不眠症

不眠症

不眠症とはどんな病気?

「寝つくまでに時間がかかるようになって・・・」
「夜中に何度も目が覚めてしまう・・・」
「眠りが浅くって寝た気がしない・・・」
「起床時間よりも早く目が覚めて、その後眠れない・・・」

不眠症というと「まったく眠れない」というイメージがあるかもしれませんが、睡眠に関する悩みが1か月以上も続く状態を呼んでいます。
睡眠状態が良くありませんから、身体の疲れが取れませんし、仕事や勉強などに集中することができません。さらに食欲が落ちてしまったり、体調を崩しやすくなったり、運転中に眠ってしまうようなこともあります。
このような症状に悩む人は多く、わが国においては5人に1人が何らかの睡眠状態の悪さに悩んでいるというデータがあります。さらに時折このような睡眠の悩みを持ってしまうという人は30%~50%程度にまで上ります。
不眠症の原因にはさまざまなものがあると考えられており、仕事や人間関係などのストレス、心身の病気、体内リズムの乱れ、刺激物の摂取、加齢、環境など、複数の要因が重なって引き起こされます。
特定の原因がないにも関わらずに慢性的に不眠症に悩む人もいます。
生活リズムの見直しなどによって睡眠を改善させることができますが、症状が日常生活にまで支障をきたしているという場合であれば、うつ病を発症している可能性もありますので、すぐに精神科や心療内科などのメンタルクリニックに相談することをお勧めします。

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不眠症の4つの症状

  • 入眠障害
  • 中途覚醒
  • 早朝覚醒
  • 熟眠障害

不眠症にはこれら4つの症状があります。これらの症状がしばしばみられ、1か月以上続いている状態であれば「不眠症」と診断されることになります。
不眠症の症状が続くと休息が取れていない状態ですから、日々の疲れがしっかりと取れません。
また意欲低下や集中力低下、抑うつ症状、めまいなどさまざまな症状が現れるようになり、生活習慣病、糖尿病、高血圧などのリスクが高まることも分かっています。

入眠障害

入眠障害とは、床についてもなかなか眠りにつけない、寝つくまでに時間がかかる睡眠障害のことをいいます。多くの人の場合、30分~1時間以内で眠ることができますが、入眠障害においては1時間以上眠れない状態が続いてしまいます。
このタイプの不眠症の場合には、精神的な問題が強いときに起こりやすいといわれます。
プレッシャーの大きい仕事を抱えていたり、人間関係においてとても嫌なことがあった場合などに不安や緊張が強くなってしまい眠れなくなってしまうのです。
たいていはこのような状態で寝不足となってしまえば、次の日にぐっすり眠れるのですが、不眠症においてはこのような状態がしばしば現れてしまい疲弊してしまうことになるのです。
また他のタイプの睡眠障害とも組み合わさることも珍しくありません。

中途覚醒

中途覚醒とは、眠っている夜中に目が覚めてしまい、その後なかなか寝つけない状態のことを指しています。
中途覚醒が起きてしまうと、十分な睡眠時間を確保できませんからしっかりと疲れを取ることができなくなってしまいます。そのため慢性化させてしまうと体調不良につながるリスクも高まってしまうのです。
特に高齢者は睡眠が浅いために中途覚醒が起こりやすいといわれます。
また入眠障害を起こしやすい人のなかには、寝つきを良くするためにアルコールを飲む人がいますが、アルコールによって睡眠が浅くなって中途覚醒を起こしやすくなってしまうことがあります。
またうつ病や睡眠時無呼吸症候群、脳卒中などの人に起こりやすい睡眠障害であることも分かっています。

早朝覚醒

早朝覚醒とは、予定していた時間よりも早く目が覚めてしまい、そのまま眠れずに朝を迎えてしまう状態を指しています。早朝覚醒したとしても日中の活動に問題がなければ心配することはありませんが、日常生活に支障が出るような場合であれば問題であるといえます。
高齢者の人に起きやすいといわれますが、高齢者以外でも悩まされている人が多くなっています。またうつ病の一つの症状である場合もあります。
加齢によるものであればあまり心配することはありませんが、うつ病など他の要素が原因になっているような場合であれば医療機関で診療を受ける必要があります。
特にうつ病の人が眠れないといって市販の睡眠導入剤を服用した場合、症状が悪化してしまうことがありますので注意が必要です。

