パニック発作の症状と対処、うつ病との関係



《パニック発作》は、激しい恐怖・不安や不快感の最中に、動悸、心拍増加、冷や汗、息苦しさ、死への恐怖など、いくつもの身体や精神の症状が現れ、短時間で治まる発作です。
通常、症状は数分でピークに達し、数分から30分、長くても1時間以内に自然消失します。
パニック発作は生命を脅かすような危険なものではありませんが、発作を経験する人や、それを目撃する人にとっては恐ろしい症状です。
この記事では、パニック発作の症状や種類、発作が生じる疾患などについて解説します。
パニック発作とは
《パニック発作》は、数分から1時間程度持続する突発的で激しい恐怖の発作です。動悸、息苦しさ、死への恐怖などの複数の心身の症状が現れます。
その名称から、《パニック障害》と1対1の関係にあるように誤解されがちですが、実際には他の不安症はもちろん、うつ病を始めとしたさまざまな精神疾患、さらには身体的な疾患などにも現れる、よくある症状の1つです。米国では1年間に成人の11%がパニック発作を経験します。
パニック発作は生命を脅かすものではありませんが、発作を経験する人や、それを目撃する人にとっては恐ろしいものです。
パニック発作の症状
パニック発作では、激しい恐怖・不安や不快感の最中に、いくつもの身体や精神の症状が現れます。
アメリカ精神医学会(APA)の基準では、以下の13の症状のうち4つ以上が現れるとされています。
- 動悸、心拍増加
- 発汗(冷や汗)
- 身体や手足のふるえ
- 息切れ、息苦しさ
- 息が詰まる感じ
- 胸の痛みや不快感
- 吐き気、腹痛、下痢
- めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
- 寒気、火照り
- しびれ、うずき感
- 非現実感、離人感(自分が自分でない感じ)
- 正気や自制を失う(気が狂う)ことへの恐怖
- 死への恐怖
これらの症状は診断の基準に用いられているものであり、これら以外に他の症状(口の渇き、目がかすむ、頭痛、尿意、便意など)が現れることもあります。
症状が落ち着いたあとに、疲労感・倦怠感を感じることがあります。
パニック発作の持続時間
通常、症状は数分(多くは10分以内)でピークに達します。1回の発作は数分から30分、長くても1時間以内に自然に消失します。
パニック発作の種類
パニック発作は、「予期されるもの」と「予期されないもの」の2型に分類されます。
予期されるパニック発作
「予期される」とは、明らかなきっかけがある場合です。例えば、犬に吠えられて発作を起こすような場合、これは「予期される」パニック発作です。
予期されるパニック発作は、状況に見合わない場合に病的とみなされます。山の中でクマと遭遇したときにパニック発作を起こすのは正常な反応です。
予期されないパニック発作
「予期されない」とは、明らかなきっかけや前ぶれがない場合です。つまり、くつろいでいるときや、夜間眠っているときなど、周囲の状況とは無関係に起こるものです。
睡眠中に発作が生じて目が覚めるというパターンは多く、米国ではパニック発作を持つ人の4分の1から3分の1が体験していると推定されています。
なお、《パニック障害》は、この予期されないパニック発作を繰り返す精神疾患です。
パニック発作は受診すべき?
