梅雨時期はうつになりやすい? 6月病(六月病)の症状や対策

梅雨時期のメンタル不調は《6月病(六月病)》や《梅雨だる》と呼ばれることがあります。
6月病では、体がだるい、食欲がない、頭が痛いといった身体の症状から、気分が落ち込む、やる気が出ないなど心理的な症状までさまざまな症状が現れます。
数日の不調ならそれほど心配する必要はありませんが、もし不調が数週間以上続くようであれば、《うつ病》や《適応障害》などを発症している可能性があります。うつ病を発症してしまうと本格的な治療が必要になってしまうため、そうならないためにも予防や早めの対処が大切です。

この記事では、6月病(六月病)の症状、予防や対処法、うつ病との関係などについて解説します。

梅雨時期は体調を崩しやすい

《梅雨》とは、夏至(6月21~22日ごろ)を中心に、前後約20日ずつ続く雨季のことです。「つゆ」もしくは「ばいう」と読みます。梅雨は極東アジアに特有の現象で、中国の長江(揚子江)流域、朝鮮半島南部、(北海道を除く)日本でみられます。日本の梅雨は南日本では顕著ですが、北日本ではそれほど明瞭ではありません。

梅雨時期に体調不良になる人は多く、養命酒製造株式会社の調べでは、6割の人が梅雨時期に不調を感じることが多いと回答しています[1]
この時季の不調は《6月病(六月病)》や《7月病(七月病)》と呼ばれることがあります。6月病は医学的な病名ではなく、梅雨時期に心身に現れる不調(ストレス症状)の総称です。《梅雨だる》も基本的に同じものと考えてよいでしょう。この記事では基本的に6月病を用います。

6月病は、その実体が《適応障害》や《うつ病》などである可能性があり、注意が必要な状態です。一般的には《5月病》がよく知られていますが、6月病や梅雨だるは、新年度からのストレスが長引いたり、顕在化したりした結果であるとも考えられ、5月病よりも深刻な状態である可能性があります。

梅雨時期のストレス症状

6月病では、心身にさまざまな症状が出ます。

梅雨時期の精神症状

精神的な症状としては以下のようなものがあります。

  • 気分が落ち込む
  • やる気が出ない
  • イライラする
  • 集中できない
  • 記憶力・判断力の低下

梅雨時期の身体症状

身体的な症状としては以下のようなものがあります。

  • 体がだるい
  • 食欲がわかない
  • 下痢・便秘
  • 頭痛・肩こり
  • めまい・耳鳴り
  • 眠れない
  • 朝起きられない

ストレス源としての梅雨

梅雨は自然災害というよりは、日常に密着した季節の変動ですが、例年のこととはいえ、人によっては大きなストレスとなる可能性があります。
梅雨がもたらすストレスには、以下のようなものがあげられます。

  • 高い湿度(蒸し暑さ):梅雨時期は、気温も湿度も高い日が続きます。体感する暑さや寒さというのは、物理的な気温だけではなく、風の強弱や湿度の高低にも左右されます。気温と湿度から《不快指数》が計算されますが、梅雨時期は一般にこの不快指数が高い(つまり、蒸し暑い)傾向があります。
  • 低気圧による不調:梅雨時期は雨の日が続いたり、晴れ間がのぞいたりと、天候が不安定になりがちです。気圧の低下は、それだけでも自律神経のバランスを崩す要因となり、《気象病》を生じさせる可能性があります。気象病については後述します。
  • 日照量の減少:晴れの日が減り、日照量が減少することで《セロトニン》の分泌が減少します。睡眠を促す働きをもつ生体物質《メラトニン》は、セロトニンから合成されます。そのため、日照量の減少がメラトニン不足を引き起こし、夜間の睡眠の質を低下させる可能性があります。日本ゼオン株式会社の調べによれば、梅雨時期には8割以上の人が睡眠の質低下を感じているとのことです[2]
  • 雨天の外出が面倒:梅雨で雨が降っているからといって、外出しなくてよくなるわけではありません。ほとんどの人は、雨天時であろうと外出する必要があります。
  • 乾かぬ洗濯物への不満:乾燥機や部屋干し派にはあまり影響はないかもしれませんが、外干し派にとっては深刻な問題です。週末に、たまった洗濯物と灰色の空を前に、気分が沈みため息が漏れる人もいることでしょう。

気象病

《気象病》とは、さまざまな気象変化によってもたらされる心身の不調の総称です。梅雨でも気象病が生じる可能性があります。気象病では、次のような症状が生じる可能性があります。

  • 片頭痛
  • めまい
  • 不眠
  • 集中力低下
  • イライラ感
  • 古傷や関節が痛む

気象病は、うつ病などの精神疾患をはじめ、さまざまな疾患に影響することが分かっています[3]

梅雨時期のメンタル不調は医療機関にかかるべき?