熟眠障害

熟眠障害とは、熟睡したという満足感を得られない症状で、眠ったのにも関わらず目覚めたときに睡眠不足を感じてしまいます。
睡眠に関する満足感がないからすぐに熟眠障害というわけではなく、その頻度が増え、生活に支障を与えている状態を熟眠障害と呼んでいます。
この熟眠障害には実際に睡眠の質が悪くなっているタイプと、質の良い睡眠が取れているにも関わらず満足できないというタイプがあります。
強いストレスによって脳が興奮状態になることで睡眠の質が下がったり、睡眠の質に対するこだわりが強かったりすることで熟眠障害になることがあります。
また加齢に伴って睡眠の質が低下し、熟眠障害となることもあります。

不眠症の患者数

厚生労働省が発表している「国民健康・栄養調査(平成29年度)」によれば、ここ1ヶ月において睡眠でしっかりと休養が取れていないという人の割合は21.9%となっています。各年毎に見てみると、睡眠でしっかりと休養がとれていない人の割合が平成21年からの推移でみると、年々増加していることが分かります。

睡眠で休養が十分とれていない者の割合(各年)

不眠症の患者数

また、1日の平均睡眠時間が6時間未満の割合は、男女とも40代で最も高く、男性では48.5%、女性では52.4%となっています。

40代の1日の平均睡眠時間

40代の1日の平均睡眠時間 男性40代の1日の平均睡眠時間 女性

このような状況から実際に睡眠の悩みを抱え生活に影響を及ぼし、睡眠薬などによって不眠症の治療を行っている人の割合は6%から10%と以前にも増して高くなっていることが分かっています。
年齢が高くなるにつれて処方の割合も増えていき、40代であれば5%前後、50代であれば6%前後、60代後半になれば10%前後の人に睡眠薬が処方されています。
またうつ病の人の90%程度に不眠の症状が現れることも知られています。慢性的に不眠症の場合であれば、うつ病の発症リスクが2倍程度になるというデータも存在します。
世界のなかでも日本は「不眠大国」であると知られています。
全年齢でみてみるとわが国では1日の平均睡眠時間は6時間以上7時間未満と回答した割合が最も高くなっていますが、ここ数年では6時間未満の割合が増えています。このような状況から見ても、不眠症の割合が多くなっている状況が理解できるのではないでしょうか。
不眠の症状が続き、うつ病の症状を感じた場合は、早めに精神科や心療内科へご相談ください。

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不眠症の原因

不眠症の原因はさまざまで、一つの原因や病気によって引き起こすものではありません。
仕事や人間関係で積み重なる強いストレスや夜勤には夜更かしなどによる生活リズムの乱れ、引越しや転勤などによる生活環境の変化、体や心の病気などが重なりあって引き起こされると考えられています。
そのため不眠症を改善させるためには、対処法も異なってきます。
特にうつ病をはじめとして疾患によって不眠症を引き起こされている場合であれば、専門的な検査や治療が必要になります。ただ単に睡眠薬を服用したからといって治るものではないのです。
また特定の原因と不眠症の関係が全くないにも関わらず、慢性的に不眠症ということもありますので注意が必要です。

ストレス

不眠症の原因 ストレス

強いストレスがあって眠れなくなったという経験を持っている人は多いのではないでしょうか。ストレスは緊張感や不安感が高まりますから、眠りを妨げてしまうことがあります。
例えば、次の日に重要な仕事などがある場合、緊張して眠れなくなってしまうことがあるでしょう。また人間関係など心配事が強い場合においても、その不安から眠れなくなることがあります。
またこのような状況において「早く眠らないと」と考えすぎてしまうと、余計に緊張して眠れなくなってしまいます。
特に生真面目で、こだわりの強い人であればストレスをより強く感じる傾向があり、不眠症になりやすいといえます。

