抗うつ剤は飲まない方がいい? 知っておくべき効果と副作用

いつまで飲み続けますか?~抗うつ薬の危険性について~
いつまで飲み続けますか?~抗うつ薬の危険性について~

抗うつ薬は、うつ病に対する薬物治療の主役です。
現在も改良され続け、治療効果も着実に高まっています。
一方で服用時の副作用や、中断時の離脱症状(中断症候群)などのはっきりとした短所もあり、これは抗うつ剤治療上、避けては通れないものです。
抗うつ剤の主な副作用や離脱症状についてお伝えします。

抗うつ薬の種類と効能

脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが、うつ病の原因であるという仮説があります。
抗うつ薬は、その脳内の神経伝達物質のバランスを調整する目的で使用されます。
下記リストの①から⑤の順に開発され、基本的には新しい薬ほど優れています。しかし、薬の効き方や副作用には個人差があるため、実際に処方される薬は「人による」ということになります。

  1. ① 三環系抗うつ薬
  2. ② 四環系抗うつ薬
  3. ③ SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  4. ④ SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  5. ⑤ NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

なお2019年に「セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節剤」という新作用の抗うつ薬が国内でも承認されました。

抗うつ薬の主な副作用

・NaSSA
強い眠気、ふらつき、体重増加など。
・SNRI
全体的に副作用は少なめですが、離脱症状が出やすいです。
吐き気、下痢、不眠など。
・SSRI
全体的に副作用は少なめですが、離脱症状が出やすいです。
吐き気、下痢、性機能障害、不眠など。
・四環系抗うつ薬
副作用は控えめですが、効能もやや弱めです。
眠気、ふらつきなど。
・三環系抗うつ薬
効果は高いですが、全体に副作用が出やすいです。
口の渇き、便秘、立ちくらみ、眠気、体重増加など。

性機能障害(PSSD:Post-SSRI Sexual Dysfunction)

抗うつ剤(特にSSRI)の大きな副作用のひとつに性機能障害(以下PSSD)があります(注1)。男女問わず、非常に高頻度で現れる一方で、予防方法は確立していません。
抗うつ剤の服用を中止しても、数カ月から数年単位(あるいはそれ以上)障害が持続することがあります。また、服薬前の状態までは完全に戻らないこともあるため、抗うつ薬での治療の前に、男女問わず(家族計画を含めた)人生設計について主治医と相談しておくことが大切です。
なお、ED治療薬がPSSDを改善したという報告(注2)もありますので、お困りの方は主治医に相談してみましょう。

副作用の現れ方

副作用は飲み始めや容量を増やしたときに現れやすく、多くの場合、その後1~2週間程度で落ち着きます。多くの場合、身体が慣れるに従って副作用が軽減していきますので、我慢できる範囲ならそのまま少し様子を見るのもひとつの方法です。不安なようなら主治医に相談しましょう。
どちらにせよ、主治医としっかり相談しながら使用することが大切で、自己判断で薬を中断することは避けるようにしてください。

抗うつ薬中断症候群

抗うつ薬は基本的に依存性がなく、中止できるとされていますが、断薬や減薬は慎重に行う必要があります。 急な断薬・減薬時には、「風邪のような症状、不眠、めまい、吐き気、だるさ、しびれや耳鳴りなど」の離脱症状が現れることがあります。これらの離脱症状は「抗うつ薬中断症候群」と呼ばれています。 SSRIを筆頭に、ほとんどの抗うつ薬で「抗うつ薬中断症候群」に関する報告があります。

複数の既存研究を解析した論文(注3)によると、各研究の離脱症状出現率は27~86%(平均56%)で、離脱症状経験者の46%が重度でした。かなりの割合で英米のガイドラインを逸脱した2週間を超えた離脱を経験しています。

抗うつ薬に限らず、薬は正しい知識、正しい用法で使ってこそ、本来の効果が期待できます。

薬以外の治療方法

薬以外にも治療方法はあります

抗うつ薬の副作用により抵抗感を持つ方も少なくはないようです。
うつ病を引き起こす原因はひとつではないため、休養と薬物療法のみでは治療できません。
典型的なうつ病では、元気が回復したように感じられ、薬をやめてしまう方も珍しくはありません。自己判断でやめてしまうと回復が遅れ、長い期間うつ病との付き合いが続きます。その間も副作用に悩みながら、良くなったり悪くなったりと波に振り回されることも少なくはありません。
人によっては薬との相性が悪く、治療効果を感じられないケースもあります。薬以外の治療方法にも目を向けることが大切です。

薬を使わない治療方法とは?

当院は、磁気刺激治療(TMS)の専門クリニックです。
うつ病は「心の病」ではく「脳の病」といわれています。磁気刺激治療(TMS)は活動が低下した脳に磁気をあてることで、脳の働きを回復させる新しいうつ病治療方法です。
薬で副作用がでやすい・副作用がつらい、抗うつ薬に抵抗がある、再発を繰り返している、抗うつ薬の効果が不十分など抗うつ薬に悩まされている方も多くいらっしゃいます。こうした方に有望なのが、「磁気刺激治療(TMS)」です。
主な特徴は、うつ病の原因とされる脳の機能を改善、副作用がほとんどない、薬に依存しない新たな治療方法です。
また、現在服用している薬と並行して治療が可能となっています。治療期間はおおよそ3~6ヶ月となりますので、長期間かけての抗うつ薬治療よりも、短い期間で寛解が期待できます。
また、抗うつ薬でなかなか改善しない原因の一つとしては、症状に合った薬が処方されていない可能性もあります。

当院ではうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」を導入し、健常、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症をそれぞれ判別する検査をご希望により受けることが可能となっています。病状により、治療方法も異なりますので、ご心配な方はぜひ、検査することをお勧めしております。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックでは、うつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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