梅雨時期のメンタル不調に関して、それが一時的で日常生活に影響しない程度なら、あまり心配する必要はないでしょう。しかし、頻繁に体調を崩したり、不調が気になって日常生活に影響があったりするような場合は、かかりつけ医に相談するのがよいでしょう。
また、気分が落ち込む、趣味が楽しめない、食欲や睡眠に異常があるなどの症状が数週間続き、日常生活に支障をきたしているような場合は、うつ病を発症している可能性があります。そのような場合は、精神科・心療内科を受診してください。

もし、医療機関に行くべきか迷うようなら、セルフチェックなどで自分の状態を知っておくとよいかもしれません。

とはいえ、うつ病は早期発見・早期治療が大切です。医療機関にかかるかどうか悩んでいる場合は、それも含めて受診することをおすすめします。

6月病はうつ病と関係がありますか?

うつ病と6月病はそもそも定義から異なり、同じものではありません。しかし、両者は無関係とはいえません。
6月病・7月病・梅雨だるなどと呼ばれる状態の中に、うつ病や適応障害が混在している、あるいは梅雨時期の不調からうつ病や適応障害に発展してしまうという可能性は十分にありえます。うつ病の原因はストレスに限りませんが、慢性的なストレスがうつ病に関係していることはよくあります。
気分が落ち込む、趣味が楽しめない、眠れない、食欲がないなどの症状が2週間以上持続し、日常生活に支障をきたしているような場合はうつ病を発症している可能性があります。そのようなときは医療機関に相談してください。「うつ病なのかな?」と心配なときには、セルフチェックをご利用ください。

夏季うつ病の可能性も

うつ病の中には、特定の季節に発症するサブタイプ(下位分類)があります。
《夏季うつ病》は、夏に発症する季節性のうつ病で、《季節性感情障害(SAD)》の夏型です。
一般的な季節性感情障害(SAD)は冬に発症することから《冬季うつ病》と呼ばれています。夏季うつ病は、晩春から初夏にかけて発症し、秋・冬に症状がおさまるというサイクルを繰り返します。梅雨は夏季うつ病が発症しやすい時期と重なっており、梅雨明け後も夏にかけて不調が続くような場合は夏季うつ病の可能性があります。
もっとも、夏季うつ病かどうかに関係なく、うつ病は治療すべき精神疾患ですので、具体的な判別は医師にまかせ、まずは医療機関を受診してください。

梅雨時期の不調の予防と対処

梅雨時期の不調の予防と対策は、日々の生活習慣を改善することが重要です。

  • 睡眠をしっかりとる:夜更かしや朝寝坊など、不規則な睡眠習慣は睡眠の質を低下させます。睡眠の質が落ち睡眠不足になると、イライラしたり、集中力が落ちたりなど生活に支障が出てきます。睡眠のリズムを守ることが快適な睡眠には重要です。毎日同じ時間に寝て、毎日同じ時間に起床する習慣を身につけましょう。起床後はすぐに朝日を浴びてください。
  • バランスの良い食事をとる:毎日3回、栄養バランスを考えたおいしい食事をとることは、健康的な身体の基礎となります。なるべく決まった時間にとるようにしましょう。そして、まずは朝食を大切にしてください。
  • 適度に身体を動かす:身体を動かすことは、ストレス予防・解消や健康に大切な習慣です。日中にほどよく疲れれば、夜の睡眠の質も改善できます。しっかりと運動することが難しい場合は、散歩をするなど、今より少しでも身体を動かすことを意識してください。室内でできる軽い運動でも効果は見込めますので、雨の日はストレッチなどもよいでしょう。雨の日に屋外で運動する場合は、怪我や風邪にご注意ください。
  • ゆっくり入浴する:入浴はストレス解消手段としてポピュラーですが、バスリエ株式会社の調査によれば、半数の人が、入浴によって梅雨の不調が緩和されたと回答しています[4]。入浴は汗や汚れを洗い流して体を清潔にし、体が温まることで血行が促進され、代謝が活性化されることで体内の老廃物や疲労物質が排出されるなど、さまざまな効果が期待できます。浮力によって筋肉や関節への負担も軽減し、全身の緊張が緩むことから、心身ともにリラックスできます。
  • 湿度を管理する:むしむしと蒸し暑い環境は、それだけでもストレスですが、カビやダニの繁殖など衛生面にも問題が生じる可能性があります。屋内の湿気対策の基本は換気と除湿です。定期的に窓を開けて空気を入れ替え、除湿器やエアコンを活用して室内の湿度を管理しましょう。

まとめ

梅雨時期に心身に現れる不調(ストレス症状)は《6月病(六月病)》や《7月病(七月病)》と呼ばれることがあります。6月病は疾患名ではありませんが、《適応障害》や《うつ病》などが隠れている可能性があります。《梅雨だる》も基本的に同じものと考えてよいでしょう。
6月病は、「気分が落ち込む」「やる気が出ない」「イライラする」などの精神症状に加え、「体がだるい」「頭痛・肩こり」「眠れない」などの身体的な症状が現れます。蒸し暑さ、低気圧、日照量の減少など、梅雨時期にはストレスとなる要因がたくさんあります。

6月病をはじめとした、梅雨時期のメンタル不調の予防と改善には、睡眠をしっかりとる、バランスの良い食事を毎日3食とる、適度に身体を動かす、ゆっくり入浴する、湿度を適切に管理するなどが有効です。
6月病は一時的なストレス症状と考えられますが、複数の症状が2週間以上続いているような場合は、うつ病の可能性がありますので、医療機関に相談してください。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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