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不眠症の原因 ストレス

生活リズムの乱れ

不眠症の原因 生活リズムの乱れ

夜勤の仕事をしている人や夜ふかしを頻繁にしている人など生活リズムが乱れてしまうと眠れなくなってしまうことがあります。
昼と夜のリズムが悪くなってしまうと、睡眠のリズムが狂ってしまって、自分では修正できずに睡眠が取れなくなってしまうのです。
人間は、夜に眠って朝に目覚めるというリズムを持っています。昼間にしっかりと活動しておくことで、夜にはぐっすりと眠れるようになります。
例えば夜更かしを続けていると、眠りたい時間に眠れなくなり、起きなければならない時間に目覚めることができなくなってしまうことがあります。
無理に起きようとすると頭痛や倦怠感がひどく、集中力がなくなり意欲が低下してしまいます。
また早い時間から寝る習慣になってしまうことで、早い時間に目覚めてしまい、夜間の活動が出来なくなってしまうこともあります。
いずれにしてもさらに生活リズムが崩れてしまう可能性がありますから、規則正しい生活をして治療を行う必要があります。

不眠症の原因 生活リズムの乱れ

環境

不眠症の原因 環境

睡眠において環境はとても重要で、光や騒音が気になって眠れないということがあります。
例えば自宅が幹線道路沿いで、夜間においても車両の通行が多かったり、繁華街に近く夜間でも人の声が気になるような場所であれば、リラックスすることができず眠れません。
眠る前に静かな音楽を聴くのはリラックスができ構わないのですが、雑音や騒音は睡眠に適しておらずできるだけ静かな環境を維持しなければなりません。
また夜間でもライトによって明るく照らされているような場所であれば、その光が気になって眠れないということもあります。光を浴びてしまうことで脳が活性化されてしまい、体内時計に影響を受けてしまうからです。
また寝室の温度や湿度が高く、寝苦しくなって安眠できないということもあります。室温が低すぎる場合においても寒くて眠れないということがあるでしょう。
寝室の温度は30℃を超えてしまうような場合では暑くて眠れませんし、20℃を下回ってしまうと寒くて安眠できなくなってしまいます。また湿度についても50%から60%が理想的だといえるでしょう。
環境の変化によって眠れなくなるということもあります。
例えば引っ越しをして新しい環境になった場合、今までの環境から変化して慣れるまでに時間がかかり不眠症になってしまうこともあります。転勤や単身赴任など、新しい環境での不安感も積み重なって不眠症になってしまうことが少なくないのです。

不眠症の原因 環境

病気

不眠症の原因 病気

身体的な疾患や精神的な疾患によって不眠症になってしまうことがあります。
このような場合においては、不眠症よりもまず病気の治療が先決の場合もありますから、その原因となっている病気の治療のなかで主治医に相談することが適切です。
内科的な疾患において不眠症の原因になるものについては、睡眠時無呼吸症候群といった睡眠に伴う呼吸異常によって引き起こされたり、むずむず脚症候群のように痒みや痛みなどの不快感があったりして眠れないことがあります。
同様にアレルギー疾患によるかゆみや咳、関節リウマチによる痛み、呼吸器疾患による咳や発作、心臓病による胸苦しさなどにおいても不眠症になることがあります。
また精神疾患によっても不眠症になることがあります。近年ではうつ病の人が増えており、不眠症であると診察を受けてみたら、うつ病だったということも珍しくありません。
特にうつ病の人で不眠症の場合においては、うつ病を悪化させる原因にもなってしまいます。うつ病治療においてはしっかりと眠ることが重要で、不眠の症状がある場合には早い段階で適切な対処を行うことが大事です。
うつ病の人で不眠症の場合には、睡眠薬だけでは十分に改善させることができず、うつ病に対する適切な治療が必要になってきます。

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不眠症の原因 病気

薬など(薬理学的原因)

不眠症の原因 薬など(薬理学的原因)

