満員電車のストレス原因と対処法

満員電車のストレスで心身の負担を感じる方へ
満員電車のストレスで心身の負担を感じる方へ

誰もが不快な思いをしている満員電車。就業開始時間の融通がきかない日本では、フレックスタイム制や在宅勤務(リモートワーク)を導入している企業があるものの、今なお対策が十分とはいえないまま、多くの人がその苦痛に耐えながら電車に乗っています。都心部のラッシュ時はとにかく他人との距離が近く、身じろぎひとつできない状況のときもあるでしょう。
人が密集して気温が上がり、湿度も高くなり、自分の体温調節さえできない、そんな状態で「具合が悪くなったことがある」という人も少なくないはず。それが1回や2回なら「たまたま体調が悪かった」とも言えますが、頻繁に気持ち悪くなったり、倒れたりしていたらうつ病を発症しているかもしれません。ここでは満員電車とうつ病の関係を紐解いていきましょう。

満員電車の不快指数は
80を超える!?

人には、他人に近づかれると不快に感じる“縄張り”、いわゆる「パーソナルスペース」があります。友人と話すのにちょうどいい距離が75~120cmといわれ、親しい友人であっても45cmがリミット。それ以下は恋人や家族との領域で、ゼロに近づけばいくら親しい相手でもストレスを感じます。
しかし、日本の満員電車は誰も彼もがゼロ距離に侵入し、そこにいるすべての人がお互いに落ち着かない時間を過ごしています。これだけでもすでに心身の負担は大きなものですが、満員電車にはさらなる「不快になる理由」が存在しているのです。

満員電車のストレスが心身の負担になる原因

蒸し暑さを表す数値に「不快指数」という指標があります。
例えば「湿度75%、気温26度」のとき、不快指数は約75といわれ、75は半数以上の人が不快感を抱く指数。80を超えるとほとんどの人がその環境を不快に感じるといわれます。満員電車の状況を思い浮かべてみてください。空調が行き渡らず、車内はつねに高温多湿。雨の日ともなれば湿度は80~90%となり、満員電車内の不快指数は優に80を超え、誰もが不快感を覚えている状態になります。
また、この高温多湿の車内は、気分の問題だけでなく身体的にも危険です。熱中症は「高温多湿」「無風」「過密」であることが条件に起こりやすいといわれますが、満員電車はこの条件をすべて満たしているのです。

また、満員電車は他人との距離が密接になる為、精神的なストレスを感じている方が多いと思います。
混雑状況によっては、身動きが取れない状況が続き、息を吸うのもつらい時があります。
満員電車のストレスに関する調査結果によると「満員電車は戦闘機のパイロットなどが戦場で感じるストレス以上のストレスを感じる」との結果が出るほどです。
通学・通勤のために満員電車に乗ることが当たり前の日本人にとって、満員電車はとても心身の負担になる大きな原因の一つなのです。
このような満員電車に関する統計や論文等を考慮して、国でもテレワークや時差通勤の推奨など、満員電車を極力なくすような新たな取り組みを積極的に推進するようになりました。さらに新型コロナウイルス感染予防対策として、積極的な導入を企業へ働きかけていますので、少しでも満員電車が解消され、心身への負担が軽減されることに期待したいですね。

満員電車のストレスで引き起こされる不調とは

その日の健康状態によっても、満員電車で不調を感じる可能性は変わります。
貧血症や偏頭痛持ちなどもともと不調を抱えている人は、そもそも体調が急変するリスクが高いことは、ご自身もこれまでの経験で感じていらっしゃるかもしれません。また、過労や二日酔い、睡眠不足の場合も症状が出やすい傾向があるでしょう。妊娠中の女性、特につわりの強い人にとって満員電車は最悪の環境といえます。電車移動が必要な日は、ラッシュ時を避けるなど、電車に乗る時間の工夫が必要です。
満員電車の中で起こる症状は、熱中症に似ています。めまいや意識がボーッとする感じ、ふらつきなどを感じやすく、その空間に居続けることで症状が悪化することも。そうなると吐き気やけいれん、失神につながってしまう可能性もあります。
不調を感じたら、もたれかかることができる壁側に移動したり、可能なら席を譲ってもらったりして、少しでも楽な姿勢を取ることが大切です。
とはいえ、満員電車の中は誰もが身動きできない密集空間。体調がおかしいと気づいたら無理をして電車に乗り続けるより、一回電車を降りて休むよう心がけましょう。誰かに助けを求めたいときも、車内の周囲の人より、駅員のほうがとっさに声をかけやすいはずです。
また、閉鎖的な空間で起こる「パニック障害」にも注意が必要です。精神障害であるパニック発作はそれまで普通に満員電車に乗っていた人にも突然起こる可能性があり、動悸や冷や汗、息苦しさ、胸の不快感などの症状とともに、強い不安感に襲われます。症状が起こるまで何の前触れもないところも怖い点といえるでしょう。

