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ペットロス症候群とは?うつ病との関係と予防と対処法

ペットロス症候群とは?うつ病との関係と予防と対処法
ペットロスについて~自己解決が困難な場合は、早めに医療機関へ~
ペットロスについて~自己解決が困難な場合は、早めに医療機関へ~

最近、「ペットロス」で精神的な不調を訴える方が多く見受けられます。
ペットロスとは「ペットロス症候群」ともいい、長く一緒に生活してきたペットを失うことによって引き起こされる精神疾患や精神症状のことを指します。
人生において家族を失うことはとっても辛い出来事です。ペットを愛する人にとって、ペットが死を迎えるときの別れは、家族を失うことと同様に辛いものとなります。
その辛い状況から抜け出せないでいると、不安や不眠、抑うつ症状が強くなり、場合によってはうつ病などの精神疾患となってしまうことも珍しくありません。
ここでは「ペットロス」とはどういうものか、どのように立ち直ればいいのか、周りの人はどのように対応すればいいのかなど、詳しくお伝えします。

ペットロスとは

「ペットロス」とは、長い間、一緒に過ごしてきたペットが死を迎えたり、ある日突然行方不明になったりなど、「ペットを失う」ことを指しています。
ペットロスとはどのようなものなのかお伝えしましょう。

ペットとの死や別れ

犬や猫をペットとして飼っている人は多いですが、その他にもウサギやハムスター、小鳥、金魚、爬虫類、昆虫など、愛情を注ぐペットにはさまざまなものがあるでしょう。
どのようなペットであるとしても、愛情を注げば注ぐほど失ったときの衝撃は大きいものです。
特にペットは家族とは違って、飼い主の意思によって感情が繋がっていることが特徴的です。時には自分自身のパートナーとして接することもあれば、子供のように関わることもあります。あるいは心の支えとなることもありますし、癒しの象徴となることもあります。
言いにくいことでも打ち明けられる友でもありますし、苦しいことを共に乗り越える戦友となることもあるでしょう。生きがいだったかもしれませんし、ペットと共に生きる夢や希望があったのかもしれません。
つまり、時として家族以上の存在となることもあるのですから、ペットを失うことによる虚無感は計り知れないものになるのです。
特に近年は少子化や核家族化が進んでいますから、ペットを家族以上に愛情を注いでいる人は少なくありません。

ペット喪失のグリーフ(悲嘆)

ペットとの別れを経験したときに、取り戻したくても取り戻せないペットへの思いが自分自身の中でいっぱいになっていることが分かります。過去の思い出だけではなく、罪悪感や怒り、恨みなど、複雑な気持ちが心の中を渦巻いていきます。
また、別れを受け止めようとして、自分自身がこのままではいけないと考える思いも沸き起こります。
そのペットに対する思いと、現実に対応しようとする思いが交錯すると、精神はとても不安定な状態になってしまいます。
この状態のことをグリーフ(悲嘆)と呼んでいます。
特にペットに対して深い愛情を注いでいた人には、このような状態で苦しむ人がたくさんいます。
どうしても命あるものとは、別れなければならないときが来ます。ペットは長い時間、共に生きる時間を共有した家族以上の存在です。別れを経験することで、深い悲しみに包まれてしまい、それが原因となって心身に対する不調をもたらしてしまうこともあるのです。

ペットロス症候群とは

家族以上に深い愛情を注いでいたペットですから、そのペットが亡くなってしまうようなことがあると、何とも言えない深い喪失感に襲われてしまいます。
その深い悲しみが大きなストレスとなってしまい、さまざまな不調をもたらすことがあります。
その症状のことを「ペットロス症候群」と呼んでいます。ペットを失うことによる喪失反応のことを指しています。
この喪失反応はペットを失うことだけで起きるものではありません。配偶者を亡くしたり、がんであると宣告されたりするような場合においても同様の症状が見受けられます。
ただその人にとって、ペットがどのような位置にあったのかによって、その症状も大きく影響を受けるものになります。
ペットを失ってから数カ月が経過しているのに、深い悲しみが続いており、

