40代のストレスとうつ病~全方向に板挟みでしんどい~

上司と部下、先輩と後輩、親と子、夫と妻──40代は、会社でも家庭でも何かと板挟みになりやすく、大きなストレスをためやすい年代です。健康診断で異常を指摘されるなど、これまでの生活習慣が健康上の不安として表面化しやすくなる頃でもあります。
こういったストレスをきかっけに、気分が落ち込んだり、不安を感じたりということは、誰にでもあることです。しかし、そのような感情や状態が長期間続いたり、頻繁に起こったりするような場合は、何らかの対処が必要かもしれません。

この記事では、40代のストレスの要因・症状やその対処方法、うつ病に発展した場合などについて解説します。

ライフステージとしての40代

ストレスの多くが個人の内面よりも、社会的環境に根差していることを考えると、育った社会や時代により、ライフステージごとの心理的特性に影響される可能性があります。
2025年時点での40代は、1976年(昭和51年)~1985年(昭和60年)生まれの人が該当します。
昭和・平成・令和の3つの元号を体験していますが、人生の大半は平成にすっぽり収まっており、とりわけ10代後半から20代前半という多感な時期を、平成の1990年代・2000年代に過ごしています。

  • 1990年代:阪神・淡路大震災(1995)、マイクロソフト「ウィンドウズ95」発売(1995)、EU統一通貨「ユーロ」発足(1999)
  • 2000年代:21世紀開始(2001)、東京ディズニーシー開業(2001)、アップル「iPhone 3G」日本発売(2008)

世界の変化から取り残され「失われた30年」と呼ばれた時代の空気を吸って育った世代であり、「就職氷河期」に直面した世代でもあります。
40代は、この時代が持っていた閉塞感や未来への不透明さから、ストレス構造やメンタルヘルスのあり方に影響を受けている可能性があります。

40代のストレスの兆候・症状

40代のストレスの兆候・症状は、以下のような形で現れます。
更年期障害も40代ごろに始まることが多いとされます。

精神的な症状

40代の精神的なストレス症状には、以下のようなものがあります。

身体的な症状

40代の身体的なストレス症状には、以下のようなものがあります。

行動面の症状

40代の行動面のストレス症状には、以下のようなものがあります。

  • ミスが増えた、仕事のパフォーマンスが落ちた
  • 身だしなみに無頓着になった
  • 口が重い、動きが重い
  • 過剰な仕事依存
  • 家族や部下に八つ当たりしてしまう

ストレスを感じたら受診すべき?

仕事で失敗する、人間関係で問題が発生する、体力の衰えを実感するなど、はっきりした理由があって数日落ち込んだり、寝付きが悪くなったりしても、それほど心配する必要はありません。40代に限らず、このようなストレス体験から一時的に落ち込んでしまうのはごく自然なことです。
しかし、気分が落ち込む、趣味が楽しくない、感情の制御ができない、孤独感が強い、仕事のパフォーマンス低下など、日常生活への支障が数週間以上続いている場合は、うつ病を発症している可能性があります。そのような場合は、医療機関を受診してください。

うつ病は治療や適切な対処なしに自然に改善することはほとんどなく、放置することで長引く傾向があります。早期の対処が早期の回復にもつながります。

40代によくあるストレス

40代は職場でも家庭でも大きな責任を背負うことになる年代です。
40代が直面しやすいストレス要因には以下のようなものがあります。

  • 職場/仕事:40代は会社員としては中堅としてさまざまな役割を期待される年代です。中間管理職として上司と部下との板挟みになったり、成果と人間関係の両立を求められたりなど、仕事におけるストレスはかなり大きなものになります。管理職になくとも、ベテラン社員として若手と管理職層との間で板挟みになりやすい年代です。
  • 家庭/家族:子供の受験・進学やそれに伴う教育負担の増加、反抗期など経済面も含めて包括的に家族を取り巻く環境が変化します。親の介護が本格的になってくる年代でもあります。
  • 健康不安:健康診断の異常指摘が増え、肥満・がん・糖尿病などの健康不安が顕在化してきます。太りやすくなり、メタボリックシンドロームのリスクが高まります。
  • 環境の変化:家庭・職場ともに責任が大きくなり、両立に困難さを感じるかもしれません。健康面では、健康診断で異常を指摘されることが増えてくる頃合いで、気力や体力の衰えを感じるようになる年代です。