「今まで電車で倒れたことがないから、これからも大丈夫」
「今日はちょっと体調が悪いだけ」

その油断が、満員電車の中で思わぬアクシデントになってしまうかもしれません。体が発するシグナルを素直に受け取り、ご自身の心身を大切にしてください。

パニック障害とは

パニック障害とは、急に「死んでしまうのではないか」と感じるくらい苦しくなる症状です。救急車で運ばれるほどのパニック症状が現れることもあるものの、病院で検査をしてみると体には何の異常も見つからないことがほとんど。
自分ではコントロールできないほどの動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震え、冷や汗、ふらつきといった症状が急激にかなり強く現れ、症状は10分以内にピークに達します。
そのため、電車やエレベーターなどの閉鎖的な空間で症状が出ると、「身動きが取れない」「逃げられない」と感じ、さらに精神的な負担が増します。そして、また起こるのではないかとネガティブな思考にむしばまれ、いずれ家から外に出ることすら怖くなっていくのです。

「倒れたら周りに迷惑をかけてしまう」
「助けてもらえなかったらどうしよう」
「人前で倒れてしまったら恥ずかしい」

パニック発作が繰り返されることで、こうしたさまざまな感情が生まれるようになることも特徴です。症状が重くなると死への恐怖も感じていき、激しい気分の落ち込みを伴ううつ病を併発するケースも見られます。
自分を責めやすくなり、ちょっとしたことで落ち込むなど、うつ症状が出はじめると急激に自殺を考える時間が増え、日常生活に支障が出る深刻な状態になることも。うつ病を併発すると、メンタルケアだけでなく脳の機能に働きかけるうつ病に特化した治療が必要になりますから、パニック発作が繰り返される前に早めの対処・治療を行っていきましょう。
とはいえ、パニック障害は誰にでも起こりうる症状です。「パニック」と聞くと、とても特別な症状のように思えますが、これはどなたにも備わっている体の生体反応です。人は命の危機を感じると、生き延びるためのプログラムが働きます。パニック障害はそのプログラムが誤作動を起こし、命の危機ではないのにまるで命がおびやかされているかのように感じてしまっているだけです。
これらの症状は遺伝や環境が要因となって発症するともいわれ、あなただけが異質なわけではありません。ご自分を責めず、適切な治療に臨んでいきましょう。

パニック障害について詳しくはこちら

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

満員電車のストレスを減らす対処法

では、満員電車でのストレスを減らすにはどうしたらいいでしょうか。
手っ取り早いのは、通勤・通学時間をできるだけ減らして、満員電車に乗らない生活をすること。引っ越しをするなど、物理的な対処が効果的です。しかし、引っ越しをするとなれば引っ越し費用や家賃などコスト面、仕事や私生活の都合など問題は山積みでしょう。
今すぐに引っ越しなどの大がかりな対処ができない場合は、ストレス解消に役立つ「運動」を生活に取り入れていくことが大切だといいます。
ネガティブな思考に陥る原因は、脳の中にある「セロトニン」という物質が少なくなるからだといわれています。運動をすると、セロトニンをはじめとした活力を生み出すホルモンの分泌が活発になることから、体を動かすことでストレスをコントロールしやすくなるのです。
理想の運動量は1日30分。「運動をしないと!」と意気込む必要はなく、まずは以下のように生活の中へ体を動かす時間を取り入れてみましょう。

  • 1時間に1回、休憩がてらオフィスの周りを歩いてみる
  • エスカレーターやエレベーターの利用は避けて、なるべく階段を使う
  • 帰りは自宅まで1駅分、歩いて帰る

気分がリフレッシュできれば、心身のストレスは軽減していきます。何をやっても気分が晴れない、どうしても自分の感情をコントロールできないと感じるときは、一人で苦しみを抱えず、精神科や心療内科に相談しましょう。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

ストレスで満員電車に乗れない場合は要注意

ストレスで満員電車に乗れない場合は要注意

いつのまにか「うつ病」を
発症していることも!?

