学校に行きたくないのは『うつ病』だからかも?



「高校に行きたくない……」
「大学に行きたくない……」
「学校に行きたくない……」
そんな思いを抱えたまま、学校に行く人は少なくはないはずです。そのような気持ちを持ってしまうことは誰にでもあることです。不登校生徒の割合はどんどん増えている状況ですから、何も珍しいことではありません。
文部科学省の調査によると、年間30日以上の長期欠席者数は、60万人にせまることが分かっています(参考:文部科学省『令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果概要』)。
不登校になる人のなかには、うつ病などが原因の場合もありますから注意が必要です。
今、学校に行きたくないと思っている人や、実際に行けずに悩んでいる人、友人や家族が行けずに悩んでいる人などに、注意してほしい点をお伝えしていきます。
学校に行きたくない理由
学校に行きたくない理由は、大きく分けて一時的なものと慢性的なものの2つあります。
- 学校は楽しいけど、今日は行きたくない ⇒ 一時的
- 学校が合わず、毎日苦痛を感じている ⇒ 慢性的
どうしても「今日は」学校に行きたくないということは誰にでも経験があることでしょう。体調不良だったり、昨日気まずいことがあったり、行くことが面倒に感じたりなど、多くの理由が考えられます。しかし、これは一時的なものであり、このような気持ちは継続的なものではありません。
一方、「ずっと」学校に行きたくないという場合は、人間関係や勉強の悩みなど、毎日ストレスを感じるような状況が続いていると考えられます。このような場合は、何もしなければストレスがたまり続け、うつ病を発症する可能性が高まります。
- 友達や先輩・後輩との関係がうまくいっていない
- 苦手な科目がある
- 集団生活が苦手である
- 学校で恥ずかしい思いをしてしまった
- いじめにあっている
- 学校に行かないで遊んでいたい
- 受験勉強のストレスや焦り
「学校に行きたくない」と感じることは、何も珍しいことではありませんし、必ずしもダメなことでもありません。自分一人だけがそのように悩んでいるわけではないのです。決して甘えや怠けているのではなく、背景には複雑な要因が重なり合っていることが多くあります。そのため原因を特定して、対処することはなかなか難しいといえるのです。
ただ、そのように学校をストレスに思い、実際に学校に行けなくなる人のなかには、心身の状態が悪い人も少なくありません。そのような症状に気付いたのであれば、まずは「不調を認める」ことからスタートしなければなりません。
憂うつ感が続いている場合は要注意


「何となく学校に行きたくない」と、どうしても学校に行きたくない、行くことができないという人がいます。この記事を読んでいる人のなかにも、そのような人、あるいは周りにそのような人がいるかもしれません。周りからみれば、「学校に行くのは当たり前だろう」という意見があるかもしれません。
もちろん、学校に行きたくない人や行けない人も、学校が大事なことくらい理解しているはずです。その大事な学校に行けないのですから、やはり単なる甘えや怠けではないと考えられます。
学校に行けなくなる前段階として、「行きたくない」という感情がわきおこります。「行きたくない」という感情は誰しもがもちえますが、もし「行きたくない」と言っている人に「憂うつ感」が続いている場合には注意が必要です。
その憂うつ感こそが学校に行きたくないと考える、最大の原因であることもあるのです。
原因を知り、不調を認めることの大切さ
学校に行けなくなる人が増えていることは確かですが、だからといって自分がそのような状態になるとは考えてもみなかったという人が少なくありません。自分と同じように「行きたくない」「休みたい」と思いながらも我慢している人は多いですから、自分だけ休むのではなく「自分も我慢して行かなきゃ」と無理をしているのです。
我慢することが当たり前、我慢できない自分は甘えていると考えてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
学校に行きたくないと考える人には、さまざな要因が重なっていることが珍しくありません。学校になじめなかったり、勉強についていけなかったり、ということもあるかもしれません。何かに失敗してしまったかもしれませんし、人間関係がうまくいっていないのかもしれません。
もし、そのような原因から、憂うつな気分が続いているということであれば、ひたすら我慢するだけではなく、不調な自分自身を受け入れることが大切です。それは決してあなたが弱いからではなく、ストレスが積み重なって、あなたの心がいっぱいいっぱいになっているから、学校に行けなくなってしまうのです。
まずは、そんな自分を受け入れることから始めましょう。
学校に行きたくない時の対処法
学校に行きたくないと考えることは誰にでもありますが、さまざまなストレスから憂うつな気分になって行きたくないのであれば、原因となっているストレスを解消しなければなりません。
「行きたくない」と考えて憂うつになってしまうのであれば、元気がなくなって自分に自信が持てない状態であると受け入れることから始めます。甘えや怠けとして自分を責める必要はありません。
自分を受け入れていくには、その状態を認めてくれる存在も必要になります。
自分の親や兄弟、仲の良い友人にそのつらい気持ちを打ち明けてみてはいかがでしょう。「理解されないのでは?」と思い、勇気が必要かもしれませんが、本当にあなたのことを思ってくれている人であればそんなことはありません。つらい状況を打ち明けて、そんな自分を受け止めてもらうことができれば、心はずっと軽くなるはずです。