心身の疾患によって治療のために服用している薬によって不眠症になってしまうということがあります。不眠症を引き起こす原因になる薬に、抗がん薬、自律神経や中枢神経に働く薬、ステロイドなどが関係しているといわれます。
また薬だけではなく過度な飲酒によって引き起こす原因になったり、コーヒーやお茶、ドリンク剤などに含まれているカフェインによって不眠症になってしまうこともあります。
寝る前にお酒を飲むという人がいます。確かに寝つきはよくなりますが、睡眠の質が悪くなると考えられています。そのため夜間に何度も目覚めてしまう中途覚醒になったり、早朝に目覚めてしまう早朝覚醒を引き起こすことが多くなります。
さらに喫煙習慣も不眠症を招くと考えられています。特に入眠前の喫煙については、タバコに含まれている毒性物質が寝ている間に放出されにくく、睡眠の質を低下させてしまうと知られています。
眠れないときに喫煙する人がいますが、これも逆効果です。このような習慣によって不眠症を引き起こしているのであれば、喫煙の習慣自体を見直さなければなりません。

不眠症の原因 薬など(薬理学的原因)

加齢

不眠症の原因 加齢

睡眠の悩みは年代ごとに増えていき、高齢者ではかなりの割合で不眠症で悩む人がいると分かっています。特に女性に多い傾向にあり、中高年女性では二人に一人の割合で睡眠の悩みを抱えていると考えられています。
高齢者の不眠症の原因はさまざまで、病気によるものや薬の副作用によるもの、活動量の低下、生活上の不安などによるストレスなどが挙げられます。
また高齢者ではうつ病や認知症などの割合が高くなってきて、それらが原因となって不眠症を引き起こすこともあります。
ただし加齢によって睡眠時間が短くなっていくということは自然なことだといえます。若い頃と同じように眠れないことに対して、過度に心配することはよくありません。
不安や焦り、イライラによって神経を高ぶらせてしまい、さらに不眠になってしまうということがあるのです。

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不眠症の原因 加齢

不眠症の自己チェック

ご自身で睡眠のチェックをすることは大切な事です。
眠りの状態をチェックし、不調が続いている場合は、早めに精神科や心療内科へ相談にいきましょう。
自己チェックで使用する「アテネ不眠尺度(AIS)」(Soldatos et al.: Journal of Psychosomatic Research 48:555-560, 2000)は、世界保健機関(WHO)が中心となって設立した「睡眠と健康に関するプロジェクト」が作成した世界共通の不眠症判定法に基づいたものであり、自身の不眠の度合いをはかる目安として世界共通で使用されています。

「アテネ不眠尺度(AIS)」

過去一カ月間に、少なくとも週3回以上経験したものに当てはまるものをチェックし、
点数を合計してください。

  1. 寝床についてから、寝るまでに時間はかかりましたか?

    0点 いつもより寝つきは良い
    1点 いつもより少し時間がかかった
    2点 いつもよりかなり時間がかかった
    3点 全く眠れなかった、寝つくまで非常に時間がかかった
  2. 夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?

    0点 問題になるほどではなかった
    1点 少し困ることがある
    2点 かなり困っている
    3点 深刻な状態、あるいは全く眠れなかった
  3. 希望する起床時間より早く目覚めて、
    それ以降、眠れないことはありましたか?

    0点 そのようなことはなかった
    1点 少し早かった
    2点 かなり早かった
    3点 非常に早かった、あるいは全く眠れなかった
  4. 夜の眠りや昼寝も合わせて、
    睡眠時間は 足りてましたか?

    0点 十分である
    1点 少し足りない
    2点 かなり足りない
    3点 全く足りない、あるいは全く眠れなかった
  5. 全体的な睡眠の質について、
    どう感じていますか?

    0点 満足している
    1点 少し不満である
    2点 かなり不満である
    3点 非常に不満である、あるいは全く眠れなかった
  6. 日中の気分はいかがでしたか?

    0点 いつもどおり
    1点 少し滅入った
    2点 かなり滅入った
    3点 非常に滅入った
  7. 日中の身体的および精神的な活動の
    状態は、いかがでしたか?

    0点 いつもどおり
    1点 少し低下した
    2点 かなり低下した
    3点 非常に低下した
  8. 日中の眠気はありましたか?

