ヒステリー(転換性障害・解離性障害)

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)
ヒステリー(転換性障害・解離性障害)

「ヒステリー」という言葉は大きく2つに分けられます。1つ目は古くから用いられてきた精神医学用語で、現在の診断基準としては「転換性障害・解離性障害」に分類されるものです。2つ目は、感情がコントロールできず、激しい興奮・怒り・悲しみをむき出しにした状態のことです。
転換性障害や解離性障害は、一般的に考えられている単に感情のコントロールができないというものではなく、「意識消失」「手足が動かない」「声が出ない」などの症状が現れます。
なかには抑うつ症状が目立つ場合もあり、抗うつ薬によって治療が行われることも珍しくありません。
ここでは「ヒステリー(転換性障害・解離性障害)」について詳しくお伝えし、うつ病との違いについてもご紹介します。

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)のサインや症状の具体的内容

「ヒステリー」は現在の診断基準として「転換性障害・解離性障害」に分類されますが、以前はヒステリーとして一括されていました。
転換性障害や解離性障害は、一般的にヒステリーとして活用される単なる興奮状態ではなく、意識に障害があり、意識消失や健忘(記憶を失くす)、けいれんなどの症状がみられ、重症になると多重人格や行方不明になることがあります。

転換性障害とはどのような病気なのか

『転換性障害』は「身体表現性障害」とも呼ばれており、日常生活におけるストレスがきっかけとなって、急に歩けなくなったり、手が挙がらなくなったり、声が出なくなるといった身体的な疾患のような症状が現われることが特徴です。
そのため最初は内科的疾患が疑われ検査が行われますが、まったく異常が見当たりません。身体的な疾患が認められないことが転換性障害の条件となります。精神科を紹介されて診断を受けてみてはじめて、転換性障害と診断されることが多く見られています。
発症時期は10歳~35歳までに多く見られ、割合としては女性に多いことが知られています。小児や思春期の場合には、突発的に発症しますが一過性であることが多いですが、20~25%程度は1年以内に再発しており、症状が慢性化することもあります。
小児の場合には、精神的に未熟な面があるため、ストレスをストレスとして自覚できないため、身体的な発作やけいれんなどの症状となって現れやすいと考えられています。

解離性障害とはどのような病気なのか

『解離性障害』は、「解離性同一性障害」「解離性健忘」などに分類されるもので、自分の存在が失われている状態をいいます。
通常私たちは、自分は自分として存在を認識することができます。過去からどのように過ごしてきて、自分がどのような人間なのかイメージすることができます。
しかしこのひとつにまとまっている意識を、「解離」の状態においては意識をまとめることができず、一時的に失われています。
記憶の一部分が完全に抜け落ちていたり、感情が麻痺してしまったり、知覚の一部を感じられなくなったりします。
特に「解離性同一性障害」では、自分の中に複数の人格が存在する状態で、自分自身ではこの人格を制御することができないといった感覚を体験することがあり、多重人格障害(解離性同一性障害)といいます。ある人格が現れている時には、別の人格の時の記憶がないことが多いのが特徴です。
このような症状が持続したり、反復的に現れるために、日常生活においても大きな影響を及ぼすことになります。うつ病と併存することもあり注意が必要です。

サインや症状の具体的内容

転換性障害の症状は、「運動症状」「感覚症状」「発作症状」が特徴的であるといえます。

転換性障害の症状特徴的な症状
運動症状 立てなくなったり、歩けなくなったりといった脱力や筋力低下が生じることがあります。そのためよろめいたり、歩く時にぎくしゃくする動きが見られます。
感覚症状 皮膚の感覚がなくなったり、視覚や聴覚が弱くなったりすることがあります。反応ができなくなったり、ものが二重に見えたり、声が出せなくなるようなこともあります。
発作症状 意識消失したり、手足の震えが止まらなくなったりすることがあります。意識消失しても、てんかんではありません。

