うつ病が治らない原因やすぐ治る人との違い

うつ病が治らない原因やすぐ治る人との違い

うつ病は一度なると治らない?
そもそも「うつ病」とは

うつ病とは、ストレスなどを原因として、気分の落ち込みなどの精神的な不調が出る病気のことです。
大きく「うつ病性気分障害」と「双極性障害(躁うつ病)」に分けられる2つの気分障害の一つで、一般的にうつ病と呼ばれるのは気分が沈み込んだままになる前者。
双極性障害と比較して、「単極性うつ病」と呼ばれることもあります。

うつ病の症状

うつ病といえば精神的な症状がクローズアップされやすいですが、精神疾患より身体的な症状が目立つこともあります。
それぞれの症状を細かく見ていきましょう。

精神状態で見られる主な症状は、気分が落ち込み、何事にもやる気がなくなるなどの変化。
以前は違ったのに「悲観的な意見が多くなった」「外見や身だしなみに気を使わなくなった」「口数が少なくなった」といった変化も、自分や周囲が気づきやすい変化だといえるでしょう。
また、最近やたらとイライラする、焦燥感にかられる、ぼんやりしやすい、人の話が耳に入ってこない、仕事でミスが増えたとよく感じるようになったら要注意です。
症状が進行していくと、今まで楽しかったことが楽しめなくなったり、何事にも無関心になってしまったりと、世の中のあらゆるものが色あせて見えるようになります。
また、こうして精神的な症状が進行していくことで見られやすくなるのが、うつ病による身体的な症状です。
ストレスでよく見られる胃痛をはじめ、頭痛、睡眠障害(不眠・過眠)、動悸、食欲不振・過食などがあげられます。
症状が重くなると、めまい、耳鳴り、味覚障害、体の痛み・しびれなどに悩まされることもあるでしょう。生理不順や性欲減退など性疾患は顕著に現れやすい傾向があるため、わかりやすい症状といえます。
一方で、うつ病とのつながりがわかりにくいものの、うつ病の身体症状として発症しやすいのが肩こり、便秘・下痢、腰痛など。
ストレス過多や気分の落ち込みなどとともに発症していたり、これまで持っていた肩こりなどの症状がさらに重くなったと感じたら、うつ病の身体的症状である可能性があります。

うつ病になりやすい人の性格や要因

うつ病になりやすい人の特徴は、生真面目、完璧主義、自分に厳しい、凝り性、気遣い上手などの性格があげられます。
こうした特徴を持つ人は、人を頼ったり適度に手を抜いたりすることができません。結果的に、頑張れる強さを持つからこそ、人の何倍も頑張りすぎてストレスを抱えこんでしまう傾向にあるのです。
うつ病の要因は多岐にわたりますが、受験や仕事での失敗、失恋や離婚、学校や会社でのいじめ、家族や親しい人との死別といった悲しいできごとがうつ病発症の原因になりやすいことは広く知られています。
また、結婚や妊娠・出産、昇進・栄転、進学・就職など、喜ばしいできごとであっても、環境の変化がうつ病を発症させるほどのストレスになることもあります。

うつ病は、どのようにして引き起こされる病気なのか、まだ完全には解明されていません。
しかし、感情や意欲は脳が司っているもので、うつ病が「脳の病気」であることはわかっています。
つまり、うつ病の原因は一つではなく、「脳の働き」「うつ病になりやすい性格」「環境」など、ストレスを生み出すさまざまな要因が重なることで発症する病気なのです。

うつ病が治らない・
長期化する原因

うつ病は本来、半年から1年の治療で症状の改善がみられる病気です。
しかし、同じ治療を行っても、全体の20〜30%は長期化する可能性があるといわれています。
うつ病が治らない原因やそのメカニズムは、はっきりと解明されていないものの、いくつかの要因が注目されています。

