多いのです。

身体に表れるうつ病の初期症状

うつ病は、脳の病気です。
脳はさまざまな身体の機能をコントロールしており、気分がすぐれない、感情のコントロールが効かないといった面だけでなく、頭痛やだるさなどの身体症状として現れては心身の不調を訴えます。
ここではよく見られる身体的初期症状について説明していきます。

食欲がなくなる・体重が減少する

脳は、食欲などの「人が生きていく上で必要不可欠な行動」もコントロールしています。
うつ病の初期症状として、食欲がなくなるのは代表的な特徴の一つ。これまで好きだったものも食べたいとは思えず、食事をしていてもおいしさを感じられないというケースが見られます。
当然食べる量が減りますので、体重が激減する傾向もあります。
食欲や体重の変化は周囲からもわかりやすいため、心配されることが増えたら自分の心身の状態を確認してみましょう。

眠れない

うつ病の初期症状では、「寝つきが悪い」「眠れない」「目覚めがものすごく悪い」といった睡眠障害も現れます。
ようやく眠れたと思っても眠りが浅く、目覚めた後もぐっすり眠れたという爽快感はあまり感じられないでしょう。小さな物音や人の気配などで目覚めてしまうため、疲れが取れないばかりか、一度目覚めると再度眠ることも難しい傾向があります。

また、何の理由もなく早朝に覚醒してしまいやすく、目覚ましが鳴るころに疲れ果てて眠りについては寝坊や遅刻を繰り返す……という特徴も見られやすくなります。

その他

誰にでもよく見られる症状が、うつ病の初期症状である可能性もあります。

よく眠れないという特徴にも通ずるものですが、しっかり心身が休めていないと身体はだるく、何をするのも億劫になりがちです。
ちゃんと寝ているつもりなのに、一日中「だるい」「疲れた」と感じる日が何日も続くようなら、心の疲れにも注目してみましょう。

また、めまいや耳鳴りもうつ病が疑われる症状の一つ。
身体は目や筋肉から得た情報を脳が処理して、さまざまなバランスを取っていますが、ストレスによってその機能が正常に働かなくなると、めまいや耳鳴りといった症状として現れます。うつ病の発症はストレス過多である証拠でもあり、うつ病の方がめまいや耳鳴りを訴えることは多いのです。

心に表れるうつ病の初期症状

うつ病と言われて最初に思い浮かぶのは、精神面の不調ではないでしょうか。
実際に、気分の落ち込み(抑うつ症状)が強く、感情のコントロールが難しくなるのがうつ病の代表的な症状だといえます。

うつ病の初期症状は自分で気づきにくいものですが、ポイントとなるのは「以前は楽しめていたものが楽しめなくなった」などの、以前とは違うネガティブな変化です。
ここでは、うつ病の精神面での初期症状を挙げていきます。以前は違ったのに、最近になってこうした特徴がよく見られる方は要注意です。

気分が重い、落ち込みやすくなる

うつ病初期に自覚されやすい症状は、四六時中気分がすぐれないという抑うつ症状です。
ささいなことに落ち込みやすく、人の言葉や世間の情報に、まるで自分がすべての現況のような心境で落ち込みやすくなるでしょう。

また、楽しいという気持ちが起こりにくいのも大きな特徴で、「以前は大好きだった趣味もやる気にもならない」「最近何をしていても楽しくない」「何にも興味を持てない」といった無気力な状態が続きやすくなります。

イライラする、焦りを感じる

イライラ感情がコントロールしにくくなるうつ病では、自分でもどうにもならないイライラを抱えている人が多く見受けられます。
ささいなことで怒りを爆発させてしまうことが多く、周囲の人との関係が悪化していく傾向もあります。

また、そんな自分への焦りが芽生える人も少なくありません。
毎日何かに急き立てられているようで落ち着かないという人もいれば、自分のすべてを否定する思考回路になってしまう人もいます。
自分への否定的な感情は、長い間解消されないと暴走し、自殺願望などにつながる危険性を秘めています。決して軽視せず、早い段階で対処していきましょう。