解離性障害の症状としては、「解離性健忘」「解離性とん走」「離人症」「解離性てんかん」などがみられます。

解離性障害の症状特徴的な症状
解離性健忘 心的外傷や強いストレスをきっかけにして、その出来事の記憶を思い出せなくなります。記憶をフラッシュバックさせてしまうこともあります。
解離性とん走 強いストレスによって突発的に、自分自身が誰かという意識から切り離されてしまう症状です。突然、家出してしまうこともあり、過去の記憶が思い出せないこともあります。
離人症 自分が自分ではない感覚になり、自分の意思と身体が分離され、遠くから眺めているように感じます。
解離性てんかん 強いストレスによって、意識消失したり、体が動かせなくなったり、感覚がなくなってしまうなどの症状が現れます。

これらの症状が現れた場合、内科的疾患が疑われますが、まったく異常が見当たりません。本人がその症状に苦しんでいるのが大きな特徴なのです。

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)の可能性についてのセルフチェック

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)の可能性についてのセルフチェック
ヒステリー(転換性障害・解離性障害)の可能性についてのセルフチェック

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は、強いストレスによって引き起こされると考えられているものですが、無意識的に症状が現れ、自分自身もきっかけや原因が分からずとても苦しいものとなります。
そのため気になる症状が現れている場合においては、精神科や心療内科などに相談するようにしてください。
ここではどのような人がなりやすいのか、どのような症状が現れてしまうのかお伝えしたいと思います。

どのような人がなりやすい?

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は、いずれも強いストレスがきっかけとなって発症すると考えられています。

  • 子供のころに受けた身体的虐待や性的虐待、放置など
  • 信頼している人からの裏切りや暴力
  • 自然災害などの心的外傷が重篤化
  • 事故や事件を目撃するなどの強い情動ストレス
  • 無意識的な精神的葛藤

このような経験がきっかけとなって、無意識的に引き起こされる可能性があるのが特徴的だといえます。
また最近の研究によりますと、脳の機能障害が要因となって、引き起こされているともいわれるようになりました。

どのような人がなりやすい?

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)が発症すると次のような症状が現れます。

  • 突然けいれんして意識がなくなる
  • 顔や体が自分の意思とは関係なく動いてしまう
  • 声が出なくなったり、ろれつが回らなくなる
  • 眼がよく見えなくなったり、まったく見えなくなったりする
  • 体を動かしにくくなり、ぎくしゃくしている
  • 立てなくなったり、歩けなくなったりする
  • 無表情でぼんやりしており、話しかけても返事がない
  • 大事な約束だったのに忘れてしまって思い出せない
  • 気がついたら全く別の場所にいるということがある
  • 自分がまるでロボットのように感じてしまいとても苦しい
  • 本人がまったく別人になったかのように変化する
  • こちらからの問いかけにまったく関係のない答えをする

これらの症状については、本人も意識的に行っているわけではありません。そのきっかけや原因は本人にはまったく分からないので、とても苦しむことになります。
当てはまる症状があるのであれば、精神科や心療内科に相談してみるようにしましょう。

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)の治療方法

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は、急に歩けなくなったり、声が出なくなったりといった身体的な症状が現れますので、内科的疾患を疑われることからスタートすることが多いです。
内科的には全く異常がないことがヒステリー(転換性障害・解離性障害)と診断される状況となります。
どのように治療を進めていくのかお伝えしていきましょう。

早期に発見することが大事

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は、早期に発見して治療に取り組むことが大切です。早期に発見することで、病気の進行を抑制することができ、重篤化する前に治療することができるからです。特に転換性障害では、症状が6ヶ月以上続いてしまうと、寛解しにくくなってしまいます。
自分自身はそのきっかけとなる強いストレスを意識することができず、無意識的に発症することが多くあります。家族や友人などが症状に気づいたのであれば、まず内科からでも受診してみましょう。
内科で検査した後に内科的疾患がなければ、精神科の受診をすすめられる場合があります。
ヒステリーからうつ病を発症している可能性もありますので、うつ病を併発しているのではと思いあたる場合は、早めに相談しましょう。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