第一にあげられるのが、薬を飲む量やその期間が適正であったかどうか。

うつ病治療では、症状が良くなっていくと、医師の指示を仰がずに自己判断で薬を飲まなくなってしまうといったことがよく起こります。
副作用が強いといわれる抗うつ薬はできるだけ飲みたくない。治療を続けることに疲れてしまったという気持ちはよくわかります。
しかし、うつ病の改善には、しっかりと休養を取りながら医師の指示通りに薬の量と飲む期間を守ることが重要。
そして、病気を長引かせないためには、症状を完治させてから薬をやめる「飲み終わりの時期」と、適切な量での「薬の終わらせ方」が一番大事なのです。
薬を突然やめてしまうと、めまいやふらつき、吐き気、嘔吐、倦怠感などが生じるおそれがあるだけでなく、症状の長期化、ひいては再発を繰り返す原因になる可能性があります。

また、薬以外に生活環境や習慣、身体的要因なども、うつ病を長引かせる原因だと考えられるものが数多くあります。

<環境的要因>
  • 休養が充分ではない
  • 家族関係の問題
  • 早過ぎた復職
  • 周囲の理解や協力の不充分さ
<身体的要因>
  • 脳の老化
  • 身体的な慢性疾患の影響
  • アルコールの常用
<心理的な要因>
  • 孤独感を感じている
  • 居場所がない
  • 生き甲斐がない
  • 周囲の人を信頼できない

これらの状況がうつ病発症の原因にもなっていた場合は、当然、改善されなければうつ病は治りませんし、治ったところで再発は免れません。
うつ病は治る病気ではあるものの、その人の一生に関わる病気でもあります。
10年以上うつ病が治らないという場合は、うつ病そのものではなく、環境を見直してみることも大切です。

うつ病が治らない人と
すぐ治る人の違い

うつ病の再発率は約50%といわれています。
とても高い数値ですが、それは半分の人は「うつ病が治る」ということでもあります。
果たして、うつ病が治る人と治らない人の違いはなんなのでしょうか。

その違いは明白です。
「うつ病初期」に、その状態に気づいてきちんと治しきること。

たとえて言うなら、うつ病初期は「風船がはちきれそうな状態」「風船から空気が漏れ出ている状態」で、うつ病は「風船が破裂した状態」です。
膨らんだ風船の空気を抜いて適度なふくらみにすることは簡単ですが、破裂した風船を空気が入る状態に戻すことは困難であると考えると、うつ病の治る人と治らない人の違いが見えてくるのではないでしょうか。
その上で、うつ病の悪化や再発をさせないためには、ストレスを溜めないことが何より大切です。
中でも生活習慣の改善は治療サポートに大きな意味があるといわれており、適度な運動がストレス解消に役立ち、十分な睡眠が何よりもの休養になるといわれています。
一方で、飲酒や喫煙はメンタルの悪化因子といわれていますので、やめるよう努めましょう。
また、普段から自宅に「外での事情を持ち込まないこと」も大切です。
会社・学校での失敗、会社・学校・ご近所での人間関係を考えていては、脳が休まりません。
家庭での不安ごとがあるなら、せめて寝室には持ち込まないことを心がけるなど、心の休まる時間を持ちましょう。

こうして心身の状態を観察する習慣をつけておくと、自分の小さな変化にも気づきやすくなります。
うつ病発症にいち早く気づけるだけでなく、たとえうつ病治療が必要になったとしても早く改善させていける環境を整えていけるのです。

うつ病の治療期間と流れ

うつ病の治療では、診断を受けてから回復するまでの過程を大きく3段階に分けて、治療を進めていきます。
ここではよく見られる傾向を元に、急性期・回復期・再発予防期の経過と目安となる治療期間を説明します。

