うつ病の再発~原因と予防のためにできること~

うつ病は再発しやすい疾患だといわれています。
最初のうつ病から回復しても6割が再発し、その後も再発を繰り返すたびに再発率が上がることが知られています。症状の出方が変化する可能性もあり、その場合、再発に気付きにくいかもしれません。うつ病治療では再発のことも考えておく必要があります。

この記事では、うつ病の再発とそのサイン、原因・危険因子、再発防止のヒントなどについて解説します。

再発と再燃

うつ病治療が進み、ほとんど症状がなくなった状態を《寛解》といい、寛解が一定期間持続することで《回復》したとみなします。回復するまでに症状が悪化する(ぶり返す)ことを《再燃》、回復後に症状が再出現することを《再発》といいます。回復までの「一定期間」は基準や研究によってまちまちで2~6カ月、多くは4~5カ月とされています。
医学的定義上はこのように区別されていますが、実際の症状の落ち着き方は個人差も大きく、厳密にこれらを区別することは容易ではありません。個人の状態をみる場合は医師が判断することになります。
なお、最近の各国のうつ病診療ガイドラインではこの両者を区別していないことが多くなっています。
また、日常会話では特に区別せずに「再発」か「ぶり返す」という使い方が一般的なため、医師から患者様への説明時もそのようにされることが多いでしょう。

再発を感じたら受診すべき?

再発/再燃の区別は、医師にとっては必要なことですが、今、体調不良に見舞われているあなたが2つを区別する必要はありません。
再び、メンタルや身体の不調を感じ、日常生活に支障をきたしているような場合は、再発か再燃かに関係なく医師にご相談ください。

再発や再燃では、以前とは異なる症状が出ることもあります。うつ病の代表的な症状としてセルフチェックを用意していますので、必要に応じてご活用ください。

うつ病の再発率

うつ病は再発しやすい疾患であるといわれています。
最初のうつ病から回復しても6割が再発し、再発経験者の7割が3回目を再発、さらに3回の発症者の9割が4回目を再発と、発症を繰り返すたびに悪化します[2]

米国国立精神衛研究所(NIMH)が資金提供した《STAR * D》研究では、以下の手順で4段階にかけて「最初の抗うつ薬処方で改善しない患者の治療方法」を調査しました。

  • (第1段階)最初の抗うつ薬を投与。
  • (第2・3・4段階)各12週間かけても寛解(症状がほぼなくなること)または反応(うつ病の重症度が半分以下に改善すること)に至らない場合は、次の抗うつ薬に切り替え、もしくは追加投与。

各段階の寛解者と治療反応者をフォローアップすることで、再燃率についても調査しています。

この研究では、フォローアップ時に連絡がついた人の約4~7割が再燃しています。寛解者に限った場合でも3~5割が再燃しています(図2)。
また、より多くの治療段階を要した患者ほど、短期間で再燃しています。再燃までに要する期間は3~4カ月程度でした(図3)。

再発の兆候(サイン)

うつ病再発の兆候(サイン)は、うつ病の初期症状と基本的には変わりありません。
ただし、症状の出方は前回と同じとは限らず、異なる可能性もあります。症状が異なる場合、再発に気付きにくいかもしれません。
以下はうつ病の代表的な症状です。

必要に応じて、セルフチェックなどもあわせてご活用ください。

ただし、うつ病の再発でも早期発見・早期治療が大切です。「再発かも?」と心配な場合、日常生活に支障が出ている場合は、遠慮せずに医療機関にご相談ください。

再発の原因と危険因子

うつ病の再発/再燃の原因やリスク要因には以下のようなものがあります。

  • 治療の中断:治療を早期に中断すると回復が不完全になる可能性がある。
  • 再発対策の欠如:維持療法など、再発に対する対策は再発リスクを下げる。
  • うつ病の既往歴:過去に再発が多いと再発リスクが高い。
  • うつ病の重症度:より重度なほうが再発しやすい。
  • 他の精神疾患の併存:他の気分障害(気分変調症・双極性障害など)、不安障害(パニック障害全般性不安障害・広場恐怖症。その他の恐怖症)やアルコール依存症・薬物依存症など、他の精神疾患を併存していると再発しやすい。
  • 精神疾患の家族歴:うつ病を含め、あらゆる精神疾患の家族歴が再発に関連。
  • 幼少期の虐待。
  • 症状が残存している。
  • 初回のうつ病発症が若年期である。
  • 強い神経症傾向。
  • 否定的な認知。
  • ストレスの多い生活上の出来事。
  • 社会的支援の不足。

再発防止のためのヒント

再発/再燃の防止には、以下のような方法が役立つ可能性があります。

  • 最後まで服薬する:処方された薬は自己判断で中止せずに、最後まで飲み切りましょう。服用が難しい事情がある場合は、医師に相談しましょう。
  • 維持療法を受ける:維持療法は再発リスクを大きく軽減できます。薬物療法の場合、寛解時に抗うつ薬治療を中断すると40~50%の再発リスクがありますが、6~12カ月の継続治療で13~20%までリスクが下がるという報告があります[4]
  • 友人や家族の協力を得る:友人や家族に、どのようなサインに注意すべきか伝えておくと、あなたが見逃した兆候に気付いてくれる可能性があります。自分では気付かなくても、周囲の人が不調に気付くということはよくあります。
  • 再発に備えておく:再発のサインが出たときに迷わず対応できるように準備しておくとよいでしょう。あらかじめ医師に相談してどのような備えができるかを相談しておくのもよいでしょう。
  • 質の良い睡眠を十分にとる:夜更かしやバラバラな起床時間など、不規則な生活リズムは睡眠の質を低下させます。快適な睡眠には睡眠のリズムを毎日守ることが大切です。毎日同じ時間に寝て、毎日同じ時間に起きる習慣を身につけましょう。目覚めたら朝日を浴びましょう。
  • 身体を動かす:適度に運動することで、夜の寝つきがよくなります。また、適度な運動がメンタル改善に役立つことが分かっています。
  • 栄養バランスの良い食事をとる:栄養バランスを考えた食事を、毎日3回、決まった時間にとりましょう。朝食が特に重要です。
  • リラックスできる時間を過ごす:ストレスをためすぎないようにしましょう。ゆっくり入浴する、読書する、音楽を聴く、趣味を楽しむなどのリラックスできる時間を過ごすことは、ストレスの解消に有用です。

まとめ

うつ病は再発しやすい疾患であるといわれています。
最初のうつ病から回復しても6割が再発し、その後も発症を繰り返すたびに悪化します。
うつ病再発の兆候(サイン)は、うつ病の初期症状と基本的には変わりありません。ただし、症状の出方は以前と異なる可能性もあります。その場合、再発に気付きにくいかもしれません。
うつ病の再発の原因や危険因子には、「うつ病の既往歴」「うつ病の重症度」「他の精神疾患の併存」「精神疾患の家族歴」「若年期の発症」「治療の中断」などさまざまなものがあります。
再発の防止には、「最後まで服薬する」「維持療法を受ける」「友人や家族の協力を受ける」「再発に備えておく」「規則正しい健康的な生活を送る」などが役立つ可能性があります。
うつ病の再発でも早期発見・早期治療が大切です。日常生活に支障が出ている場合は、遠慮せずに医療機関にご相談ください。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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