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受験生のうつ病~受験を終えた3月の受験生とその親御さんの対応について~

受験生のうつ病~受験を終えた3月の受験生とその親御さんの対応について~
受験生のうつ病~受験を終えた3月の受験生とその親御さんの対応について~

3月になり受験シーズンも終了の時期を迎えています。

ストレスを抱えながらなんとか受験を乗り越えられた受験生もいれば、受験後に燃え尽きたようにうつ状態におちいっている受験生もいるかもしれません。3月は新たな環境へ適応していくストレスフルな時期でもあり、受験のストレスで疲弊した学生への周囲のサポートが必要なときです。

今回の記事では、児童思春期のうつ病と受験のストレスとの関係について解説し、受験後のこころの健康維持に役立つ親御さんへのアドバイスもお伝えさせていただきます。

受験うつとは

「受験うつ」という医学用語は実はありません。正確にいうと、「受験に関わるストレスをきっかけに発症する児童思春期のうつ病」ということになります。また、受験うつに特有のうつ症状があるわけではありません。受験期は、勉強面や将来への不安、プレッシャーでストレスを感じる方が多く、心身の調子を崩しやすい時期ですので誰でもうつ病になる可能性があります。

誰しも嫌なことや不安なことがあると憂鬱な気分になります。ただ、友人と話したり、スポーツで気分転換したりすると気分が楽になり、憂鬱に感じていたことも忘れることができます。一方、典型的なうつ病では、憂鬱な気分がいつまでたっても続き、何事に対してもやる気がなくなることがあります。受験生が抱える精神的不調は、「受験の時にはよくあることだ」「みんなが通る道だ」と、周りの大人が軽く流してしまう可能性もあり注意が必要です。

うつ病では、誰かと話したり、誰かに慰められたりしても、落ち込んだ気分が変わらないことも多く、時にひどくなることさえあります。ほぼ1日中、気分が憂鬱で重苦しい状態が2週間以上続いており、生活に支障が出ているようなら、うつ病の可能性があります。具体的には以下のような症状があげられます[1]

■うつ病のこころのサイン

  • ゆううつ、悲しい
  • 無気力、無関心
  • 意欲、集中力、決断力が低下する
  • 焦燥感、自責感が強くなる
  • 悲観的になる
  • 柔軟な考え方ができなくなる
  • 将来に希望がもてなくなる

■うつ病のカラダのサイン

  • 眠れない、もしくは寝過ぎる
  • 食欲が低下する、もしくは食べ過ぎる
  • だるい、疲れやすい、元気が出ない
  • 頭痛、頭重、めまい、吐き気など
〈うつ病の症状について:参考文献 [1]より〉

児童思春期のうつ病の場合、憂鬱な気持ちよりも、「このままではいけない」と焦る気持ちが先にたち、イライラ感が目立つこともあります。また、児童思春期のうつ病では、併存症が見られることが多く、注意欠如・多動症(AD/HD)や不安障害などが併存しやすい疾患としてあげられています[2]

児童思春期のうつ病は意外に多い

児童思春期のうつ病は、想定されているよりも実は多いことが最近わかってきています。現在通院中の18~75歳のうつ病患者さん4,041人を対象に、初めてうつ病にかかった年齢を調査した研究によると、12歳未満の発症が12.0%で、12歳以上17歳未満の発症は25.2%であったと報告されています。18歳未満でうつ病を発症する割合が意外に高いことがわかります[3]

児童思春期のうつ病発症のきっかけは人それぞれですが、受験期間は不安もストレスも大きくなりますので、受験のストレスはうつ病発症のきっかけになりえます。

ここで、一つの興味深い研究を紹介します。日本のある予備校に通う914人の浪人生を対象に、こころの健康状態に関する調査を実施したところ、57.9%の方がうつ状態にあると判定され、自分自身の不安を打ち明ける相手がいないこととうつ傾向の高さが関係していることなどが明らかとなりました[4]。以上のことから、受験関連ストレスがうつ病発症に関与しうること、受験生に対するメンタルサポートがうつ病発症予防に大切であることが示唆されます。