精神科での治療初期

精神科での診断は、精神科医が症状をうかがいながら、注意深く観察し治療を進めていくことになります。
転換性障害の場合、発症時期は10歳~35歳までに多く見られ、それほど長引かないことがほとんどです。強いストレスがきっかけに発症しますから、安心感や安全を感じられるように配慮することでよくなるものが多くあります。
特に子供が発症した場合、身体的にも精神的にも未熟ですから、身体症状に寄り添いながら、原因となっているストレスを排除していきます。
解離性障害の場合には、MRI検査、脳波検査などを行って、薬剤治療を取り入れながら身体的原因を取り除いていきます。同時に認知療法などによって心的外傷などのストレスを排除していきます。催眠療法によって、失った記憶を思い出させ、落ち着いた生活を取り戻せるようにすることもあります。

薬物療法で症状を抑える

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は個人によって症状がさまざまです。ヒステリーに有効な薬剤はありませんから、その症状に適した薬剤が処方されることになります。
そのため薬の調整は難しく、効果が現れるのに時間がかかることも珍しくありません。
この病気は強いストレスがきっかけによって引き起こされると考えられているものですから、それらのストレスを排除し、もともと持っている性格傾向や気質なども確認しながら治療が進められることになります。
薬物治療はあくまで治療の補助的に活用されるものであると認識しておく必要があります。
不安や抑うつ症状が強く現れていることも多くあり、そのような場合には抗うつ薬や抗精神病薬が用いられることも少なくありません。
また、興奮状態が続いているような場合であれば、安定剤が用いられることもあります。

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)はうつ病を併発していることが多い?

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)を起こす場合には、強い不安や抑うつ症状が現れることもありますから、うつ病を発症していることも少なくありません。そのため治療には抗うつ薬が用いられることもあります。
またヒステリー(転換性障害・解離性障害)だと考えられているにもかかわらず、実はうつ病だったということもあるのです。

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)と
うつ病との関連性

ヒステリー(転換性障害・解離性障害)は冒頭から述べてきたとおり、内科的な疾患がまったくないにもかかわらず、歩けなくなったり、話せなくなったり、意識消失してしまったりといった症状が現れます。
病気の本人は、まったくその原因が分かりませんから辛く苦しい思いで悩んでしまうことになります。
そのため「また同じような症状が現れたらどうしよう」と不安な気持ちになってしまいストレスとなって、うつ病を発症させてしまうことがあります。
また近年のうつ病には「新型うつ」「現代型うつ」などと呼ばれるものが現れています。医学的には「非定型」と呼ばれているもので、一般的なうつ病とは違い、気分のアップダウンが激しいことが特徴です。
抑うつ症状だけではなく、浪費したり、物を壊したり、激しく怒るようなこともあります。
そのような症状から、ヒステリー(転換性障害・解離性障害)だと考えられているにもかかわらず、実はうつ病だったということもあるのです。

脳の状態によってうつ病を診断する
「光トポグラフィー検査」

うつ病は研究が進むにつれて、心の病気ではなく、脳の病気であることが理解されてきました。
しかし一般的な精神科や心療内科においては、医師が患者さんの症状を聞くだけで病気を判断することになりますから、別の病気が潜んでいるということもあるのです。
品川メンタルクリニックが行っている「光トポグラフィー検査」は、新しい科学的な検査で、脳の働きを確認して本当にうつ病なのか、別の病気ではないのか、見分けることが可能なのです。
脳計測装置によって、脳に流れる血流画像によって診断することができるのです。
ヒステリー(転換性障害・解離性障害)だと診断されて、なかなか症状が改善しなかったり、気になる症状があるのであれば、光トポグラフィー検査を受けてみることをお勧めします。

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薬を使わない新しい治療法
「磁気刺激治療(TMS)」とは

「磁気刺激治療(TMS)」とは、脳の特定部位に直接磁気刺激を行うことによって、脳の血流を活性化させることができる治療法です。薬を使うことなく、うつ病の症状を改善させることができます。
精神病薬を用いた治療では、薬の調整だけでもかなりの時間を費やすことになり、場合によっては副作用だけ強く、思うような効果が現れないこともあります。
磁気刺激治療(TMS)では短い治療期間で効果が期待でき、副作用に悩まされることもありません。12歳以上の中学生であれば受けることが可能である、安全な治療法です。
品川メンタルクリニックでは、磁気刺激治療(TMS)を専門に行なっているクリニックです。ぜひご相談ください。

短期間の治療が可能です!
薬に頼らない新たなうつ病治療があります!

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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