急性期うつ病

急性期とは、診断から治療開始3か月ごろまでの期間を指します。
これは、十分な休養と適切な治療により症状が軽くなってくる時期でもあります。
抗うつ薬の治療が主となり、様子を見ながら少しずつ薬の量を増やしていくことが一般的。
薬の効果が現れるまでには時間がかかるため、焦らずに治療を続けることが大切です。
急性期は「無理をしないこと」と「しっかりと心身を休めること」が大事なので、医師の指示に従って、できるだけストレスの原因から離れて過ごしましょう。

回復期

回復期は、治療開始から4~6ヶ月以上の時期を指します。
回復期には、症状の良し悪しが大きく上下しやすく、一進一退を繰り返しながら改善に向かっていきます。
調子の良い日が続くこともありますが、医師からの指示がない限り勝手に薬をやめてはいけません。
水面下ではまだ症状がくすぶっており、症状が悪化して回復までに余計に時間がかかってしまうこともあります。
うつ病治療には、焦りは禁物です。
治療内容だけでなく、職場復帰などにおいても焦らず状況を整えていくことが、早期回復につながります。
休職して治療をしていると、職場復帰を焦る気持ちはわかります。
しかし、「調子の良い日が続いている」というだけで、職場に戻って働きはじめてしまうとうつ病を長引かせる原因になりかねません。
この時期は、無理のない程度に出歩いたり、少しずつ人と関わったりしながら生活リズムを整えていく時期です。
うつ病になった当時のことを振り返り、医師と話し合いながら社会復帰後の過ごし方について考えていきましょう。
そして、復職ができるようになっても、しばらくは就業時間を減らしたり、負担の少ない部署に配置してもらったりと、無理のない働き方をする必要があります。
職場の協力も必要になりますので、上司にも同席してもらいつつ、医師と今後の方針を相談していくことが理想的です。
主婦の場合も同様に、家事への復帰は段階的に少しずつ仕事量を増やしていきましょう。
同居する家族の協力も必要不可欠であることを、医師から家族に伝えてもらうことも大事です。

再発予防期

再発予防機は、薬物治療1~2年の時期を指します。
このころには社会復帰を果たしている人が多いですが、油断は大敵。
うつ病は再発をしやすい病気でもありますから、薬の服用は続けていく必要があります。
体調が良いと薬を飲み忘れたり、自己判断でやめてしまったりする傾向が見られますが、必ず医師の指示通りに薬を飲むようにしましょう。
薬の量が急に減ったり、飲むのをやめたりしてしまうと、めまいやふらつき、吐き気、嘔吐、倦怠感などの症状が出やすくなります。
また、うつ病になったときの環境のまま過ごしていると、再発する可能性も高いのです。
家族や周囲の人と話し合い、再発の芽を摘み取っておくことや、万が一再発したとき周囲にも気づいてもらえるよう「うつ病がどんなものか」を理解してもらうことも重要です。

