秋のメンタル不調は9月病かもしれない

夏の酷暑はゆるみつつも、居座った暑さが日中を焦がし、一方で夜の闇がその領域を広げては、ほどけた熱気の網目を細い冷気が忍び寄る──9月は日中の残暑と、朝夕の冷気が対照的な季節の変わり目ですが、こうした時季はどうしても体調を崩しやすくなります。体がだるい、食欲がない、頭が痛いといった身体の症状から、気分が落ち込む、やる気が出ないなどの精神的な症状まで、多様な症状が現れます。
数日の不調ならさほど心配する必要はないでしょう。しかし、その異常が数週間続くようであれば、《適応障害》や《うつ病》などを発症している可能性があります。うつ病を発症してしまえば本格的な治療が必要になってしまうため、そうならないためにも予防や早めの対処が大切です。

この記事では、9月病の症状・原因や、その予防と対処法について解説します。

9月病とは

《9月病(九月病)》とは、お盆休みや夏休みが過ぎ去った9月に心身に現れる不調(ストレス症状)の総称です。9月病は《5月病(五月病)》の秋バージョンのようなもので、夏のバカンスが一般的な欧米では“September Blues”と呼ばれています。
9月病は、言葉としては5月病ほど一般的なものではありませんが、約4割の人が実際に9月に不調を感じているという調査報告もあります[1]

《9月病》自体は医学的な疾患名や専門用語ではありません。しかし、その実体が《適応障害》や《うつ病》などの精神疾患である可能性があり、注意が必要な状態であることは確かです。

9月病の症状

9月病は、季節の変わり目の急激な環境変化に心身が追い付いていない状態で、心身にさまざまな症状が出ます。

9月病の精神症状

9月病の精神的な症状には以下のようなものがあります。

  • 気分が落ち込む
  • やる気が出ない
  • イライラする
  • 集中できない
  • 記憶力・判断力の低下

9月病の身体症状

9月病の身体的な症状には以下のようなものがあります。

  • 体がだるい
  • 食欲が湧かない
  • 下痢・便秘
  • 頭痛・肩こり
  • めまい・耳鳴り
  • 眠れない
  • 朝起きられない

9月病の原因

9月病の原因としては、次のようなものが考えられます。

  • 夏の疲れ:夏場の暑さに負け、食欲低下や睡眠不足で疲れ切った身体がまだ回復していない可能性があります。
  • 季節の変わり目:9月は日が落ちるのが目に見えて早くなり、それに従って朝夕の気温が急激に下がるようになります。日中は暑く、朝夕は冷え、と寒暖差が激しくなるうえ、台風や秋雨に秋晴れと、天候(気圧)も目まぐるしく変化することから、自律神経がかき乱されます。
  • 生活リズムの乱れ:普段、仕事や学校があるときは規則正しく生活している人でも、長期休暇中は油断して(あるいはここぞとばかりに)夜更かし、朝寝坊の毎日を送り、生活のリズムが乱れてしまうということは珍しくないでしょう(特に帰省や旅行など長距離移動がともなうときに生活リズムを守ることは大変困難です)。睡眠時間が大きく乱れると食事の時間や取り方も不規則になるうえ、適当にすませてしまうことで栄養バランスも悪くなりがちです。
  • 転勤や配置転換:9月、10月は夏が終わった区切りであり、学生では夏休みが終わり新学期を迎え、社会人では配置転換や転勤などが行われるなど、環境が大きく変化しがちです。環境の変化はそれだけでも大きなストレスとなります。

9月病の予防と対処

9月病の予防と対策は、日々の生活習慣を改善することから始まります。

  • 睡眠をしっかりとる:夜更かしや朝寝坊など、不規則な睡眠習慣は睡眠の質を低下させます。睡眠の質が落ち睡眠不足になると、イライラしたり、集中力が落ちたりなど生活に支障が出てきます。睡眠のリズムを守ることが快適な睡眠には重要です。毎日同じ時間に寝て、毎日同じ時間に起きる習慣を身につけましょう。起床後はすぐに朝日を浴びてください。
  • バランスの良い食事をとる:毎日3回、栄養バランスを考えたおいしい食事をとることは、健康な身体の基礎となります。真夏の暑い時期に食生活が乱れていた場合はなおのこと、意識して毎日決まった時間に食事をとるようにしましょう。そして、まずは朝食を大切にしてください。
  • 適度に身体を動かす:身体を動かすことは、ストレス予防・解消や健康に大切な習慣です。日中にほどよく疲れれば、夜の睡眠の質も改善できます。しっかりと運動することが難しい場合は、散歩をするなど、今より身体を動かすことを意識してください。

9月病は医療機関にかかるべき?

9月病は基本的には一時的なストレス症状と考えられ、数日調子を落としたからといって、すぐに医療機関に行くべき状態とは限りません。しかし、不調が長引く場合は適応障害やうつ病を発症している可能性があります。気分の落ち込みや眠れないなどの症状が日常生活に支障をきたしているような場合は、医療機関に相談してください。特にこれらの症状がいくつも2週間以上続いているような場合はうつ病を発症している可能性があります。

うつ病は早期発見・早期治療が大切です。うつ病の疑いがある場合は、なるべく早めに精神科・心療内科を受診してください。

まとめ

《9月病》は、お盆休みや夏休みが明けた9月に、心身に現れる不調(ストレス症状)の総称です。9月病自体は疾患名ではありませんが、《適応障害》や《うつ病》などが隠れている可能性があります。
9月病では、「気分が落ち込む」「やる気が出ない」「イライラする」などの精神症状に加え、「体がだるい」「頭痛や肩こり」「眠れない」などの身体的な症状が現れます。季節の変わり目の急激な環境変化に心身が追い付いていない状態で、残った夏の疲れ、生活リズムの乱れ、急激な寒暖差や、せわしない秋の天気などが原因と考えられます。

9月病の予防と改善には、睡眠をしっかりとる、バランスの良い食事を毎日3食とる、適度に身体を動かす、などが有効です。
9月病は一時的なストレス症状と考えられますが、いくつもの症状が2週間以上続いているような場合は、うつ病の可能性がありますので、医療機関に相談してください。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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