涙もろくなる

うつ病は、気持ちの揺さぶりが大きいため「心の病」と思われがちですが、実際は「脳の病気」です。
脳は正常に働いていると、物事に対して「楽しい」「悲しい」「不愉快」「うれしい」「さみしい」など感情に合わせて、表情が変わったり行動に現れたりわかりやすく表現されます。

しかし、重度のストレスが続くと脳の感情をつかさどる機能が正常に働かず、「悲しくもないのに涙が出る」「泣くような場面ではないのに泣けてくる」といった状態に陥りがちに。
ちょっとしたことに泣いてばかりいるなど、急に涙もろくなったときはうつ病の初期症状である可能性があります。

その他

うつ病になると、集中力ややる気が落ちていきます。
思考力も鈍っていくため、本人は気づけないケースがありますが、周囲の人はその違和感に気づいている場合がほとんどでしょう。
特に、話しているときの視点があさっての方向を向いていたり、反応がワンテンポ遅れたりとハキがない状態は、家族や友人が気づきやすいポイントとなります。
「最近、ぼーっとしていることが多い」と指摘され、自分でも思考がまとまらないと感じるときはうつ病の可能性も否定できません。

また、何事にも意欲がなく、無関心になっていくことも特徴です。
これまで好きだったものに関心を示さなくなり、集めていたもの、夢中になっていたものもどうでもよくなります。
家から出るのも面倒になってしまう前に、人に相談するなどして、まずは自分の変化を自覚しましょう。そして、ストレスの解消に努めることが大切です。

うつ病の初期症状の期間

うつ病の初期症状の期間

うつ病でなくても、気分が重い、落ち込むといった抑うつ症状は、日常的に誰にでも起こります。
通常は、睡眠を取ったり、プライベートな時間を充実させたりすることで、自然と解消させていけます。
しかし、その症状がうつ病であった場合は、何をやっても解消されず持続するでしょう。そればかりか、時間が経つほどに抑うつ状態が強くなっていく可能性もあります。

症状が1日中感じられ、その症状が2週間以上続く場合は、うつ病も疑われます。
この期間はあくまでうつ病の可能性を示す目安であり、この期間内であれば問題がないという意味でも、この期間を過ぎたら危険ということでもありません。
ですが、2週間を目安に対処をしてほしい症状だということを理解しておきましょう。

うつ病の初期症状が
表れた時の対処法

抑うつ状態が見られるからといって、必ずしもうつ病であるとは限りません。
ただ、症状が出ているということは、うつ病の予備軍である可能性は高いです。ストレス解消などの対処は必要な状態だといえますので、自分の心と身体を労わる手を打ちましょう。

うつ病治療で行われる代表的な対処法は、「休養」「環境調整」「薬物治療」「精神療法」です。
医師による専門的な治療も大切ですが、初期症状の時点で最も重要なのは十分な休養をとって心と身体を休ませること。
できる限り規則正しい生活とバランスのとれた食事をし、健康な心と身体の地盤を整えましょう。

セルフチェックシートを利用する

病院に行くのは気が引けると感じる場合は、まずうつ病のセルフチェックをしてみるのもおすすめです。
チェック項目が多かった場合は、精神科や心療内科の受診を前向きに検討してください。

一方で、チェックシートで当てはまる項目が少ない人も、決してストレスが少ない状態ではありません。自分なりにストレス解消法を見つけ、ため込みやすい不満は吐き出せる場所を作っておくことが大切です。
生活習慣を見直すことも、うつ病予防の第一歩になります。

心療内科や精神科への受診

身体的症状も精神的症状も、ここまで紹介した症状はあくまで目安です。
しかし、どれか一つではなく、複合的に当てはまる症状があった方は、心療内科や精神科がある病院・クリニックの受診も検討しましょう。

