精神科医がおすすめするストレス解消・発散方法、16個のヒント

スシ詰めの満員電車、学校の試験、仕事や人間関係など、私たちは日常のあらゆる場面でストレスに囲まれながら生活しています。それでも、多くのストレスは日々の暮らしの中で解消されていきますが、時に長期化してうつ病などを発症してしまうことがあります。
ストレス社会とも呼ばれる現代、ストレスへの対処法を知り、実践していくことは、健康で充実した生活を送るために大切なことです。

この記事では、ストレスからうつ病などを発症しないためにも、今日からでも始められる簡単な方法を中心に、ストレスへの対処法を解説します。

ストレスとは?

《ストレス》とは、外部からの刺激で身体に生じる反応のことです。また、このストレスの原因となる外的な刺激を《ストレッサー》といいます。日常生活では、これらのストレスとストレッサーを区別せずに「ストレス」ということが一般的です。
例えば「仕事のストレスで胃が痛くなる」という場合、「胃が痛い」のがストレスで、「仕事(のプレッシャーなど)」がストレッサーにあたります。

また、本来ストレスは常に悪いものではなく、性質・状況や受け手によっては成長や達成感につながるなどプラスの面もあります。
この記事では、良いストレスではなく、悪いストレスを取り扱います。

ストレスからうつ病に?

ストレスがたまると、いろいろな不調が心身に生じます。大きすぎるストレスや、慢性的なストレスは、うつ病を始めとしたさまざまな疾患のリスクになります。
例えば以下のような疾患が、ストレスと関連があります。

  • うつ病
  • 不安症
  • 強迫症
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 適応障害
  • 心身症
  • アレルギー性疾患
  • がん

ストレス発散方法、16個のヒント

ストレスを完全になくすことは現実的ではありません。一方で、適切な対処によってストレスを減らし、疾患を未然に防ぐことは可能です。
ストレスの解消方法は、個人によって向き不向きもあるので、自分に合うものを探してください。ストレス解消にこだわりすぎて、かえってストレスになるようでは本末転倒です。
以下では、すぐにでも実践できるストレス対策を紹介します。

1.ストレスを知る

まず、何はなくとも自分自身が抱えているストレスに気付き、認める必要があります。
ストレスの存在を認め、自分自身にとって何がストレスになっているのか、そのストレスにどう対処すればいいのかを知ることは、ストレス対策にとても重要です。
ストレスは、心身の弱いところに影響します。まずはストレスの原因や理由を探ってみてください。原因や理由がわかれば、意外とスムーズに解消できる場合もあります。

2.規則正しい生活を送る

夜更かしやバラバラな起床時間など、不規則な生活リズムは睡眠の質を低下させます。睡眠の質が落ちると、イライラしたり、日中に集中できなかったり、疲労が取れなかったりなど生活全般に良くない影響を及ぼします。普段は気にならないことが、睡眠不足の時にはストレスに感じる、ということもよくあります。
快適な睡眠には睡眠のリズムを毎日守ることが大切です。毎日同じ時間に寝て、毎日同じ時間に起きる習慣を身につけましょう。
また、食後すぐに寝ると、消化のために内蔵は働き続け、睡眠の質が下がるといわれています。食事は就寝3時間前には済ませておきましょう。

3.食生活を見直す

暴飲暴食は、一時的にストレス解消できたように感じても、長い目で見るとストレスを増やしたり、健康を害したりと、かえってマイナスになります。
ながら食いや不規則な時間の食事は、健康にとってマイナスです。
1日3回、栄養バランスを考えたおいしい食事をとることは、健康な体の基礎となります。
また「食べる」ということは単に栄養をとれば良いというものではありません。誰かと一緒に楽しい食事をとったり、落ち着いておいしいものを食べたりと、少しでも食事環境を良くしていきましょう。

4.適度な運動をする

適度な運動は、ストレス予防やストレス解消にもとても有効です。
一般に、ウォーキング、軽いランニング、ダンス、サイクリング、水泳などの有酸素運動がストレス緩和に適しているといわれています。
運動強度的には軽く汗ばむ程度で十分であり、疲労困憊するような運動は必要ありません。長時間の運動よりも継続性が大事で、毎日20分程度を目安にすると良いようです。
運動する習慣があまりなかった人は、まずはウォーキングやサイクリングなど、穏やかなものから始めるとよいでしょう。

5.ゆっくり入浴する

入浴は汗や汚れを洗い流して体を清潔にし、体が温まることで血行が促進され、代謝が活性化されることで体内の老廃物や疲労物質が排出されるなど、さまざまな効果が期待できます。
浮力によって筋肉や関節への負担も軽減し、全身の緊張が緩むことから、心身ともにリラックスできます。
一般にリラックスしたい時の入浴は、少しぬるめの38~40℃くらいの湯温が良いとされ、長時間の入浴はかえって疲れてしまうので、20分くらいにとどめるようにしましょう。

6.娯楽を楽しむ

ゲームや映画鑑賞など、自分が楽しいと思えるコンテンツを楽しむのも、よいストレス解消になります。健康を損ねない程度に、お酒や甘いものをたしなむなど、楽しみのための飲食があっても良いでしょう。高カカオチョコレートにはストレス軽減作用があるという研究もあります。
好きなことをして楽しむのは、ストレス解消にとても役立ちます。