  • なかなか悲しみの状態から抜け出すことができない
  • 気持ちを切り替えることができない
  • 日常生活にまでその影響が出ている

という症状が2週間以上継続しているのであれば、ペットロス症候群によってうつ病を引き起こしている可能性があります。専門医にご相談頂きたいと思います。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

ペットロスとうつ病の関係性

ペットロスとうつ病の関係性

いつかペットとの別れが来るとは理解しているものの、私たちは悲しみに対する準備をしておくことなどできません。
ましてや、ペットに突然の死がやってきたような場合であればなおさらです。
ペットロスとは大事な家族であるペットとの別れによって悲しみに襲われることを言いますが、大事であれば大事であるほどそのような症状が起きることは無理もありません。
しかし、ペットロスによっていつまでも悲しみから抜け出せずにいると、場合によってはうつ病に進行しており治療が必要になることもあります。
ここではペットロスとうつ病の関係性についてお伝えします。

ペットロス症候群による気になる症状チェック

ペットロス症候群では次に掲げる症状が多く見られます。

  • 落ち込みが激しい
  • 1人ぼっちのような感じがする
  • 何事においても関心や興味を持てなくなる
  • 仕事や趣味に意欲をもって取り組めなくなる
  • 考え過ぎて眠ることができない
  • 食欲がわかず食べる気がまったく起こらない
  • ペットを失ったことに対して強い罪悪感がある
  • 失ったペットを考えては涙が止まらなくなる

特にペットを失った直後は、このような感情が強く表れることがペットロス症候群の特徴です。
しかし、時間の経過を経て少しずつペットとの別れを受け入れることができるようになり、元通りの生活を営めるようになります。
ただ、悲しみがあまりにも深く、落ち込み具合が激しい場合には、この症状が長引いてしまうことがあります。
長引く人の傾向に、「ペットを失ったことが受け入れられない」という感情があります。
長く家族同様に一緒に生活をしていた場合、「ペットが死ぬはずはない」と考えてしまうことがあります。もちろん命あるものはいずれ死を迎えることは理解しているのですが、自分のペットに限ってそのようなことはないと、いつまでも受け入れられないのです。
また、ペットの死を受け入れて、「いつまでも悲しんでばかりではダメだ」と自分の感情を抑え過ぎてしまっている人には、逆に悲しみから解放されないことがあります。
悲しみを溜め込まずに、泣きたい時にはしっかり泣くことが大事です。
このような状況が続いてしまうことで、うつ病に進行してしまうことがあります。

ペットロスはうつ病に要注意!

ペットロス症候群が長引いてしまうと、うつ病に対するリスクが高まります。特にこのような症状が2週間以上続いた場合には、医療機関で専門医に相談することが大事です。

  • 気分が落ち込んでいる
  • 何をしても楽しいと思えない
  • 生きていることが虚しくなる
  • 悪い方へばかり考えてしまうようになる
  • 死にたいと思うようになる
  • なかなか眠れなかったり全く眠れなくなる
  • 疲れや倦怠感が全く取れない
  • 食欲がわかず体重がどんどん減っている
  • 頭痛や肩こりがひどい
  • 便秘や下痢が続いている

先ほども申し上げましたが、「わたしのペットが死ぬはずはない」と受け入れることができなかったり、「いつまでも悲しんでいてはダメだ」と自分の感情を抑え過ぎたりしていると、ある日このような症状が表れていることに気がつくことがあります。
ただ、多くの人はこのような症状であっても、ペットを失ったことによる「単なる落ち込み」だと安易に考えてしまいがちです。
最初はペットロスによる落ち込みであったのですが、その経験がきっかけとなってうつ病になってしまうことがあるのです。
落ち込みとうつ病とはまったく違うものなのだと理解することが大切です。

ペットロス症候群が重症化してしまう原因

ペットロスが起こると、主に「否認」「怒り」「罪悪感」「抑うつ」の4つの感情が重症化しやすい原因と言われています。「ペットの死に伴う感情の混乱状態の中で、認めたり理解したりすることが特に困難な感情、したがって克服が困難な感情」(モイラ・アンダーソン著「ペットロスの心理学」より引用)であり、感情が誤った方向に向かってしまうと、ペットロスの症状が悪化することがあります。