    0点 全くなかった
    1点 少しあった
    2点 かなりあった
    3点 激しかった

判定

  • 合計点が 0~3点…不眠症の心配はありません
  • 合計点が 4~5点…不眠症の疑いが少しあります
  • 合計点が 6点以上…不眠症の疑いがあります。医師に相談することをお勧めします。

精神科や心療内科は、少しの不調でも相談ができます。
不眠症が重症化するとうつ病を併発してしまう場合もあるので、なるべく早めに相談することをお勧めします。

不眠症やうつ症状について
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うつ病はうつ病の専門治療が必要になります。最近では、薬を使わない治療方法もありますので、心身に負担が少ない治療を選択していきましょう。

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不眠への対処法・予防

不眠症を改善させるためには、冒頭から述べているような睡眠の質を下げる原因を取り除き、適切な治療を行うことが大事です。
特に自分自身で取り組めることとして、生活リズムを整えることが重要になってきます。生活が乱れている人であれば、これから述べる対処法について取り組んでみることをお勧めします。

就寝時間・起床時間を一定にする

健康的な睡眠というものは、常に就寝時間と起床時間を一定にすることです。
仕事が忙しい人や夜更かしをする人であれば、週末だけはしっかりと寝だめしておくという人がいます。しかし週末だけ睡眠時間を増やしたからといって、健康に良いわけではありません。
むしろ生活リズムを崩してしまい、さらに不眠症になってしまうこともあるのです。
休みの日にはいつもよりも長い時間眠りたいという気持ちは理解できなくはありません。また昼寝をしておきたいという人も多いでしょう。
基本的には早寝早起きが睡眠にはよく、休日であってもその睡眠リズムを乱さないことが大事です。休日だけはゆっくり眠りたいという人であっても、平日と比べてその差が2時間以内であることが良いようです。
就寝時間と起床時間が一定になると、それに合わせて1日の行動が決まってきます。食事の時間や日中の行動時間、入浴の時間などリズムよく生活できるようになります。
特に不眠症で悩んでいる人の多くに、生活リズムが乱れているということがあります。
夜勤のある仕事などにおいて仕方がないこともあるとは思いますが、できる限り生活リズムを大事にして過ごすことが睡眠状態の安定には必要なのです。

睡眠時間の長さにこだわらない

睡眠時間が長い人もいれば短い人もいます。それほど長く眠っていない人であっても、日中には問題なく活動的に生活できている人も多くいます。
睡眠時間は必ずしも8時間取らなければならないものではありません。また若い頃には毎日8時間眠っていた人でも、歳を重ねるごとに睡眠時間が短くなっていくことは自然のことなのです。
むしろ「8時間眠らなければならない」というような強いこだわりを持つことによってストレスになってしまうことがあります。
睡眠時間の長さではなく、睡眠時間の質に着目してみてください。短時間においても深く眠れたという感覚があるのであれば、思い切って寝床から出て行動してみることも一つです。
眠れないのに無理に寝床に入っていると、眠れたとしても熟眠の感覚が薄く、かえって不安感が高くなってしまうのです。
日中に眠くなってしまった場合には、短時間の昼寝が効果的です。15分から30分程度までにしておき、長い昼寝はしないようにすれば、夜間の睡眠には影響がなく、しっかりと疲れをとることもできます。

太陽の光を浴びる

睡眠にとって太陽の光を浴びることはとても重要なことであると考えられています。特に朝日を浴びることは、体内時計を整えることもでき、睡眠時間を安定させることができるのです。
日中に太陽の光をよく浴びておくと、睡眠時間になると脳から睡眠ホルモンである『メラトニン』が分泌されるようになります。メラトニンはサーカディアンリズムと呼ばれる睡眠と覚醒のリズムを調整する作用があります。
日中に外出して太陽の光を浴びておくことはとても大事ですが、外出できなくても起床した際に部屋のカーテンを開けるだけでも十分効果があります。
睡眠不足を補うために朝になっても部屋を暗いままにしてだらだらと眠るよりは、 思い切って起きてしまってカーテンをあけて行動する方が健康的だといえます。

適度な運動

1日15分程度、ウォーキングなど軽めの運動でも十分効果があります。
毎日の生活のなかで、仕事や人間関係などストレスを積み重ねてしまうと、頭ばかり疲れてしまって体は疲れていない状態になってしまいます。
そのような状態になると、うまく眠れなかったり、質の良い睡眠が取れなくなってしまったりしてしまうのです。
日頃から適度な運動をしておくと、筋力を維持向上させることができ、身体全体への血流が良くなっていきます。血流を良くすることで疲労を感じさせにくくなります。
適度な運動によっていい汗をかくと、気分転換にもなりストレス解消することもできます。
日々忙しいなかでストレスが積み重なると、運動不足となりさらにイライラしてしまうことになるのです。