ストレスで満員電車に乗れない場合は要注意

仕事や日常生活の中で多くのストレスを抱えていると、今まで何でもなかったことが突然怖くなったり、不安になったりすることがあります。
電車の中はそもそも閉鎖的な空間のため、元気な人も不穏な気持ちになりやすい傾向にあります。しかし、以下のような気持ちが芽生え、日に日に強くなっている場合はうつ病を発症しているかもしれません。

  • 電車という、降りたいときにすぐ降りられない空間に恐怖を感じる
  • 乗客がみんな自分を見ているような気がする
  • 乗客が自分のことを噂している、あざ笑っている、または怒っている気がする
  • 同じ空気を吸っているのも嫌なほど、不快な乗客に耐えられない
  • 電車の中で立っているのが極端につらい

電車の中で感じる不調は、その日の体調に左右されます。ですが、体の不調に加え、根拠のない精神的負担を感じるようになったら、知らない間にうつ病を発症している可能性が考えられます。
「満員電車がキライ」なのは誰でも同じですが、「満員電車が怖い」と感じたら要注意です。

うつ病のセルフチェック

「満員電車に乗るのがこれまで以上につらい」「乗るたびに不調を感じる」と思う人は、まずうつ病のセルフチェックをしてみましょう。以下のテストでは、簡単な質問に答えるだけで自分の今の状態をチェックできます。

不調が長引いている場合は
専門の医療機関へ

ストレスが多く、頭痛や腹痛、気分の落ち込みなど不調が続いている場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。
世の中の精神疾患への理解はまだまだ十分ではなく、「やる気が出ない」「仕事に行きたくない」と口に出せば、気の持ちようだと言われがちで誰かに相談するのは勇気がいるかもしれません。ですが、うつ病は時間が経つほど治療が難しくなる病気です。症状が軽いうちに手を打ち、早く元の生活を取り戻していきましょう。
うつ病にかかること、うつ病と診断されることを恥ずかしいと思う方も多いですが、うつ病は決して「人と違う、恥ずかしい病気」ではありません。
満員電車をはじめとしたストレスの多い現代では、多かれ少なかれ誰もが精神的な不調を抱えています。医療機関へ出向いていないために病名がついていないだけで、うつ症状に悩んでいる人も決して少なくはないのです。
大切なのは、どれだけ早くご自分の不調に気づいて、どれだけ早く治療を行えるか。一人で解決できない悩みは、誰かに相談するだけで解消できることもあります。精神科や心療内科などの専門的な医療機関を頼り、心と体の健康をあなた自身で守ってあげてください。

■関連リンク

心療内科・精神科の受診を躊躇してしまう人へ~セルフチェックの重要性~

薬を使わないうつ病治療で
早期回復を
~品川メンタルクリニックの
新たなうつ病治療とは~

品川メンタルクリニックは、うつ病の新しい治療といわれる「磁気刺激治療(TMS)」の専門クリニックです。品川メンタルクリニックでは、「光トポグラフィー検査」とあわせて治療を行うことで、患者さんへの心身の負担を最小限にし、より効果のある治療をつねに心がけています。

今の状態が客観的に理解できる
「光トポグラフィー検査」とは

脳の血流を数値でグラフ化する厚生労働省認可の検査です。
人はストレスがたまると脳の血流が悪くなることから、うつ病は脳の病気であり、血流が悪くなった状態が続くことで精神面にも大きな影響が出ると考えられています。
この検査では、安全な近赤外光で頭部の血流を測定し、健常、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、統合失調症のパターンをそれぞれ判別していきます。
1回の検査所要時間は約15分です。医師の問診と検査結果を併せて、より的確な診断が可能になりました。

状態を的確に知ることが大切です!
うつ病かどうかをグラフデータで診断サポート!

心身の負担が少ない治療方法
「磁気刺激治療(TMS)」とは

薬を使わないうつ病の新しい治療法です。磁気刺激治療は、うつ病によって血流の悪くなった背外側前頭前野(判断、意志、興味などに働き、恐怖や不安、悲しみ、自己嫌悪などの感情をつかさどる扁桃体のバランスを整える脳)を磁気で刺激し、脳を正常に働かせていきます。
治療による副作用がほとんどなく、1回の治療時間は約20分と短いのが特徴。約1ヵ月半~6ヵ月という短い治療期間で効果が出やすいところもメリットといえます。
品川メンタルクリニックで行われた治療ではこれまで約8割の人に症状の改善がみられています。

短期間の治療が可能です!
薬に頼らない新たなうつ病治療があります!

満員電車で不調を感じやすい、理由のわからない不調が長引いている、ストレスが多く誰かに相談したい。些細なことに思えるかもしれませんが、こうしたご自分の変化には、必ず理由があります。
品川メンタルクリニックでは、患者さんの言葉にしっかり耳を傾け、患者さんとともに治療を行っていきます。お気軽にご相談ください。

初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックでは、うつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

関連する記事

  • 更新

精神科・心療内科情報トップへ