・本人の問題
「否認」「怒り」「罪悪感」「抑うつ」の4つの感情は、ペットの死において克服が困難な感情と言われていますが、本人の考え方次第では、悲しみを乗り越えることもできます。
しかし、ペットロスを重症化させてしまうことがあります。
例えば、「ペットの体調の異変に気付くのが遅くなり、死なせてしまった」等と罪悪感があるのに、その後もペットの体調管理を怠ってしまう場合、それ自体を「自分自身がダメだから、ペットの体調の異変に気付けない」と自虐してしまい、重症化してしまうことです。
・環境の問題
周囲との価値観の不一致が、さらにペットロスの状態を悪化させることがあります。
例えば、ペットロスでとても悲しんでいる時に、家族や友人からあまり理解してもらえなかった場合、ペットの死で落ち込んでいること自体が恥だと思い、泣いたり、落ち込んだりすることを我慢することがあります。その場合は、一時的に悲しみから逃避できますが、根本的な悲しみが解消されていないため、苦しみがずっとトラウマになってしまうかもしれません。
・亡くなり方やタイミングの問題
病気や事故などで、急にペットが亡くなってしまった場合、ペットの死に対する心の準備ができていないため、ペットロスによる悲しみはとても辛いものになります。
日頃から深い愛情を持って接していたとしても、「もっと○○してあげれば良かった」と後悔に苛まれることになります。
また、家庭や仕事においてストレスが溜まっている時期とペットの死が重なってしまった場合、ペットロスが長引いたり、さらにうつ病になったりする可能性が高まります。 心の支えである大切なペットを亡くすということは、うつ病への大きなきっかけの一つと言えるでしょう。

うつ病の症状があったら医療機関へ!

強い悲しみや不安感、不眠、イライラ、倦怠感など、うつ病の症状が明らかに表れている場合であれば、すぐに精神科や心療内科の専門医に相談するようにしましょう。
先ほども申し上げましたが「落ち込み」と「うつ病」は違うものです。
ペットを失ったことにより、落ち込みが激しいからといって、うつ病と断定できるわけではありません。家族同様に愛していたペットですから、この悲しみは当然のことです。その心の反応は、正しいものであるといえます。
しかし、その落ち込みがあまりに深く、仕事や日々の生活にまで影響が現れているのであればうつ病の典型的な特徴です。悲しみだけではなく、イライラして怒りっぽくなったり、部屋に引きこもって出てこられなくなってしまったりすることもあります。
そのような症状が現れた場合、もはや自分自身で感情のコントロールを行うことは難しくなりますから、うつ病の治療によって改善を図るようにしなければならないのです。
品川メンタルクリニックでは、ペットロス症候群の方も来院されています。辛い症状でお悩みであれば、早めにご相談をお願いします。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

ペットロスの予防や対処法

ペットロスによる深い悲しみは、誰でも沸き起こる感情です。ただペットに依存している人や自責の念が強い人であれば、ペットロス症候群になりやすいといえます。
ここではペットロス症候群はどのように予防すればいいのか、周りで気付いた人はどのように対処すればいいのかお伝えします。

ペットロスからの立ち直り方

ペットロスによる悲しみは、5段階の過程があると考えられています。個人差はありますが、この過程を経ながら少しずつ元通りの生活を取り戻していくことができます。
1つ目に訪れる感情は「信じられない」「認められない」という、事実が受け入れられないものです。
特にペットが亡くなった場合、周りの人たちは「ペットは死んだもの」として取り扱いますが、自分自身はどうしても受け入れることができません。そのことから自分自身が孤立してしまう場合もあります。
2つ目に訪れる感情は「苦しみ」「怒り」です。
例えば周りの家族に対して、「もう少し早く病院に連れて行けば助かったのに」とか、獣医に対して「早く治療してくれれば助かったのに」 と理不尽に怒ってしまうことがあります。また「自分が早く気づいていれば」と自分自身を責めてしまうこともあります。
3つ目に訪れる感情は「交渉」や「取引」と呼ばれる行為です。
神に対して「私の命と引き換えにペットの命を返して欲しい」とすがることや奇跡を信じて魔術などに願うこともあります。これは決してペットを供養するという考えではありません。
4つ目に訪れる感情は、落胆による抑うつ状態です。
自分自身がどれだけ頑張ったとしても奇跡が起きることはなく、どうしてもペットは戻ってこないと受け入れた時にとても沈んだ気持ちになってしまいます。絶望的になって死にたいと考える人もいます。
5つ目に訪れる感情は、悲しみは感じながらも少しずつ受け入れていくことができる気持ちです。
時間の経過によってペットがいないことにも少しずつ慣れてきます。そして元通りの日常生活を取り戻すことができるようになってくるのです。
このようにある程度の期間を経て、少しずつ回復していくものではありますが、この症状が数カ月も続いているようであれば注意が必要です。