刺激物を避ける

不眠症で悩む人には、飲酒や喫煙していることが珍しくありません。しかも習慣的になっていることが多くあります。
お酒を飲むと睡眠の質を妨げると考えられています。
不眠症の人のなかには、寝つきを良くするためにお酒を飲むという人がいます。確かにお酒は寝つきを良くするものではありますが、中途覚醒や早朝覚醒などが現れるようになってしまうことがあるのです。
習慣的に飲酒している人であれば、休肝日を作って飲み過ぎないようにすることが大事です。
また喫煙している人にとって、タバコに含まれているニコチンは覚醒作用があると知られています。特に睡眠前にリラックスするために喫煙する人が多いですが、睡眠前に覚醒させてしまうことになり睡眠の質を下げてしまうことになります。
またコーヒーや紅茶などに含まれているカフェインも覚醒作用があります。睡眠前には飲まないようにするのがいいでしょう。

不眠症の治療方法

自分自身で生活リズムを整えるなどに取り組んだとしてもうまく不眠症を改善させることができないようであれば、精神科や心療内科などのメンタルクリニックの専門医に相談することをお勧めします。
不眠症の治療にあたっては、日常的に行うさまざまな習慣を確認し、睡眠の妨げになっているようなものを探っていきます。

例えば医師から次のような内容をお伺います。

  • 就寝時間や入眠時間が乱れていないか
  • 就寝前にどのような習慣があるか
  • 就寝前に飲酒や喫煙、カフェインを含んでいるコーヒーや紅茶など飲んでいないか
  • 仕事や人間関係などにおいて強いストレスはないか
  • 特定の疾患によって薬を服用していないか
  • 今までにどのような病歴があるか
  • 現在日中にどのような活動をしているか
  • 日中に昼寝をしすぎていないか
  • 日中に強い眠気がないか

このような内容を確認することによって、不眠症について診断していきます。もちろん睡眠時間が重要であることではなく、その人に応じた睡眠をしっかりとれているのかどうかを考慮することになります。
不眠症と診断された場合には、「薬物治療」や「行動の修正」に取り組むことになります。

薬物治療

不眠症によって日常生活に影響を及ぼしているような場合であれば、3週間程度を限度として睡眠薬を処方することがあります。
睡眠薬は「睡眠補助薬」「睡眠導入剤」などと呼ばれることもあり、不眠症によって健康が損なわれているような場合には有効だと考えられています。医師の指導のもとによって服用することは安全で、問題はありません。
ただし睡眠薬には問題を起こすリスクもありますから、必ず医師が指示した通りに服用しなければなりません。
指示された以上に睡眠薬を飲み続けたり、過剰に服用したりすると、睡眠薬に慣れてしまって効果を実感できないようになってしまうことがあります。
また薬を服用して眠れるようになり、医師の指示を無視して服用やめてしまうと、元の状態に戻ってしまうだけではなく、さらに悪化してしまうこともあるのです。

行動の修正

不眠症を改善させるための行動修正とは、 睡眠の妨げとなっている原因を一つずつ取り払っていき、健康的な睡眠と覚醒のリズムを作っていくということにあります。
例えば生活リズムが乱れている人であれば、毎晩同じ時間に床につけるように工夫し、毎朝同じ時間に起床するようにします。休日においてもこの生活リズムを乱さないようにするのです。
また就寝前に飲酒や喫煙をしているような場合であれば、就寝前の12時間以内には摂取しないように心掛けます。お酒やタバコが原因によって睡眠の質を下げないようにするのです。
仕事などで日々忙しくしている人であれば、ウォーキングやジョギングなど軽めの運動を定期的に行うようにします。筋力を維持向上させることによって血流を向上させ、ストレス解消や健康増進につなげていきます。
日中には太陽の光をしっかり浴びるようにして、脳内の睡眠ホルモンをしっかりと分泌させるようにすることも行動修正の一つです。

