冬季うつ病(季節性感情障害)~秋から冬に落ち込む季節性のうつ病~
秋や冬になると、毎年決まって気分が落ち込む──それはもしかすると《冬季うつ病(季節性感情障害)》かもしれません。冬季うつ病は、秋から冬にかけて発症し、春から夏ごろにおさまるという季節性のうつ病です。冬場に発症を繰り返すことが特徴で、症状としては、過食と体重増加、過眠などが目立ちます。
この記事では、冬季うつ病(季節性感情障害)の症状・原因・対処法などについて解説します。
冬季うつ病(季節性感情障害)とは
《季節性感情障害》または《季節性情動障害》は、“seasonal affective disorder”の日本語訳で、“SAD”と省略されます。また、“seasonal depression”《季節性うつ病》ともいわれます。
《季節性感情障害(SAD)》は、特定の季節に繰り返し抑うつ症状を発症する季節性のうつ病で、晩秋から初冬にかけて発症し、春から夏ごろに症状がおさまるというサイクルで出現することから、《冬季うつ病》とも呼ばれます。まれなケースとして夏に発症する《夏季うつ病》もあります。
なお、秋冬に発症するうつ病の全てが冬季うつ病というわけではありません。季節性があるように見えても、それが心理社会的な周期によるストレスが原因(例えば、毎年クリスマスや年末年始を一人で過ごすのが寂しいなど)の場合は、季節型とはみなされません。また、2年以上繰り返すことで周期性があると認められます。
どういう人が発症するのか?
《冬季うつ病》はカナダや北欧のように日照時間の短い高緯度地域で多く発症し、低緯度(赤道付近)になるほど減少します。
《季節性感情障害(SAD)》は若年層、女性に多く、大うつ病・双極性障害(特に双極性Ⅱ型障害)や他の精神疾患を患っている場合は、発症リスクが高くなります。
冬季うつ病の症状
冬季うつ病の症状は、気分の落ち込み、社会機能や活動の低下、過眠や過食などが中心になります。
冬季うつ病は《大うつ病》のサブタイプ(下位分類)であり、基本的な症状は従来のうつ病と共通しています。うつ病の症状は以下のようなものです。
- 気分の落ち込み
- 以前は楽しんでいた趣味や活動に興味がなくなる
- 不眠や過眠
- 食欲や体重の異変
- 不安と焦燥感(イライラ感)
- 絶望感・無価値観
- 集中力低下
- 自殺願望
冬季うつ病に特徴的な症状は以下のようなものがあります。
- 過食・体重増加と炭水化物飢餓(甘い物などが食べたくなる)
- 過眠(睡眠の長時間化・日中の過度の眠気)
- 極度の疲労・倦怠感
- 社会からの離脱(冬眠のような気分)
また、冬季うつ病患者の3分の1くらいは、春から夏にかけて少し気分が高揚した状態になることがあります。
冬季うつ病の原因
冬季うつ病の原因はよく分かっていませんが、いくつかの可能性が指摘されています。
基本的には日照時間の減少によって体内時計がずれ、身体のさまざまな異常を引き起こしていると考えられています。体内のいろいろな要素(体温、血圧、心拍、睡眠、ホルモン分泌など)を体内時計が制御しているためです。
以下のような身体的異常が、冬季うつ病の要因と考えられています。
- セロトニンレベルの低下
- ビタミンDレベルの低下
- メラトニンの過剰生成
冬季うつ病患者では冬に対するネガティブな考えもよくみられ、これも影響を与えている可能性があります。
冬季うつ病の治療
冬季うつ病も通常のうつ病に準じて治療されます。
以下のような治療法があります。
- 休養・環境調整
- 薬物療法
- 精神療法・心理療法
- 電気けいれん療法(ECT)
- TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)
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うつ病の代表的な治療法
うつ病は活発に研究され、近年では、うつ病患者の脳に機能異常が生じていることが分かってきています。治療方法も盛んに研究されており、《薬物治療》《精神療法》《経頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)》などいろいろな治療法があります。この記事では、うつ病の代表的な治療方法について解説します。
うつ病の代表的な治療法
うつ病は活発に研究され、近年では、うつ病患者の脳に機能異常が生じていることが分かってきています。治療方法も盛んに研究されており、《薬物治療》《精神療法》《経頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)》などいろいろな治療法があります。この記事では、うつ病の代表的な治療方法について解説します。
以下の《高照度光療法》は、冬季うつ病の治療によく用いられる治療法です。