また、「コロナ禍における思春期のこどもとその保護者の心の実態」に関する調査研究によると、小学5~6年生の9~13%、中学生の13~22%に中等度以上の抑うつ症状がみられたことが報告されています[5]。この調査では、自分がうつ状態になってしまっても周りに相談することなく自分で抱え込んでしまうという傾向も示されており、この傾向はうつ状態が重い子どもほど高くなっていました。コロナ禍において、うつ状態の子どもが潜在的に多く存在していること、他者になかなか助けを求めにくくなっている現状をあらわしています。

以上より、受験のストレスは心身の調子を崩す要因になり、近年のコロナ禍では、感染対策の必要性から思うような受験勉強ができず、いつも以上に受験生にはストレスがかかったと考えられます。うつ状態にある受験生の子どもたちのこころのSOSサインを、周囲の大人が敏感に感じ取り、支援していく必要があると考えられます。

受験後に調子が悪そうだなと思ったときに
周囲ができることは?

受験後に調子が悪そうだなと思ったときに周囲ができることは?

受験シーズンが終了した3月は、志望校に合格し一人暮らしの準備をする方、残念ながら次年度に再度受験を目指す方など状況は様々であると思います。受験後にうつ状態にある場合、どのような対応が好ましいでしょうか?

とにかくしっかり休養をとりましょう!

うつ病治療の基本は休養です。本人がうつ状態にあると感じているような場合は、根掘り葉掘り悩みを聞き出そうとしたり、解決法をあれこれ提案したりするのではなく、まず本人の一番休まる方法を尊重し休息をとらせてあげましょう。無理に旅行に連れ出したりすることも逆効果になることが多いです。
「来年にむけてもっと勉強しなさい」などと励ましたくなるかもしれませんが、休息時に本人にプレッシャーをかけるのはよくありません。本人が内心一番焦っているものです。ゆっくり休むことを家族が見守ってあげるのが何より大事です。”急がば回れ!”の考え方が大切です。

うつ症状が重く心配な様子があるときは
精神科に一度相談を!

軽いうつ状態なら、休息や周囲の適切な声かけなどで時間とともに自然と良くなることが多いです。一方で、うつ症状が長引く場合は精神科への受診を検討してもよいかもしれません。特に、自分を役に立たない人間だと過度に責める発言や「死んでしまいたい」という極端な考えがみられる場合は重症化する可能性もありますので注意が必要です。

医療機関への受診がためらわれる場合は、近くの公的な相談窓口を利用してみるのもよいでしょう。相談窓口は、地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどにあります。精神科医から直接意見を聞ける場合もあります[6]

医療機関ではどんなことをするの?

調子を崩すまでの経過や生育歴、家族がどんな病気になったことがあるかなどを聴取しながら、うつ病であるのかどうかを問診や身体診察を通して判断します。何らかの身体疾患によるうつ状態が疑わしい場合は血液検査や脳画像検査(CT・MRI)も必要に応じて行われます。診察の結果、うつ病と診断された場合は、その重症度や要因に応じて治療法の選択がなされます。

心理的要因や環境要因が明らかな場合は、家族や本人への心理教育や環境調整を行い、本人の心理的負荷を減らすことでうつ状態の改善を試みます。薬物療法は軽症例ではすぐに実施されることは少ないですが、一定程度以上の重症度であれば考慮されます。この際、薬物治療の効果・副作用について主治医とよく相談した上で開始することをおすすめします。

受験を終えた受験生とその親御さんへ

受験を終えた受験生とその親御さんへ

受験のストレスは、本人が考えている以上に心身に不調をもたらしている可能性があります。適度に自分なりのストレス解消法を試みましょう。

ストレスはなかなか自分では自覚できないことも多いので、バロメーターとなる睡眠状況や食欲に変化がないか、不調時に出やすいからだの不調が出ていないかなどを日々セルフチェックすることも有用です。ご家族は、お子さんの元気なときの様子との違いにいち早く気付けると思いますので、元気なときと比べてあまりに様子が違う場合には医療機関や相談機関に早めに相談することをおすすめします。

参考:

渡邊 真也

【監修】渡邊真也医師

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニックの統括院長・本院院長兼務。患者様を大切にし、安心できる医療を一番に考えており、的確な診断、適切な治療方針の提供。精神保健指定医

■関連リンク

渡邊真也医師が在院する品川メンタルクリニックの「当院の診療について」ページはこちら

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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