悪夢~嫌な夢ばかり見る原因~



夜中に、叫び声をあげて飛び起きる──
うなされているところを揺り起こされる──
このような悪夢の体験はありますか?
フィクションではおなじみのシーンですが、悪夢というとこういったイメージを持つ方も少なくないのではないでしょうか。現実にはここまで劇的ではなくとも、「何かに追いかけられる」「試験に失敗する」「仕事でミスをする」ような、怖い夢、嫌な夢を見たことがある人は少なくないことでしょう。
悪夢自体はごくありふれたもので、悪夢そのものが健康を害するということはほとんどありません。しかし、怖い夢、嫌な夢ばかり見続けるなど、日常的に悪夢に悩まされている人は注意が必要です。
繰り返し悪夢を見るような場合、その背景に《うつ病》や《PTSD(心的外傷後ストレス障害)》などの深刻な事情が隠されている可能性があるからです。
この記事では、悪夢を見る原因や、悪夢と関連する疾患について解説します。単なる怖い夢、嫌な夢ですまされないケースもある──その見分け方が、当記事のテーマです。
悪夢とは
恐ろしい夢、嫌な夢、変な夢、不吉な夢など、不安や恐怖などの不快な感情を引き起こす夢を、一般に《悪夢》といいます。悪夢という言葉は日常でもよく使われる言葉で、睡眠中の夢に限らず、覚醒中の嫌なことを「悪夢」と表現することもあります。
精神医学では、《悪夢》という言葉が疾患の症状として用いられることがありますが、疾患によって多少扱いが異なり、統一された用語ではありません。
多くの場合、悪夢とはレム睡眠中に見る「夜中に目が覚めてしまうほどの恐ろしい夢」を指し、その場合は悪夢を見て目が覚めるまでがセットです。
典型的な悪夢の特徴
レム睡眠中に見る典型的な悪夢は、次のような特徴を持ちます。
- 睡眠後半のレム睡眠中に発生する
- レム睡眠中は脱力しており、体動や発声が生じるとは限らない
- 目覚めたときに、悪夢を見たことや内容を思い出せる
- 他の人が容易に揺り起こすことができる
- 恐怖・不安・怒り・羞恥・嫌悪や悲しみなどの感情を引き起こす
- 動悸・息切れ・発汗など身体反応が現れることがある
悪夢を見たら受診すべき?
たまたま「悪夢を見た」ということだけで医療機関を訪れる人はほとんどいません。
悪夢そのものが健康を害するということはほとんどなく、たまに悪夢を見たからといって、それだけで何かを心配する必要はありません。
しかし、次のような場合は、医師に相談する必要があります。
- 頻繁な悪夢のため、十分な睡眠が取れていない
- また悪夢を見るのではないかと、眠ることに苦痛を感じる
- 日常生活に支障が出る(集中力の低下や過度の眠気、疲れが取れない、仕事のミスが増える、など)
- 気分の落ち込み、食欲不振など、悪夢以外にも症状がある
後述しますが、悪夢は何らかの疾患の症状である可能性もあります。
現在、直接的な影響をあまり感じていなくても、「何かの病気では?」と、もやもやと不安な毎日を過ごしているようなら、医師に相談した方が良いでしょう。
悪夢を見る原因
悪夢を見る原因としては、次のようなものが考えられます。原因は1つとは限らず、複数の要因が重なって悪夢を見ることもあります。
ストレスや不安
職場・学校・家庭などの、ありふれた日常のストレスや不安、環境の変化が、悪夢の原因になることがあります。試験直前に試験に落ちる夢や、仕事でミスをした夜に上司に叱責される夢を見るなどです。
神経科学では、私たちが見る夢は過去に体験してきた記憶の断片であると考えられています。ストレスの多い生活を送ることは、結果的に悪夢を見る頻度を高める可能性があります。
トラウマ体験
戦争・災害・暴力・性暴力のような、生命や心身を脅かすトラウマ体験は、その後に悪夢を引き起こすことがよくあります。
《PTSD(心的外傷後ストレス障害)》の患者の多くが、繰り返し悪夢を見ます。
不眠や睡眠不足
不規則な睡眠、睡眠時間(量)の不足、睡眠の質の低下は、悪夢を見る可能性につながります。
怪奇系の娯楽
寝る前に怖い本を読んだり、怖い映画を見たりした後に、悪夢を見る人もいます。
薬・アルコール・タバコなど
抗うつ薬・ベータ遮断薬(高血圧・心不全などの薬)など、一部の薬は副作用として悪夢を引き起こすことがあります。アルコールやタバコ(ニコチン)、禁止薬物なども悪夢を引き起こす可能性があります。
疾患
《うつ病》をはじめとした、さまざまな精神疾患で悪夢を見ることがあります。精神疾患だけではなく、心臓病やがんのような身体的な疾患が原因となる場合もあります。
悪夢への対処
悪夢への対処法は、原因によって異なります。
- ストレス:環境の見直しや、問題の解決をはかる。運動や趣味でストレス解消も。
- 睡眠不足:しっかり寝る。生活習慣を見直す。
- アルコール・タバコ:できる限り控え、特に寝る前は避ける。
- 薬物の副作用:薬の種類や投与量の調整について医師に相談する。自己判断で勝手に飲むのをやめたり、量を減らしたりするのは厳禁。
- 疾患:その疾患の治療を最優先。
怖い本や映画を見たせいなら──続編として楽しむくらいの気持ちで、上手に気分転換をしましょう。
まとめ
一般に《悪夢》とは、不安や恐怖のような不快な感情を引き起こす夢のことです。
悪夢の原因としては、ストレスやトラウマ、睡眠不足、薬の副作用など、さまざまなものが考えられます。また、悪夢の背景に何らかの精神疾患や、心臓病やがんのような身体的な疾患がある場合もあります。精神疾患では、《PTSD(心的外傷後ストレス障害)》や《悪夢障害》のほか、《うつ病》などでも悪夢をよく見ます。
悪夢そのものが健康を害するということはほとんどありませんが、頻繁な悪夢で十分に睡眠が取れない、日常生活に支障が出る、気分の落ち込みや食欲不振など悪夢以外にも症状があるような場合は、医師に相談する必要があります。


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