後述しますが、パニック発作はパニック障害やうつ病を始めとして、さまざまな疾患にともなって出現する症状です。
パニック発作の症状には、身体的な問題(例えば心臓発作)に似たものもあります。胸の痛み、呼吸困難、意識喪失などの症状がある場合は、パニック発作よりもそういった脅威度の高い疾患である可能性を考慮し、すぐに救急医療にかかってください。
パニック発作は、繰り返すことで症状を悪化させることも多いため、一度でも状況に見合わないパニック発作が生じた場合は、医療機関に相談する必要があります。特に日常生活に支障が出ている場合は、すぐに受診してください。
パニック発作の治療
何かの疾患の症状としてパニック発作が現れている場合は、その疾患の治療法に準じます。
パニック発作の治療は、主に《心理療法》と《薬物療法》によります。
心理療法
パニック発作への心理療法では、主に《認知行動療法(CBT)》が用いられます。認知行動療法は、人の心理面に働きかけることで、否定的な思考パターンを修正し、状態の改善を図る心理療法です。
薬物療法
パニック発作への薬物療法では、《抗うつ薬》や《ベンゾジアゼピン系抗不安薬》が用いられます。
抗うつ薬は、主にSSRIが用いられます。抗不安薬は即効性がありますが、耐性と依存の問題から短期間の処方が原則です。
パニック発作への対処
パニック発作の開始後に発作を止める方法はありませんが、発作が治まるまで症状を管理するために実行できることはいくつかあります。
- パニック発作を起こしていることを認める:パニック発作そのものは生命を脅かすようなものではないこと、一時的な症状であることを思い出すことは恐怖心の管理に役立ちます。
- 深呼吸する:呼吸に関する症状はパニック発作の恐怖心を増大させる可能性があります。できる限り深く、ゆっくり、やさしく鼻から息を吸い、ゆっくりと口から息を吐きましょう。目を閉じて、呼吸に集中してください。
- 歩いてその場から移動する:歩いて移動することで、ストレスの多い環境から離れることができ、呼吸を整えることができます。動き回ることは軽い運動であり、運動はストレス解消とリラックスに役立ちます。
- 「5-4-3-2-1法」を試す:「5-4-3-2-1法」とは、五感を意識することで不安から注意をそらす方法です。以下で説明します。
5-4-3-2-1法
「5-4-3-2-1法」とは、五感で感じているものに注目することで、不安から注意をそらす方法です。
転倒してけがなどしないように、しゃがむ、座る、手すりをつかむ、寝転ぶなど安定した姿勢をとり、周囲を見回して気付いたものを確認します。
- 見えるものを5つ確認する:自分自身の手、窓越しの空、机の上の文具などを、目に見えるものを5つ数えます。
- 触れるものを4つ確認する:地面についた足、椅子に座ったお尻、つかんだ手すり、顔をなでる風など、触れることができるものを4つ数えます。
- 聞こえるものを3つ確認する:風の音、通りの喧騒、時計の針が進む音などに耳を傾け、聞こえるものを3つ数えます。
- 匂いを2つ確認する:石鹸の香り、コーヒーの香りなど、異なる2つの匂いを識別します。
- 味わうものを1つ確認する:ミント、ガム、新鮮な空気など、味わえるものを1つあげます。
このエクササイズは、今、この瞬間に不安を感じる原因となっているものから、周囲に注意を移すことに役立ちます。注意をそらすことで、不健康な思考パターンを中断します。
パニック発作の危険因子
パニック発作の危険因子には以下のようなものがあります。
- パニック発作やパニック障害の家族歴
- 幼少期の虐待経験
- 性的暴行や大事故などのトラウマ体験
- 家族の死や重病など、人生における大きなストレス
- 離婚や出産など、人生における大きな変化
- 喫煙、カフェインの過剰摂取
パニック発作が出る疾患
パニック発作(およびパニック発作類似症状)は、さまざまな精神疾患や身体的疾患で生じます。例えば、以下のような疾患です。
- パニック障害を含む不安障害・恐怖症
- PTSD
- 強迫症
- 気分障害(うつ病、双極性障害など)
- 物質使用障害(アルコール依存症など)
- 甲状腺機能障害
- 呼吸器疾患
パニック発作とうつ病
パニック発作だけではなく、気分が落ち込む、趣味や活動が楽しくなくなったなどの複数の症状がある場合はうつ病を発症している可能性があります。
パニック発作のすべてが疾患とは限りません。例えば、あなたがクマに襲われたときにパニック発作が現れたとしても、それは正常な反応です。
しかし、発作が正常な反応かどうかを心配し続ける代わりに医療機関を受診するのは正しい判断です。結果として正常であると判明したとしても、それはあなたの心配ごとが1つ解消されたことになりますから無駄ではありません。
医療機関にかかるかどうか迷うくらい心配な場合は、セルフチェックの結果に関係なく受診することをおすすめします。
まとめ
《パニック発作》は、激しい恐怖・不安や不快感の最中に、動悸、心拍増加、冷や汗、息苦しさ、死への恐怖など、いくつもの心身の症状が現れ、短時間で治まる発作です。パニック発作は不快な症状ですが、生命を脅かすような危険なものではありません。
通常、症状は数分でピークに達し、数分から30分、長くても1時間以内に自然に消失します。パニック発作は、明らかなきっかけがある「予期されるもの」と、そうではない「予期されないもの」の2つの型に分類されます。
家族歴、トラウマ体験、人生における大きなストレスや変化、喫煙、カフェインの過剰摂取などはパニック発作を引き起こす可能性を高めます。
パニック発作は、《パニック障害》や《うつ病》などの精神疾患や、身体的な疾患などでも現れる、よくある症状の1つです。発作だけではなく、気分が落ち込む、趣味などが楽しくなくなったなどの複数の症状がある場合はうつ病を発症している可能性があります。そのような場合は、医療機関を受診してください。


品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。