また、うつ病であった場合は、自己診断が治療の遅れにつながる危険性があります。
うつ病であるかないかを自分で判断せず、「おかしい」と感じたらまずは正しい判断をあおぎに医師を頼ることが、うつ病を完治させる最短ルートであることを覚えておきましょう。

家族や周囲の人にうつ病の症状が表れたら

うつ病の理解は深まりつつあるとはいえ、まだまだ「なまけている」「気持ちさえしっかりしていれば治る」という認識が残っており、そんな空気を感じた本人が一番自分を責めている傾向があります。

家族や友人など身近な人にうつ症状を感じたら、ぜひあたたかく見守る姿勢で接するよう心がけましょう。初期症状のときは特に、以下のような接し方を意識してみてください。

  • 本人のペースを尊重し、焦らずゆっくり見守る
  • 「ゆっくり休んでいいんだよ」という雰囲気と環境を整える
  • 長時間一人でいさせない。声をかけるだけでもOK
  • 話をしているときは全力で耳を傾ける
  • 転職、離婚など重要な決断は先送りにさせる
  • 本人の不安感に共感しすぎず、感情は常に中立を保つ
  • 本人と四六時中一緒にいるのではなく、自分の時間や生活も大切にする

うつ病の治し方・治療方法

うつ病の治し方にはいろいろありますが、症状が軽度のうちは「休養」と「薬」が基本です。

初期症状では本人と家族、身近な方から話を聞き、症状に合う薬で治療していくことが一般的。
ただ、うつ病は症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、回復に向かっていく病気です。
状態が良くなってきたからといって治療をやめてしまったり、なかなかよくならないからといって薬の量を過剰に増やしたりするのは危険です。
治療は焦らず、気長に続けていきましょう。

そして、薬による治療より重要なのが、しっかりと休養を取ること。
しっかり休養を取るために、薬による治療が役立つともいえます。
また、悩みごとは一人で抱え込まず、できるだけ周囲の人に相談することは心の休息になります。
気軽に相談できる人が近くにいない場合は、精神科や心療内科を受診して、医師に話を聞いてもらいましょう。
「気持ちの風通しが良くなること」は、うつ病にとって何よりの治療になります。

うつ病の初期症状が出た時に
仕事や日常生活で気を付けること

うつ病の初期症状が見られた場合、気を付けたいのは、無理をして仕事や家事をしないこと。
無理をすればストレスが重なり、症状の悪化を招きます。

理想的なのは、自宅で休養しながら、食事は朝・昼・晩なるべく決まった時間帯に食べること。一定の睡眠時間を保ち、生活リズムを整えるよう心がけることです。
散歩など軽い運動を取り入れると、気分がリフレッシュされるだけでなく血流もよくなりますから効果的といえます。

うつ病のときは気持ちが焦りやすく、現状を打破しようと大きな決断をしたくなりがちです。
しかし、どんなにそれが悩みの種だとしても、うつ病の治療中は退職・退学・離婚など、人生に大きな影響を及ぼす重要な決定は先送りにしましょう。
未来はうつ病が治った先に広がっています。
闘病中は先を急ぐのではなく、全力で「今、治すこと」に集中しましょう。

まとめ

うつ病の初期症状では、強い症状はあまり見られないかもしれません。
しかし、ご自身の中ではいつもと違う違和感が芽生えているはずです。自分の心と身体のシグナルを気のせいだと思わず、しっかりと向き合うようにしましょう。

その上で、1日中心身の不調が感じられ、その症状が2週間以上つづいている場合はうつ病の可能性があります。
できるだけ早く、精神科医をはじめとした専門家に相談することをおすすめします。

うつ病はできるだけ早い治療開始が、完治への近道です。
症状が出ていることを自覚した時期が早く、初期症状である可能性の期間を知っているかどうかだけでも、素早く適切な対処で自分を守ることにつながります。
日ごろから自分の心と身体の変化を気にかけ、変化を感じられる感度を高めておきましょう。

初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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