どうしても打ち明けることができないという人であれば、お住まいの地域にある相談窓口や支援団体を頼ることも一つです。どの都道府県や地域にもメンタルに関する相談を受けている相談機関はありますし、学校に行けない人を支援している団体もたくさんあります。
いずれにしても憂うつになっているのであれば、なかなか自分だけの力ではそこから抜け出すことは難しいでしょう。精神科や心療内科に相談するのも1つの方法です。
安心して過ごす場所があり、安心できる仲間がいることがとても大事なのです。
心身の危険信号を見逃さないために
会社や学校にどうしても行きたくない、行けないという状態が長引いている場合であれば、なかなか自分自身の力で対処することは難しいでしょう。
憂うつな状態が続いているのであれば、うつ病の可能性もあるからです。
うつ病は誰もが発症する可能性のある病気です。
「自分だけは絶対にならない」と考えていても、何かのきっかけによって発症することは珍しくありません。うつ病になると適切な治療をしないと改善は期待できません。うつ病には特有の心身に対する危険信号がありますから、気になる人はぜひチェックしてみてください。
ストレスが身体に及ぼす影響とは
ストレスは悪いもののように考えられがちですが、そのストレスによって学校や学業で良い結果を残す原動力にすることができるものでもあります。
ただし、そのストレスがとても大きいものになり、自分自身の心や体に大きな負担となってしまった状態が続くと、さまざまな反応が出てくるようになります。ストレスと感じるかどうかについては個人差がありますので、他の人は特にストレスに感じないようなことであっても、自分自身が大きなストレスに感じてしまうこともあります。
専門的にはストレス要因のことを「ストレッサー」と呼び、ストレッサーによる反応のことを「ストレス反応」と呼んでいます。ストレスが長期にわたると、不安・憂うつ・動悸・腹痛・下痢・イライラ・不眠など、健康に影響を与えるストレス反応が現れます。これらの症状は、個人差がありますので、必ず全て現れる症状ではありませんし、いくつかの症状が重なっていることも珍しくありません。
症状が長引いて、悩まされているのであれば、うつ病の可能性がありますので、医師に相談することをおすすめします。
うつ病の原因は1つではない?
うつ病の原因は、さまざまな要因が重なって引き起こされていると考えられています。
ただ、まだまだ社会的には理解されているとはいえず、「気の持ちよう」「単なる甘え」「ゆっくり休めば治る」などと軽く見られがちです。
どのような要因によってうつ病が発症してしまうのか、またうつ病が発症してしまったときにはどのように過ごすことが大事なのかお伝えします。
さまざまな要因から発症するうつ病
うつ病の原因はストレスがきっかけとなって発症することが多いですが、うつ病の要因はそれだけではありません。
うつ病は「環境的要因」「身体的要因」「遺伝的要因」が複雑に絡み合って発症します。
「環境的要因」とは、心理的なストレスを受ける要因となっているものをいいます。学校はストレスの要因になりますが、もう少し深く見れば、人間関係、成績へのプレッシャー、先生やクラスメイト、友人の対応などがあげられるでしょう。
「身体的要因」とは、脳の変化のことを指しています。うつ病は心理的なストレスがきっかけとなって脳の働きが悪くなることによって発症します。つまり、うつ病は脳の病気です。
「遺伝的要因」とは、生まれながらの性質のことです。親や兄弟にうつ病がいる場合、発症する確率が高くなる傾向にあります。
このように考えてみると、うつ病は単純に甘えや怠けではないことが分かります。適切に治療しなければ、改善させることはとても難しいのです。
精神面の休養は悪いことではない
周りの人たちが学校に行くなかで、自分だけが休んでしまうようなことになるといけないと考え、無理をすることで状態を悪化させてしまうことがあります。しかし、うつ病は甘えている訳でも怠けている訳でもなく、ストレスによって引き起こされた脳の病気なのです。
脳がとても疲れている状態ですので、まず一番大事なことは「休養すること」です。
うつ病になりやすい性格に「几帳面」「生真面目」「曲ったことが嫌い」などがあげられます。とても真面目に頑張ろうとする性格ですから、休養することで自分を責めてしまう人がいます。休むことは悪いことではありません。「学校に行かないと」と焦る必要もありません。
まずは専門の医療機関に受診し、主治医の指示のもとゆっくりと休んで治療に取り組むことが大事です。
重症化する前に専門の医療機関へ
うつ病には、できるだけ早く治療に取り組む必要があります。心身の不調が長引いてしまうと、うつ病が重症化してしまい、治療に取り組んでもなかなか改善できないからです。
生真面目で几帳面な人ほど、無理して頑張ろうとする傾向にあります。自分の症状を隠して、どんどん症状が悪化し、どうしても学校に行けなくなったときには、すでに重症化しているということがあるのです。
気分が落ち込む、趣味などが楽しめない、よく眠れない、食欲が落ちたなどの症状が数週間以上続いているようであれば、すぐに専門の医療機関で受診することをおすすめします。
また、家族や友人にそのような症状の人がいる場合であれば、受診に付き添ってあげるといいでしょう。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。