TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)とは、脳の機能異常に対して、磁気刺激によって正常化を図る治療法です。ほとんど副作用が無い上に、治療期間が短く、再発率も低いというメリットがあります。
本記事では、TMS治療の概要を説明いたします。

TMS治療とは

TMS治療のTMSとは“Transcranial magnetic stimulation”の略語で、《経頭蓋磁気刺激法》と訳されます。

TMS治療とは、脳の機能異常に対して磁気刺激によって正常化を図る治療法であり、ほとんど副作用が無い上に、治療期間が短く、再発率も低いというメリットがあります。
うつ病治療として確立している他、さまざまな精神疾患への適応が研究されています。

TMS治療の適応

TMS治療の適応

保険診療のTMS治療の対象は「既存の薬物療法で効果が無い中等度以上のうつ病」に限定されています。
また、医療機関が限られており、治療期間や回数制限も厳しく制限されているため、保険診療のTMS治療適応外の方が大勢いらっしゃいます。当院は自由診療の強みを生かして、保険診療の条件に当てはまらない方にも、必要に応じて対応しています。
当院では、主に次のような方にTMS治療をおすすめしています。

  • 薬物治療で改善がみられない方
  • 薬物治療による副作用がつらい方
  • 薬を減らしたい方
  • 薬による性機能障害を気にされる男性
  • 妊娠を考えている、あるいは妊娠中の女性
  • 授乳中の女性
  • 受験生や勉強中の方

上の例以外でも対応できるケースがたくさんありますので、詳しくは診察時にご相談ください。

TMS治療の禁忌(受けられない方)

以下に該当する方はTMS治療を受けることができません。

  • 刺激部位に近接して金属が埋め込まれている(人工内耳、磁性体クリップ、深部脳刺激・迷走神経刺激などの刺激装置)
  • 心臓ペースメーカーを使用している

その他、身体の状態などによってTMS治療を受けることができない場合があります。
詳しくは診察時にご相談ください。

TMS治療の原理とメカニズム

うつ病は脳の前頭前野を中心に、以下のような脳の不具合が発生していることがわかってきました。

  • 複数の脳部位の萎縮・過活動
  • 神経ネットワークの異常

TMS治療を支える基本原理は《ファラデーの電磁誘導の法則》です。磁気を用いることで、絶縁性の高い頭蓋骨越しに、直接電気で刺激するよりも、はるかに効率よく安全に刺激できます。

図:8の字コイルへの瞬間的な通電で発生した磁場が、頭蓋骨を貫通して脳内に渦電流を生じさせます。
図1 8の字コイルの交点で最大の渦電流(うずでんりゅう)が生じる一方で、交点から離れると渦電流が小さくなるため、治療部位をピンポイントで刺激できます。
  • ①コイルへの瞬間的な通電により、
  • ②コイルに対して垂直に磁場が生じます。磁気は頭蓋骨を貫通して脳細胞に届き、
  • ③コイルに平行して(電流とは反対方向に)渦電流(うずでんりゅう)を発生させます。

この発生した渦電流が、脳の神経組織(ニューロン)を刺激することで、機能低下した部位を活性化、あるいは過活動を抑制し、神経ネットワークの正常化を促していると考えられます。
また、脳を修復する物質を増やし、委縮した脳神経を修復しているとも考えられています。

TMS治療のメリットとデメリット

TMS治療のメリットとして、次の三点があげられます。

  • ほとんど副作用が無い
  • 治療期間が短い
  • 再発率が低い

逆にTMS治療のデメリットとしては以下の二点があげられます。

  • 日本国内ではあまり普及していないため、治療機会が限られる
  • 短期的な治療費用が高い

薬物治療が長引いている、薬の副作用に困っている、状況的に薬が使いにくい(妊婦や受験生など)などの場合はTMS治療を検討する価値が大きいといえるでしょう。

TMS治療の副作用

薬物治療では血液を通じて全身に作用するため、眠気や不眠、だるさ、下痢・便秘など、さまざまな副作用が現れます。TMS治療は治療部位に直接的に作用するため、こういった副作用がほとんどありません。
よくみられる副作用として、刺激部位の痛み・不快感などがありますが、治療を続けているうちに大半の人が慣れていきます。
最も重い副作用としては治療中のけいれん発作がありますが、2021年の調査結果では「0.0031%(10万回に3回)」と報告されています(注1)。

TMS治療の流れ

TMS治療の技術的なポイントは「刺激部位の精確性」「適正な刺激強度」「必要十分な刺激量」の3点です。当院ではこの3点を達成するために、トレーニングを受けた専門スタッフが、次のような流れで施術いたします。

  • ①刺激部位の特定
  • ②刺激強度の決定
  • ③磁気刺激実行

当院の治療実績

当院のTMS治療では約8割の方が軽症化し、約6割の方が寛解(症状がほぼなくなること)しました(図2)。

図:当院のTMS治療で、83.6%が良くなり、59.1%が治りました。
図2 治療30回時点でHAM-Dの点数が13点以下の方を「良くなった(軽症)」、7点以下の方を「治った(寛解)」としたときの割合。旧新宿ストレスクリニック品川本院(旧新宿メンタルクリニック アイランドタワー含む)2013年6月~2022年6月現在の3,194人を抽出した治療結果。