高照度光療法
《高照度光療法》は、一般的には、早朝に2,500~10,000ルクスの高照度の光を浴びるというものです。照射は、顔面ではなく、網膜にしっかり光が到達する必要があり、30分~2時間の照射が必要です。
なお、照射は1分ごとに十数秒から数十秒ずつの割合で、光源を視界に収めていればよく、それ以外の時間は他のものを見ていてもよいですが、うつむくなど姿勢によっては光が十分に届かなくなるので注意が必要です。
光療法の副作用は、頭痛、不眠、眼精疲労、吐き気などがあります。いずれも軽度で、治療を続けられないほどではありません。薬の中には光に反応するものもあるため、必ず医師の指導を受けて行ってください。
参考までに明るさの目安ですが、晴れた日の昼の太陽光が100,000ルクス、曇りの日の昼の太陽光が32,000ルクス、パチンコの店内で1,000ルクス、蛍光灯の事務所が400~500ルクスです[1]。10,000ルクスは、一般的な事務所の20倍の明るさということになります。
冬季うつ病への対処
冬季うつ病の症状を緩和し、生活しやすくするために役に立つライフスタイルの改善方法もあります。
- 日光を浴びる:できる限りたくさんの自然光を浴びましょう。日中に散歩する、窓の近くに座るなど、機会を見つけて太陽光を浴びましょう。ライフスタイルや仕事の関係で日光を浴びることが難しい場合は、前述した人口光を浴びる《高照度光療法》もあります。
- 規則正しい生活:規則正しい生活の基本は、毎晩同じ時間に眠り、毎朝同じ時間に起きることです。特に1日のスタートである起床時間は非常に重要です。目覚めたら、まず朝日を浴びましょう。
- 健康的な食事:栄養バランスのよい食事を決まった時間にとりましょう。冬季うつ病では、炭水化物(特に甘い物)を無性に食べたくなりますが、カロリーの高い甘味(ケーキなど)をわざわざ選ぶ必要はなく、梨・柿・ぶどう・リンゴやみかんなどの季節の果物をとると良いでしょう。セロトニンの材料になるトリプトファンを含んだ食べ物(大豆・牛乳・卵・魚・肉など)もしっかりとるようにしましょう。もちろん、他の栄養素も十分にとる必要があります。
- 適度な運動:身体を十分に動かしましょう。屋内よりも日中に外で活動するほうが、より良いでしょう。冬季うつ病は過食の傾向が強く、運動量の減少が体重増加を招くため、なおのこと運動は重要です。
- ストレス管理:ストレスをためすぎないように、定期的にストレスを解消しましょう。
- 友人に会う:友人や家族と時間を共有することは、気分を改善し、社会的孤立を防ぐ素晴らしい方法です。
- 早めに対策する:冬季うつ病は毎年同じころに発症するので、逆算して対策することが可能かもしれません。健康的なライフスタイルは年間を通してそう過ごせれば理想的ですが、それが難しい場合でも、発症時期や発症中は、意識して健康的に過ごすようにしましょう。
いつ助けを求めるべきか?
冬季うつ病かどうかの判断には、2年以上うつ病が繰り返されるかどうか周期性を確認する必要がありますが、仮に冬季うつ病ではなくとも、うつ病自体が治療すべき精神疾患です。
気分が落ち込み、楽しかった趣味への関心を失い、睡眠や食欲に異常があるなど、日常生活に支障をきたしている場合はうつ病を発症している可能性があります。そのようなときは、つらい気持ちを我慢し続けるのではなく医療機関に相談してください。
もし、「この程度で行っていいのかな?」と、医療機関に行くことをためらうようであれば、セルフチェックなどを試してみてもいいかもしれません。
まとめ
《季節性感情障害(SAD)》は秋から冬にかけて繰り返し発症する季節性のうつ病で、《冬季うつ病》とも呼ばれます。
冬季うつ病の症状は、気分の落ち込み、社会機能や活動の低下、過眠や過食などが中心になります。
冬季うつ病の原因はよく分かっていませんが、日照時間の減少によって体内時計がずれ、身体のさまざまな異常を引き起こしていると考えられています。冬季うつ病患者では冬に対するネガティブな考えもよくみられ、これも一因となっている可能性があります。
冬季うつ病も通常のうつ病に準じて治療されますが、早朝に高照度の光を浴びる《高照度光療法》は、うつ病の中でも主に冬季うつ病の治療に用いられる治療法です。
冬季うつ病の症状を緩和し生活しやすくするためには、日光を浴び、規則正しい生活を送り、健康的な食事をとり、適度な運動するなど、ライフスタイルの改善が有用です。
気分が落ち込み、趣味などへの関心を失い、睡眠や食欲に異常があるなど、日常生活に支障をきたしている場合はうつ病を発症している可能性があるため、我慢せずに医療機関に相談してください。
品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。