不眠症について
よくいただくご質問

なかなかうまく眠ることができません。不眠の原因になっているものはどのようなものなのでしょうか?
不眠の原因はさまざまで、強いストレスによるものや生活リズムの乱れ、病気、薬、飲酒・喫煙などが考えられます。
不眠の原因と考えられているものを取り除きながら、適切な治療を受けることが大事です。
不眠と睡眠不足は違うものなのでしょうか?
不眠症と睡眠不足はよく一緒に考えられがちなのですが、睡眠不足はあくまで一時的に十分な睡眠を得られていない状態のことを指しています。睡眠には個人差がありますので、何時間以上眠らなければならないというものはありません。
不眠症は眠りたいのに眠れない状態で、それによって生活にも悪影響を及ぼしている状態のことを指しています。工夫しても不眠の状態が続いているようであれば、専門医に相談することをお勧めします。
市販の睡眠薬(睡眠改善薬)を服用すれば不眠症に効果がありますか?
市販されている睡眠改善薬は、一時的に不眠に陥った際に効果的なものであって、不眠症と診断されている人には適していません。
もしも一か月以上も不眠が続いているような状況であれば、市販の睡眠改善薬を試してみるのではなく、専門医に相談することをお勧めします。
睡眠薬をやめられなくなると聞いたことがあるのですが・・・
このように考えている人は多いのですが、病院で処方する睡眠薬にはそれほど強い依存性があるわけではありません。
医師の指示通りに服用していれば心配することはなく、むしろ服用怖がって治療を受けないほうが良くないのです。
睡眠薬を服用して睡眠状態が良くなってくれば、少しずつ薬を減らしていきます。強くなっていきなり薬をやめてしまうと、以前の症状に戻ってしまったり、さらに悪化させてしまうことがありますから注意が必要です。
できるだけ薬を使わずに不眠症を改善したいのですが・・・
不眠症の治療においては睡眠薬だけではなく「行動の修正」によって改善させる方法があります。
これは医師とのカウンセリングのなかで、不眠の原因となっているものを一つずつ取り除いていくのです。
睡眠薬を長期間服用している場合、行動の修正を合わせて行うことで薬を減らすことができる場合もあります。

不眠症とうつ病

うつ病の症状の一つに、不眠症が挙げられることがあります。
うつ病になる前触れとして不眠症があることが少なくはないようです。
何かしらの悩み事を抱えていたり、ストレス過多の状態から不眠症を患っている状態になると、数ヶ月後にうつ症状が出てくる場合があります。
うつ病はうつ病専門の治療が必要です。一定期間不眠症で悩まされていたり、不眠症で薬を処方されていて効果を感じなかったりすることなどがありましたら、うつ病を疑うことも重要といえます。

うつ病の主な治療方法

日本のうつ病の主な治療方法は、薬物療法が代表的な治療方法です。
薬物療法は、抗うつ薬や抗不安剤などを用い、医師の指示で適切な量を服用します。徐々に効果が現れ、治療の途中段階で「治った」と感じることもあります。しかし、自己判断での減薬や断薬は離脱症状を引き起こす可能性があり、うつ病から回復しかけたところで、またうつ病を再発させてしまうリスクが伴います。
また、抗うつ薬などは副作用を伴うこともあるので、状態によっては副作用に悩まされながらうつ病治療を行う患者さんも少なくはありません。
抗うつ薬などに効果が見られない場合は、担当医に相談をするか、現在は薬を使わない磁気刺激治療(TMS)といった磁気でうつ病を回復させる治療もありますので、心身に負担が少ない治療方法をお勧めします。

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磁気刺激治療(TMS)は、脳に磁気で刺激を与えて回復を促す治療法です。
電気けいれん療法とは異なり、入院の必要はありません。副作用もほとんどなく、治療期間も約1ヶ月半~6ヶ月と短期間であることが特徴です。
現在、薬による治療法を行っている患者さんでも並行して治療が行えます。
品川メンタルクリニックでは、セカンドオピニオンも受付けていますので、気軽にご相談ください。

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患者さん自身で状況を把握することが大切と考えています。
うつ病は早期発見が早期回復に繋がる病です。気軽にご相談ください。

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初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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