7.本を読む

夢中になれる本に集中することは、高いリラックス効果を発揮します。
英国サセックス大学の調査によると、音楽鑑賞や散歩などの他のメジャーなストレス解消法と比べて、読書には高いリラックス効果があり、ストレスを68%も軽減したとのことです[1]
共著者であるDavid Lewis博士によると、本でも新聞でも、わずか6分間の読書が、心拍数を低下させ、筋肉の緊張を緩和したとのことです。

8.音楽を聴く

リラックスできる穏やかな音楽を聴きながら休憩しましょう。
雨音、波の音、小鳥のさえずりなどの環境音もお勧めです。

9.香りを楽しむ

快・不快の感情は、嗅覚と密接に結びついているといわれています。好きな食べ物の匂いに食欲がそそられたり、生ごみの臭いに顔をしかめたりなどの経験は誰もが持つことでしょう。アロマテラピーやスメルハラスメントなどの言葉があるように、香りはストレスに大きな影響を与えます。
精油(ハーブなどの植物から抽出された芳香性エキス)を使った医療は、昔から行われている伝統医学・民間療法のひとつでしたが、近年は香りに関しても様々な研究が進められており、自律神経活動への作用など、実際の効果が報告されています。

10.自然と触れ合う

米国ミシガン大学の研究では、自然の中(ガーデニング、庭仕事、裏庭で静かに座っているだけでも)でわずか20分を過ごすだけでストレスホルモンレベルを大幅に下げ得ることが報告されています[2]
緑の多い公園を散歩したり、観葉植物や苔を育てたり、ベランダから星空を眺めたりなど、自然に触れる機会は、私たちをリラックスさせてくれます。

11.クリエイティブに過ごす

絵画・書道・俳句・小説執筆・料理・模型製作・粘土細工──創造的な趣味に取り組むことはストレス解消に役立ちます。
ストレス解消という観点からでは、創作する過程こそが重要であり、作品の出来不出来や、完成するもしないも特に問題ありません。自分の好きな素材で自分の好きなように、自由に表現すれば良いのです。
これまで創作活動の機会がなかった方も、今から創作活動を始めてみてはいかがでしょうか。

12.人とかかわる

人間関係は時にストレス源にもなりますが、気兼ねのない付き合いは、れっきとしたストレス解消になります。
米国ハーバード大学で1938年から継続的に行われている研究によると、人生を幸福にするのは、富でも名声でもなく人との絆であり、それは顔見知りが多いことではなく、身近な人との親密な人間関係が築けているかどうかが大切であるという結果が示されています[3][4]

13.声を出して笑う

笑いは、往々にして人生を豊かにしてくれます。そのことを私たちは経験から知っていますが、近年、実際に笑いと健康についての研究成果が報告されています。
笑いは免疫を高め、血糖値を下げ、痛みを軽減し、脳を活性化させます。
また、作り笑いでも効果があるといわれています。

14.気分転換する

部屋の模様替えや大掃除などで気分の一新を図ります。日常の延長線上にある生活を、一旦バッサリと区切ることでリセットするわけです。
居心地のいい部屋はそれだけでリラックスできますし、模様替えのことをあれこれ考えるのも楽しいと思います。

15.マインドフルネスを実践する

私たちは、現在よりも過去や未来について考える時間の方が長く、雑念はそういうときに生まれます。マインドフルネスとは「今現在の体験を、ありのまま受け入れる心のあり方」のことです。雑念を持たずリラックスした状態で、評価や判断からも切り離された状態で集中します。
このマインドフルネスの状態にもっていく手段のひとつがマインドフルネス瞑想です。
方法は「姿勢を正して」「呼吸に集中する」というシンプルなものです。姿勢を安定させ、ゆっくりと呼吸し、その呼吸に意識を集中します。途中、呼吸から集中がそれたことに気付くたびに、呼吸に意識を戻すことを繰り返します。

16.悩みを相談する

ストレスに感じていることを聞いてもらうだけでも楽になる場合があります。家族や友人には打ち明けにくい場合は、専門的な相談窓口の利用も有効です。
厚生労働省のホームページには、電話やSNSによる相談窓口が設置されています。悩みを抱えている方の事情や年代、電話受付時間などに合わせて選ぶことが可能です。

セルフケアで対処できない場合は医師に相談を

ストレスの問題も、他の多くの問題と同じように、自分一人で解決することにこだわる必要はありません。なかなかストレスが解消できず、毎日苦しい思いをしているような場合は、医師に相談してください。
特にうつ病が疑わしい場合は、できる限り早めに精神科や心療内科を受診しましょう。うつ病の改善には早期発見と早期治療が大切です。うつ病は時間経過で自然治癒するというものではなく、むしろ時間経過はうつ病を深刻化させてしまいます。
「ストレスがたまっているくらいで、ちょっと……」といきなりの受診に抵抗がある場合は、まずはセルフチェックをお試しください。

まとめ

私たちの暮らしはストレスに囲まれています。ストレスを完全になくすことは現実的ではありませんが、適切に対処することでストレスを減らし、ストレスに関連する疾患を予防することは可能です。
ストレスの解消方法は、個人によって向き不向きもあるので、いろいろと試してみて自分に合うものを探してください。ストレス解消にこだわりすぎて、かえってストレスになるようでは本末転倒です。このページではストレス解消法のヒントを16個紹介しています。
とはいえ、セルフケアでは限界もありますから、ストレスの苦痛が日常生活に影響するようなら、医療機関に相談してください。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニックの統括院長・本院院長兼務。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

関連する記事

  • 更新

精神科・心療内科情報トップへ