ペットロスの人が周りにいたら

ペットロスの症状で苦しんでいる人が周りにいる場合、その悲しく辛い気持ちに共感することが大事です。
周りの人は「ペットのことなんて忘れたらいい」「また新しいペットを飼えばいい」などと安易に言葉をかけてしまうことがありますが、これは間違いです。
苦しんでいる人にできることといえば「話を聞いてあげること」が一番です。中には自分の感情を抑えてしまう人がいますが、悲しい感情はどんどん吐きだしてしまうほうがいいのです。
また、ペットロスの状態が始まってから既に数か月経過しているような状態で、抑うつ症状や不眠、イライラなど気になる症状が表れているようであれば、精神科や心療内科などクリニックに付き添いしてあげるようにしましょう。

ペットを飼うときに必要な覚悟とは

ペットは家族の一員として、私たちの心を癒してくれるものです。愛情をたっぷりと注いで接していくことはとても大事なことです。
ただし、命あるものはいつか別れが来るものであると、常々から考えておかなければなりません。ペットを飼うということは、そのペットが亡くなったときの、覚悟が必要です。

ペットが亡くなったときの悲しみから立ち直るためには、人それぞれの段階を踏んでいく必要があります。葬儀や供養などを執り行うなかで、ペットに対する感謝の気持ちを大切にしましょう。

ペットロスでお悩みなら
品川メンタルクリニック

薬を使わない治療方法
「磁気刺激治療(TMS )」とは

ペットロスでお悩みなら品川メンタルクリニックへ~薬を使わない治療方法「磁気刺激治療(TMS)」とは~

品川メンタルクリニックでは、ペットロスで悩んでいる方も受診されています。
ペットを失ってしまったストレスから不安や緊張状態が強くなり、うつ病などの精神疾患を発症させてしまう場合があります。
できるだけ早期に精神症状の軽減に取り組むことが大事です。
うつ病などによる精神症状の軽減は、品川メンタルクリニックで行っています。早めの発見・治療がより早い解決方法になるでしょう。症状などでお悩みであれば、気になっていることをお気軽にご相談ください。
品川メンタルクリニックでは的確な診断ができる「光トポグラフィー検査」を導入し、新しい治療法「磁気刺激治療(TMS)」によってうつ病やストレスの改善を行っています。

状態を的確に知ることが大切です!
うつ病かどうかをグラフデータで診断サポート!

短期間の治療が可能です!
薬に頼らない新たなうつ病治療があります!

薬を使わない新しいうつ病・ストレス治療法「磁気刺激治療(TMS)」は副作用の心配がなく、抗うつ薬での治療と比べ比較的短期間で効果を実感することができます。
「磁気刺激治療(TMS)」であれば、12歳以上(中学生)から治療を行うことが可能です。ペットロスによる、辛い症状で悩んでいるのであれば、ぜひ品川メンタルクリニックにご相談いただきたいと考えています。
※診察は10歳以上から受けられますが、TMS治療が対象かどうかは医師の判断になりますのでご了承ください。

初村 英逸

【監修】初村 英逸医師

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニックの梅田院院長。我々の精神科医療の仕事は、殊に患者さんを「ラク」にすること、それは可能な限り、安心を提供することだと思っています。
精神保健指定医

■関連リンク

初村 英逸医師が在院する品川メンタルクリニック梅田院のページはこちら

品川メンタルクリニックでは、うつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わないストレス・うつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
ストレスやうつ病が悪化する前に、ぜひご相談ください。

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