ある出来事へのストレスの感じ方には個人差があります。
また、すべてのストレスが常にネガティブに働くとは限らず、むしろ適度なストレスは私たちの成長をうながし、生活を充実させるものです。
しかし、慢性的なストレスは、健康面の問題を引き起こす可能性が高く、適切な対処が必要です。

30代までと40代の違い

30代は、身体の内部で変化が起き始める年代で、健康診断の結果にCやD判定がちらほら現れはじめます[1]
30代までの生活習慣の結果が、40代で現れ始めます。気力体力の衰えを端々で感じ、それまで太っていなかった人も中年太りになりやすくなります。40代になると、肥満・がん・糖尿病などの健康不安が身近になり始めます。メタボリックシンドロームを契機に、心筋梗塞・脳卒中のリスクが高まります。女性の場合、40代から乳がんの発症率が大きく高まります[2]

40代のストレスとの付き合い方

ストレスに負けないためには、日頃からストレスと上手に付き合っていく必要があります。規則正しい日常生活を送り、毎日を楽しく過ごすことは、年代に関わらずストレスとうまく付き合う上で大切なことです。

睡眠の改善

公私にわたる高ストレス状態から睡眠の質が下がりやすいため、睡眠のコントロールが大切です。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにしましょう。特に起床時間が重要です。朝目が覚めたら、まず朝日を浴びてください。
必要な睡眠時間は個人差が大きく、何時間が最適とはいえませんが、日中に居眠りしてしまう、週末には昼まで寝てしまうというような場合は、そもそも普段の睡眠時間が足りていない可能性があります。

身体を動かす

運動には、ネガティブな気分を発散させる作用があることが分かっています。
日中に適度に運動し軽く疲労することで、夜にぐっすり眠れるうえ、記録力・思考力の改善にも役立ちます。運動習慣がない場合は、まずは近所の散歩から始めましょう。
しばらく運動から遠ざかっていた場合は、特に怪我に気を付けてください。40代はまだ十分に身体が動かせる年代なので、50代以降に向けて身体を慣れさせておくといいでしょう。

食事と水分補給

メンタルヘルスにも、生活習慣病の予防・対策にも、食事はとても重要です。栄養バランスのとれた食事を、1日3回、規則正しくとりましょう。エネルギー補給という意味だけではなく、決まった時間の食事が、体のリズムを整えてくれます。特に朝食は重要です。
また、人体の60%は水からできています。こまめに水分補給をしましょう。
アルコールは適量にとどめ、寝酒は絶対にやめましょう。

リラックスできる時間を作る

ゆっくりとお風呂に入る、本を読む、音楽を聴く、お気に入りの香りをかぐ、自然と触れ合う──心地いいリラックスした時間を過ごすのは、代表的なストレス解消法です。マッサージやストレッチなども効果的です。集中することに疲れたときは、無理をせずに気分転換することは大切なことです。
以下の記事でストレスの解消法を紹介していますので参考にしてください。

相談する

普段からストレスをためないように努めていても、どうしてもストレスがたまってしまうのは仕方がないことです。
しかし、イライラして気分が不安定だったり、仕事のパフォーマンスが落ちたり、夜によく眠れなかったりなど、心身の異変を感じたときは、一人で悩み続けずに周りの人に相談してください。話を聞いてもらうだけでも気持ちが落ち着くこともあります。相談することは弱みを見せることではありません。
もし、異変が長期間続くようなら医師への相談を考える必要があります。

40代のうつ病の特徴

一般に、うつ病は元気を失ってふさぎ込んでいるイメージで知られています。40代のうつ病でも、気分の落ち込みや意欲低下、不眠、食欲低下といった典型的な症状が現れやすいです。
気分が落ち込む、趣味が楽しめなくなる、よく眠れない、感情の制御ができない、仕事のミスが増えるなど、日常生活に支障が出る複数の症状が2週間以上続く場合は、うつ病を発症している可能性があります。

うつ病は早期発見・早期対処が重要です。「もしかしてうつ病かも……」と心配なようでしたら、セルフチェックの結果に関係なく、精神科・心流内科にご相談ください。

40代のうつ病の治療

40代のうつ病への治療法としては、《休養・環境調整》《心理療法・精神療法》《薬物療法》《電気けいれん療法(ECT)》《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》などがあげられます。