当院のTMS治療料金

当院のTMS治療料金は、治療条件(磁気刺激の設定や施術時間)によって異なります。患者様の症状に合わせて、医師が最適なプランを提案いたします。詳しくは診察時にご相談ください。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)
S10分枠 M20分枠 L40分枠
1回

4,600(税込)

12,800(税込)

25,200(税込)

10回

4,500(税込)

総額45,000(税込)

12,600(税込)

総額126,000(税込)

24,840(税込)

総額248,400(税込)

15回

4,450(税込)

総額66,750(税込)

12,440(税込)

総額186,600(税込)

24,760(税込)

総額371,400(税込)

30回

4,300(税込)

総額129,000(税込)

12,220(税込)

総額366,600(税込)

23,690(税込)

総額710,700(税込)

※治療時間には準備時間を含みます。
※表中の各上段の料金は、1回あたりの料金です。
※当院は自由診療(健康保険適用外)のため、全額自己負担となります。

初診限定

安心お試しMセット12,990(税込) ※事前予約のみ

セット内容

  • 光トポグラフィー検査【うつ状態を数値化】
  • ストレス測定【自律神経の状態を可視化】
  • TMS治療(20分枠)1回【脳を活性化させうつ症状を改善】
  • ※検査や治療は医師の診断によりますのでご了承ください。
  • ※20分枠には準備時間を含みます。
  • ※こちらのセットは予約時でのお申し込みとなります。
    診察後に検査や治療が追加になった場合は適用されません。

予約がとりやすく治療が続けやすい

「治療がしたくても予約が取れない」ということがなるべく生じないように、全ての院に複数台のTMS装置を導入しています。土日祝日も夜まで診療していますのでとても通いやすいです。

予約キャンセル料はかかりません

うつ病では、通院自体が負担になって調子を崩してしまうこともあります。そういった事情も考慮し、当院では治療時の予約キャンセル料はいただいておりません。ご連絡が無いと心配になりますので、可能な限りご一報ください。

解約手数料はかかりません

通院中に、引っ越しや転勤で通院が困難になるなど、やむなく中断せざるを得ない場合もあるかもしれません。複数回治療を中途解約する場合は、お支払い済みの治療費から、未治療分の代金をそのまま返金いたします。事務手数料や解約手数料などはいただいておりません。
治療中断をお考えの場合は、まずは医師にご相談ください。

TMS治療のよくあるご質問

健康保険は使えますか?
当院のTMS治療は自由診療です。健康保険は使えませんが、健康保険では対応できない最新の治療を選択できるメリットがあります。
現在抗うつ薬を服用中ですが、TMS治療を受けられますか?
抗うつ薬を服用していることを理由にTMS治療が受けられないということはありません。通常は服用を続けながらTMS治療を進めます。
未成年はTMS治療を受けることができますか?
当院では小学生以下の方は原則としてTMS治療対象外になります。中学生以上の場合は基本的に治療可能です。診察は10歳以上から受けられますが、TMS治療が対象かどうかは医師の判断になりますのでご了承ください。未成年の方はご家族の方と受診してください。
受験を控えた子供がうつ病のようですが、TMS治療を受けても大丈夫ですか?
高校受験・大学受験を控えた受験生もTMS治療が可能です。TMS治療は副作用がほとんどなく、受験勉強への悪影響が少ないことから問い合わせが増えています。TMS治療は、認知機能への悪影響はほとんど認められておらず、むしろ認知機能改善の可能性が報告されています。そのため、受験生の治療には最適であると考えます。
治療期間や治療回数の目安は?
個人差はありますが、うつ病の場合は1ヶ月半~半年くらいの間に30回程度治療するのが目安です。基本的には短期間に集中的な治療をおすすめしていますが、具体的な治療期間・治療回数は医師と相談しながら決めることになります。

脚注

(注1)Joseph J. Taylor, et al.(2021)"Seizure risk with repetitive TMS: Survey results from over a half-million treatment sessions", Brain Stimulation, 14 (4), p.965(参照:2023/1/16)

参考文献

  • 伊津野拓司・岩波明(2013)『経頭蓋磁気刺激(TMS)の基礎と臨床』, 昭和学士会雑誌, 73(5), 411-417(参照:2021/6/15)
  • 神庭重信(編集)(2020)『気分症群』松下正明監修, (講座 精神疾患の臨床 1), 中山書店
  • 鬼頭伸輔(編著)(2016)『うつ病のTMS療法』, 金原出版
  • 野田賀大(2022)『うつ病に対するTMS療法Up-to-date:自分らしい生き方を求めて』, 中外医学社
  • 臨床神経生理学会 脳刺激法に関する小委員会(2019)『磁気刺激法の安全性に関するガイドライン(2019年版)』, 臨床神経生理学, 47(2),126-130(参照:2021/6/14)
渡邊 真也

【監修】渡邊真也医師

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニックの統括院長・本院院長兼務。患者様を大切にし、安心できる医療を一番に考えており、的確な診断、適切な治療方針の提供。精神保健指定医

■関連リンク

渡邊真也医師が在院する品川メンタルクリニックの「当院の診療について」ページはこちら

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