うつ病は再発する?原因と再発防止のためにできること

うつ病の再発について

うつ病は再発する?意外と多い再発割合

うつ病は再発する可能性が高い病気であり、その再発率は約60%だといわれています。
再発を繰り返すたび再発率が上がることも知られており、2回目は70%、3回目は90%にまで確率が上がってしまうことがわかっています。
つまり、うつ病治療において重要なのは、ただ症状を治すことではなく「繰り返さないためにどんな治療が必要か」を考えること。
「今の症状が良くなれば治療は成功」なのではなく、先を見据えた治療が必要だということを、医師も患者さん本人もしっかり理解していくことが大切です。

しかし、うつ病の多くは年単位で再発し、3〜4年で再発するケースもあれば、30年以上経って再発するケースもあります。再発までの期間には個人差があり、その期間が長いほどうつ病再発の可能性を忘れ、無理をしてしまう人も少なくありません。

一方、数か月や半年ほどで症状が繰り返された場合は、「再発」ではなく「再燃」の可能性が高いでしょう。
再燃とは、症状が緩和されて「もう治った」と治療をやめてしまったことにより、実際には治っていなかったうつ病の症状が悪化してしまうことです。

再発予防のために必要なのは、うつ病を確実に治すことです。自己判断せず、医師の指示にしたがって治療を継続させること。それが、再発予防につながる最善の治療法のひとつといえるでしょう。

うつ病再発の原因と再発のサイン・兆候

なぜうつ病は再発するのでしょうか。
再発の原因やサインはさまざまです。仕事が原因の場合もあれば、家庭が問題となる場合もあります。1度目の発症と同じきっかけであることもありますが、違うことも少なくありません。

ここからは再発の原因やきっかけを詳しく見ていきます。

再発の原因

・進学や転職などの「環境の変化」
希望するしないに関わらず、環境の変化は大きなストレスとなる場合があります。
たとえそれが望んでつかんだ進学や栄転、引越しだったとしても、人は思わぬところでストレスを感じています。
目新しくて楽しい毎日だからこそ、自分で思っている以上に無理をしていて、その反動がだんだんと心も憔悴につながっていくケースもあります。
環境が変わったときは、「どんなに楽しくても無理をしない」という意識が大切です。
・結婚や昇進など「喜ばしい出来事」
一見、喜ばしい出来事であっても、うつ病は引き起こされます。
結婚や昇進には、新たな責任や思いもしなかったストレスが追加されることもあるでしょう。
これまでの環境と違うことで、イライラがつのる場合もあります。
周囲からは幸せそうに見えているからこそ理解されがたく、「相談しにくい」「相談してもわかってもらえない」という状態に陥りやすく、うつ病の発症に拍車をかけてしまう原因になりがちです。
・身近な人との「別れ」
大きな悲しみ、苦しみ、寂しさ、不安などが芽生える別れは、どれだけ身構えていても心に大きな衝撃を与えます。
イライラがつのりやすい離婚は、成立する前から心身ともに疲れ果ててしまう人が多いでしょう。死別は、たとえ前々からわかっていたことであっても、その悲しみと向き合うことは困難を極めます。
時間が解決する場合も多いですが、苦しい状態が続くほどうつ病発症のリスクは非常に高いケースだといえます。
・生活習慣病やがんなど「病気の発症」
病気になったというショックが、うつ病を発症するケースも多く見られます。
また、糖尿病や心筋梗塞などはうつ病と合併しやすい病気であることもわかっており、身体的な不調であるからといってメンタルヘルスは問題がないとは限りません。
病気と心の関係を知り、体と心どちらもケアが必要であることを理解していきましょう。
・うつ病への正しい理解と対処
治療によってうつ病の症状が良くなっていくと、長引く病状への疲れから治療を早く終わらせたいという気持ちが強くなってきます。
冒頭でご説明したように、うつ病を再発させないためには「治りかけの治療」が一番大切です。
症状が良くなってきたときほど、患者さん本人のうつ病への理解と対処が重要になります。
以下のような行動が再発の原因になることを十分に理解していきましょう。
・自己判断で病院に通わなくなる、自己判断で薬を飲まなくなる
治療を早く終えたい気持ちは痛いほどわかります。
しかし、「治りかけ」に自己判断するのはとても危険です。
今の治療をもう少しがんばって完全にうつ病を治すのか、今すぐ治療から開放されていずれまた長引く治療を受けるのか。
うつ病の症状や対処法だけでなく、当事者だからこそわかる正しい知識を身につけていきましょう。