うつ病の治療方法

うつ病は治療によって治る病気です。
その治療法は、主に「休養」「環境調整」「薬物治療」「精神療法」の4つがあげられます。

<休息、環境調整>
「心と体をしっかり休養させること」が、うつ病治療には重要です。
職場や学校、家庭など、ストレスの原因になっている環境を整えましょう。
職場での配置替えや就業時間の短縮、家事を手伝ってもらうことなどはもとより、できれば休職や家事をすべて任せるなどできることが理想的です。
ただ、うつ病は生真面目で自分に厳しい人が多い傾向があります。
休養を取ることが怠けていると感じてしまうかもしれませんが、休まずに症状が悪化するほうが周囲の心配を加速させてしまいます。
休むことが務めだと覆って休養を取り、自分のできることを無理なくできる環境を作りましょう。
その環境の整備が、回復への早道となります。
また、うつ病は睡眠障害や食欲不振などにより、生活習慣が乱れやすくなります。
医師に相談しながら、できるだけ規則正しい睡眠とバランスのとれた食事を心がけていきましょう。
<薬物療法>
うつ病治療では、薬物療法も大きな戦力となります。
現在使われている主なうつ病治療薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)と呼ばれる「抗うつ薬」です。
この他にも、症状に合わせて「抗不安薬」「睡眠導入薬」「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」などが処方されることもあります。
うつ病の治療薬は即効性があるわけではなく、様子を見ながら飲み続けていくことを目的とした薬がほとんどです。
薬を突然やめることで副作用が起きる可能性もあるため、必ず医師の指示通りに服用しましょう。
<精神療法>
うつ病の原因となったストレスに対し、自分自身のストレスの受け取り方やストレスとの付き合い方を学んでいくのが精神療法です。
これは治療中の心理状態を平穏に保つだけでなく、うつ病の再発防止にもつながります。
精神療法でよく用いられるのは、「認知行動療法」と「対人関係療法」の2つ。
<認知行動療法>
物事に対し、悲観的に捉えるクセや考え方を改善させる療法です。
マイナス思考がうつ状態を悪化させることから、思考の悪循環を断ち切る方法を学びます。
<対人関係療法>
うつ病の要因となった、対人関係の問題・ストレスを解消させる療法です。
うつ病の原因となるストレスは、その多くが対人関係の問題です。
人を変えることはできませんが、自分が変わることで対人関係が改善され、周囲の人にも受け入れられやすくなります。
自分の心が軽くなるだけでなく、うつ病の回復に向けた周囲からのサポートも受けやすくなるというメリットが大きい療法といえます。
<運動療法>
ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど、心臓に負担にならない程度の有酸素運動を行う治療法。薬物治療と組み合わせて行います。
<高照度光療法>
2500ルクス以上の照明器具で光を1日1〜2時間程度照射する治療法です。睡眠リズムを整える目的で行います。
<修正型電気けいれん療法>
全身麻酔と筋肉けいれんを抑える薬を使用し、脳に数秒間の電気刺激を与える治療法です。
入院が必要な治療で、副作用には記憶障害が起こる場合があります。
<経頭蓋磁気刺激治療(TMS)>
当院でも行っている磁気刺激で脳を刺激する治療法です。
年齢や持病などの制限がなく、誰でも受けられる治療です。
副作用もほとんどなく安全な治療で、アメリカでは薬物治療の次に選択される治療法となっています。

まとめ

現代では、うつ病は治る病気です。
早く治る人と長引く人に違いがあるとすれば、それは「うつ病への正しい理解」と「適切な治療の継続」が行われたかどうかでしょう。
うつ病がどんなものか正しく学ぶことを大切にし、専門的な治療については医師と二人三脚で行い、信頼する。その取り組みが、一見遠回りに見えることがあっても、うつ病を最速で改善させる近道といえます。
早く治したい気持ちは、患者も医師も同じです。
焦る気持ちを落ち着けて、まずはゆっくり休養。
そして、無理をせず、じっくり治療に取り組んでいきましょう。

うつ病が治らない方の
よくある質問

仕事10年以上うつ病ですが、一生治らないのでしょうか?
長期化しているうつ病も、適切な治療と環境の整備で治していけます。
まずは長期化している原因を医師と探り、取り除いていきましょう。
その上で、これまでの治療法を洗い直し、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。
軽度のうつ病が治らないのですが、仕事に復帰しても大丈夫ですか?
主治医の判断を仰ぎましょう。
復帰して良いと診断された場合も、以前と同じ仕事に戻るのではなく、書類整理などの簡単な仕事をしたり、就業時間を短くさせてもらったりして、無理をしないことが大切です。
可能であれば、医師への相談の際に上司にも同席してもらうことをおすすめします。
医師からの意見があったほうが会社も何をすべきか理解しやすいので、スムーズに援助が受けやすくなる傾向があります。
うつ病が治ったと思ったらすぐに再発してしまう。どうすればいいですか?
うつ症状をぶり返してしまう場合、「治った」という判断が少し早い可能性があります。
症状が良くなってきても自分の判断では治療をやめてしまうことは再発のリスクが高くなります、医師と相談しながら治療を続けましょう。
初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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