職場うつ・女性うつ・受験うつ・介護うつ

個人を取り巻く環境や社会的立場の変化など、さまざまなことが「うつ病」を引き起こす要因となり得ます。本人も周囲の人も「うつ病のサイン」を見逃さないために、職場うつ・女性うつ・受験うつ・介護うつという4つのうつ病の特徴などを解説します。

職場うつ

一日の長い時間を職場で過ごす人は、対人関係や仕事の量、質、時間などで多くのストレスを抱えています。職場で働く部下や同僚にうつ病のサインが見られたら、すぐに声をかけてあげてください。周囲に迷惑をかけられない、うつ病のはずはないと一人で抱え込んでいる人も少なくありません。
以下は働く環境で多く見られる「うつ病のサイン」です。

本人が気づく変化

  • 気分が落ち込み、何事にも悲観的になる
  • 何をするのもおっくうである
  • イライラする
  • 寝付きが悪い・夜中に起きる(中途覚醒)・朝早く目覚める
  • 頭痛・吐き気・めまい・下痢や便秘が続く
  • 食欲の増減
  • 重い疲労感、倦怠感がある

周囲が気づく変化

  • 遅刻・早退・欠勤が最近増えた
  • 仕事のミスが増えた
  • 判断力が落ち、仕事の能率に低下がみられる
  • 口数や周囲との会話が減っている
  • 表情が暗い、元気がない、顔色が悪い
  • 急に痩せた、あるいは太った

このようなサインに「誰だってそうだ」などと非難することは禁物です。まずは心配な気持ちを伝え、無理をさせず一人で抱え込ませないようにし、専門機関への相談を促しましょう。
当院には、うつ病の相談に多くの方が来院しています。仕事をしながら通院できますので安心です。
支える側も支えられる側にもよい職場生活が送れるよう、医師がサポートしますのでぜひご相談ください。

女性うつ

うつ病の原因として、環境の変化や疲労、不安などがあげられます。
女性特有のうつ病として、女性ホルモンに関連する「月経前不快気分障害(PMDD)」・「周産期うつ」・「更年期うつ」があります。
また、結婚・出産・昇進のような一般的には喜ばしいことでも、環境の変化を伴うことから、うつ病の原因になり得ます。最近、気分が沈みがちなどうつ病が疑われる症状があれば、最近の環境の変化を思い出してみてください。
それほど強くないストレスが続く場合も、そのストレスをきっかけにうつ病を発症することもあります。以下は女性うつの可能性がある主な徴候です。

女性特有の変化

  • 家事(特に買い物や料理)の困難
  • 月経前になるとイライラする、憂うつになる
  • 月経前になると攻撃的、暴力的になる
  • 日常生活さえもままならないほどの気分の悪化

女性ならではのライフイベントがあります

妊娠・出産のような女性特有のライフイベントから受けるストレスが、うつ病の発症率を高める可能性があります。
女性ホルモン(エストロゲン)の急激な変化によって、脳のバランスが崩れて、うつ病になりやすくなります。エストロゲンの分泌が、出産直後は急減、更年期には減少し、うつ病の発症率は上がります。
少しでも不安がある場合は、早めの受診が大切です。

受験うつ

多くの受験生にとって、受験はとても大きなストレスです。
特に難関大学や難関学部への進学を志望している場合には、周りの期待も含めストレスはより大きなものになるでしょう。失敗できない動機や理由の大きさに比例して、ストレスもどんどん大きくなります。
受験のように長期間持続するストレスは、うつ病などの精神疾患のリスクを増大させます。
以下は受験うつでよくみられる症状です。

本人が気づく変化

  • 文章を読んでも頭に入ってこない
  • 授業に身が入らず、時間だけが過ぎる
  • 覚えたはずのことが出てこない
  • 周りの音や気配が気になって、勉強に集中できない

保護者が気づく変化

  • 模擬試験の成績が急激に下がった
  • やらなきゃと口では言うが、勉強している様子が無い
  • 夜更かしや寝坊が増えた
  • イライラし、ささいなことに声を荒げる
  • 頭痛や腹痛、肩こりなど身体の不調がある

もしも、2週間以上このような変化が見られた場合は早めの受診をおすすめします。本人の将来のためにも、周りの人のためにも、大切な時期をうつ病に奪われないために、まずは医療機関へのご相談をおすすめします。

介護うつ

たとえ愛する家族であっても、介護の負担は小さいものではありません。その負担は時にうつ病を招きます。

介護うつ発症の主な原因

介護うつは、介護を通しての不安やストレスが原因となります。
精神的ストレス・経済的負担・体力的負担・孤独感・燃え尽き症候群などがあげられます。

精神的ストレス

専門知識のない中で開始した介護生活を送る中で、介護に関して勉強したり、理想を追い求めたりするあまり、自分自身を追い詰めてしまうケースです。
介護は自分1人ではなく、要介護者と向き合う必要があり、思い通りにならないときにストレスをため込んでしまいがちです。

経済的負担

現実的な問題として、介護はお金がかかります。
デイサービスなどの各サービスも家計を圧迫し、介護のために離職してしまうと経済的な困窮が大きくなります。

体力的不安

要介護者が高齢の親の場合など、介護者自身もそう若くないケースがあります。
要介護者の身体を支えたりするためには体力が必要です。
過労による体調不良から、うつ病を引き起こす場合があります。

孤立無援

近くに親戚や身内がいない場合、介護者は一人で要介護者の負担を背負うことになり、介護について相談したり、作業を分担したりすることができません。その結果、周囲も介護者自身も気づかないうちにうつ病が進行してしまうケースがあります。

燃え尽き症候群

要介護者が亡くなり、何もかもにやる気を失うケースです。
介護の最中にも発症します。頑張りすぎて、心身が限界に達して何もかも嫌になります。

介護者が「私は大丈夫」と思い込むことは危険です

ご自身のストレスを把握する

良いことがあっても喜べない、興味がわかない、重い倦怠感──もしこのような症状があれば「今はストレスがたまっているな」と考えてみましょう。
手遅れになる前に、その都度ストレスを発散しましょう。

一人で抱え込まずに相談する

誰も分かってくれない……
身内が協力的してくれない……
もし、このような状態である場合は、専門機関へ頼りましょう。誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちは軽くなります。
手遅れになる前に相談してください。早く対処することで、うつ病の重症化を防ぐことができる可能性があります。

予期せぬ事態にならないよう、少しでも不調を感じることがあれば早めに相談と受診をおすすめします。
当院は土日祝日も診療しております。お気軽にご相談ください。

更新:2024-05-02