再発のサイン・兆候

基本的には、一般的にうつ病の兆候だといわれるサインが現れます。
ただし、一度目の自分の症状と同じとは限らないため、いろんなパターンがあることを理解し、見落とさないように注意していきましょう。
ここでは自分でも気づきやすい兆候についてお話しします。

・寝つきが悪い、眠れないなどの不眠症状

考えごとや心配ごとがあると眠りが浅くなるのは誰にでもあるように、眠りの変化は最もわかりやすい兆候といえます。なかでも、うつ病再発のサインとなるのは以下の3つ。

【入眠困難】疲れている、または眠いはずなのに、ベッドに入ってもなかなか寝付けない
【中途覚醒】特に物音がしたなどではないのに、夜中に何度も目が覚めてしまう
【早朝覚醒】眠れても眠りが浅く、朝早くに目が覚めてしまう

こうした状態が何日も続いたら、うつ病の兆候である可能性があります。
なかなか改善されない場合は、精神科や心療内科に相談することも検討しましょう。

・感情がコントロールできない
ささいなことにイライラしたり、小さなことに涙が出るほど悲しくなったり、ワケもなく不安になったりと、感情が不安定になりやすいときは注意が必要です。
うつ症状に気づかないまま毎日を過ごしていると、特に悲しいと思ったわけでもないのに、涙があふれて止まらないといったケースも見られます。
感情は体調不良のバロメーターにもなります。自分を責めるのではなく、何かおかしいということを客観的に捉え、対処をしていきましょう。
・何事にも意欲がわかない
趣味が楽しくない、欲しいものを買いに行くための移動も嫌で仕方ないなど、これまで楽しめていたことが楽しくない状態は体の疲れより心の疲弊が心配されます。
「今日は楽しくない」だけなら問題がありませんが、「毎日楽しめない」のならそれはうつ病のサインかもしれません。
・食欲の変化
食欲は人が生きていく上で重要な3大欲求のひとつです。
その食欲に変化があるときは、心からのサインである可能性が高いでしょう。食欲がわかないときはもちろん、食欲が強すぎるときも要注意です。
また、食事することが楽しくない、何を食べても味を感じない、満腹感がないといった場合も決して正常ではありません。うつ病発症を防ぐためにも、早めに心身を休めましょう。

うつ病再発防止のためにできる事

うつ病を再発させないためには、再発防止となる生活を心がけていくことが大切です。

・自分にとってのストレスを理解し、発散させる
うつ病は、しっかり者やがんばり屋が発症しやすいといわれています。
そうした人たちは自分のストレスに気づいていないことも多く、知らない間にストレスが溜め込まれているケースが多く見られます。
人間社会で生きる以上、ストレスと無縁でいることはできません。ですが、自分にとってのストレスが何かをわかって、「今日はストレスを感じたから発散する」という意識を持つことが大切です。
また、どんな方法が自分にとってストレス発散方法になるのか、知っていることも重要です。
・医師と相談する
今の自分の状態、これからの対策などを主治医としっかり相談しましょう。
特に治りかけは、どんなに調子がいいと感じても、医師から治療終了を告げられるまで勝手に通院をやめてはいけません。
薬の治療に関しても同じで、医師から飲まなくていいといわれるまでは、必要性があるということですから勝手に飲まなくしてはダメです。
薬物治療においては、急にやめることで反動が大きく出てしまう危険性もあり、個人差はありますが「やめ方」が大切であることを覚えておきましょう。
通院や服薬の必要性を感じなくなったときこそ、主治医にしっかり相談して指示をあおいでください。
・カウンセリングなど第三者機関を利用する
ただ話すだけでストレスが軽減されることもありますし、誰かの話を聞くことで気づきがあることもありますが、自分のモヤモヤは身近な人にほど話しにくくなることもあります。
家族や友人に気軽に話せないときは、カウンセリングなどを利用するのも気分転換をするひとつの手です。
ストレス解消になると感じた場合は、ぜひ第三者機関も活用していきましょう。

まとめ

「うつ病には二度とかかりたくない」「再発なんて絶対嫌だ」と今から不安に思っている方もいるでしょう。
確かに再発率60%という数値は、決して楽観できる数値ではありません。
ですが、治りかけもきちんと医師の指示に従って治療を行い、生活のなかでストレスとどう向き合っていくかを見直していけば、再発は防いでいけます。
うつ病は治せる病気です。医師だけでなく、家族や周囲の人にも協力してもらいながら、無理せず心と身体のケアを続けていきましょう。

初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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