休養・環境調整

うつ病治療において休養や環境調整はとても大切です。ストレスに満ちた環境では心も休まらず、うつ病の治療どころではありません。《休養》はとにかく休むこと、《環境調整》はストレスフルな環境をストレスの少ない環境に調整することです。どちらにせよ、発症前よりもストレスを減らすことが重要です。
さらに、一日の中でリラックスできる時間を確保するなど、意識的に休息をとりましょう。
状況によっては休職する必要があるかもしれません。医師と相談しましょう。

心理教育・精神療法

《精神療法・心理療法》は、主に心理学的介入によって、患者個人が抱える問題の軽減・解消を目指す治療法を指し、多くの場合は他の治療法と組み合わせて用いられます。

薬物療法

薬物療法は《抗うつ薬》を中心とした治療法で、現在のうつ病治療の主流です。薬物療法の基本は、十分な量の抗うつ薬を、十分な期間服用することです。
一方で、副作用や服薬中断時の症状に悩まされる患者が少なくないことも事実です。症状が改善した後も、薬を中止すると中断症状(離脱症状)が出たり、うつ病が再発したりする可能性が高いため、2~3年は服薬を維持することが望ましいとされており、治療期間は長くなりがちです。

電気けいれん療法(ECT)

《電気けいれん療法(ECT)》は、頭部への通電によって人為的にけいれん発作を誘発することで、精神症状の改善をはかる治療法です。重度のうつ病や統合失調症などに高い治療効果を発揮します。
ECTには重大な副作用として記憶障害があります。また治療時に絶飲食や入院が必要など、他の治療法と比べると実施のハードルは高めです。
緊急的なケース(自殺や拒食などの生命の危機がある場合)以外は、重症患者や薬物治療が効かないときに選択されます。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)

《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》とは、磁気による誘導電流で脳の特定部位を刺激し、うつ症状の改善をはかる治療法です。うつ病治療としては治療期間が短いことと副作用がほとんど無いことが大きな特徴です。
また、TMS治療は認知機能への悪影響がほとんど認められていません。短期間で仕事に復帰できる可能性とあわせて、仕事に忙しい40代の治療にも適していると考えています。通勤しながらの治療も可能です。

品川メンタルクリニックのTMS治療

品川メンタルクリニックではTMS治療を行っています。
現在のうつ病治療の主流は抗うつ薬による薬物治療ですが、スッキリと効果が現れるうつ病患者は全体の3分の1ほどで、3分の1の人にはあまり効果が望めないという報告があります[3]
当院のTMS治療では5~6割の人が寛解(症状がほとんどなくなること)し、全体の8割程度の人の症状が軽くなっています。
前述の通り、TMS治療は副作用もほとんど無く、仕事への影響は最小限になることが期待できます。

40代でも通いやすい

品川メンタルクリニックは、40代の方でも安心して通院できるように、さまざまなサポート体制を準備しております。

  • 仕事帰りでも通いやすい、夜の19時まで診療
  • 土日も診療
  • JR品川駅から徒歩5分圏内
  • 商業ビル内なので人目の心配が無い

公私に忙しい40代の方でも予約しやすいように、ネット予約は24時間受付しております。スマートフォンやパソコンからネット予約が可能です。日中は電話やLINEからも予約受付しておりますので、必要に応じてご利用ください。

まとめ

40代が直面しやすいストレス要因には、職場や家庭での板挟み、生活習慣からの健康不安など、さまざまなものがあります。これらのストレスは、気分が落ち込む、趣味が楽しくない、感情の制御ができない、孤独感が強い、仕事のパフォーマンス低下など、さまざまな症状を生じさせます。
ストレスに負けないためには、規則正しい日常生活を送る、毎日を楽しく過ごすなど、日頃からストレスと上手に付き合うことが大切です。
慢性的なストレスにさらされ続けるとうつ病を発症する可能性があります。そのような場合は、医療機関に相談してください。
うつ病治療には、《休養・環境調整》《心理療法・精神療法》《薬物療法》《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》などの選択肢があり、当院は副作用のほとんど無いTMS治療を専門的に行っています。通勤しながらの治療も可能です。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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