うつ病の治療期間と回復までの流れ

うつ病の治療方法や期間・回復までの流れ

うつ病の症状

うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、強い不安感、イライラなどが代表的な精神的な症状です。
睡眠障害や食欲不振、体のだるさなどの身体的な症状は初期段階から自覚しやすいのも特徴です。
女性は、月経前症候群(PMS)や妊娠などホルモンの影響による症状にも似ているため見落としがちですが、2週間以上症状が続く場合はうつ病の可能性も否定できません。

今回は、うつ病の治療期間と回復までの流れについてご説明します。

うつ病の治療期間と
回復までの流れ

うつ病の治療期間と回復までの流れ

うつ病の治療は、「急性期」「回復期」「再発予防期」という3つの段階に分けて進められていきます。
それぞれの期間は人によって異なるため一概に当てはめることはできませんが、ここではよく見られる経過パターンと目安となる期間をご紹介します。

急性期

急性期は、うつ病と診断されてから約3か月ころまでのことを指すことが多いです。
これは十分な休息と薬などによる治療を行うことで、1~3か月ほどで回復傾向が見られるため。
人によって半年ほどかかるケースもありますが、目安より遅いからといって焦る必要はありません。
人によって治療環境も違えば、どんな薬にどれほどの反応があるかなどの体質も違います。
そもそも抗うつ薬は即効性ではありませんので、ゆっくりと効果が現れてくるものなのです。

急性期で最も大切なのは、どう治療するかより、いかに心身の休息を取るかです。
医師の指導のもと、できるだけストレスの原因から離れた暮らしをするよう心がけましょう。
これだけで薬の治療をせずとも、症状の緩和が見られるケースもあります。

回復期

診断から順調に治療が進めば4~6か月ほどの期間を回復期と呼びます。
このころは、調子の良い日と悪い日を行き来しながら、一進一退で治療が進んでいきます。
気分の良い日が続くと「もう治ったのではないか」とうれしくなりますが、そんなときこそ要注意。
自己判断で薬の服用をやめたり、治療に行かなくなってしまったりすると、せっかく治りかけていた症状が悪化してしまう危険性が高まります。

また、この時期になると体調がよくなってくることから、仕事に復帰したいと考える人も多くいます。
しかし、この段階では時期尚早です。この時期に無理をしてしまうと、以前よりも症状が悪くなってしまったというケースも少なくありません。
こうなれば当然、回復までに必要な時間も以前より長くなってしまいます。

この時期は元の生活に戻すことを考えるのではなく、日中の行動を徐々に増やして、「生活リズムを整える」ことに努めましょう。
その上で、医師と再発防止について話し合いながら社会復帰後のイメージを明確にしていくのが、この時期に必要なことです。

再発予防期

治療を始めて1~2年の期間を再発予防期といいます。

このころになると無事に社会復帰を果たしている方も増えますが、まだまだ油断できる時期ではありません。
うつ病は再発しやすい傾向があり、一見完全に回復したように見えても、1~2年は薬物療法を続けて調子のいい状態を維持させる必要があります。
服用を突然やめてしまうと、めまいやふらつき、嘔吐、倦怠感などに悩まされる可能性もあるので、飲み忘れなどにも注意しましょう。

また、家族や友人など周囲の人に、再発の兆しがあった場合は教えてほしいと協力をあおいでおくことも大切です。
再発の症状は、気分の落ち込みやイライラ感、睡眠障害などうつ病の初期症状と同じです。
自分では気づけない再発のサインが出ている可能性もありますので、信頼できる相手に協力をお願いしておきましょう。

治りにくい方について

人によっては、治療をしてもなかなか改善が見られなかったり、いったん症状がよくなってもすぐに再発してしまったりするケースがあります。
これは「治療抵抗性うつ病」と呼ばれているもので、抗うつ薬を適切な期間きちんと服用してもうつ症状がよくならないうつ病のことです。
治療抵抗性うつ病の原因は定かではありませんが、今日までに抗うつ薬に抗精神病薬を組み合わせた治療で改善が見られています。

休養中の過ごし方や注意点

休養中は、仕事や家事から離れた過ごし方をすることが重要です。
思い切って長期の休職を取る、家族でバカンスに行く、必要性があれば入院するなど、日常の雑務から完全に解放されることが必要です。
うつ病は責任感の強い人がなりやすいといわれていますが、その責任感が心身を疲弊させ、うつ病を発症させてしまいました。
ストレスの原因と物理的に距離を取ることが、生活リズムの見直しとなり、うつ病の根本的な回復へとつながっていきます。

日常生活で気を付けること

うつ病の予防、早期回復、再発予防などすべてにおいて大切なのは、心地よい日常生活です。
無理をしない程度に以下のことを心がけ、気持ちのいい毎日を送りましょう。

  • 十分な睡眠を取る
  • 自分の性格や考え方を知る
  • 自分なりのリフレッシュ方法を知る
  • 規則正しい体のリズムをつくる
  • 栄養バランスのいい食事をする
  • アルコールを控える
  • 適度な運動を心がける
  • 悩みは誰かに話す

何から始めればいいかわからないというときは、まずは心行くまで寝てみましょう。
睡眠は心身の万能薬です。
ぐっすり眠れば、次に何をすべきか、何をしたいかの考えもまとまりやすくなるはずです。

ひとりで悩まない

困ったことや不安に思うことは、一人で抱えこまずに家族や友人、医師に相談しましょう。出口のない問題に見えていても、他の人に相談してみると解決の糸口が見えることがあります。
また、心のうちを吐き出しただけで気持ちが楽になったり、誰かに聞いてもらえただけで安心できたりするものです。
決断など大事なことは、どんなに今決めたくなってもぐっと堪えて、うつ病が治ってからするよう心がけましょう。

自己判断で治療を止めない

うつ病治療では、医師の指示どおり抗うつ薬を「十分な量=それぞれの薬に定められた最大用量」と「十分な期間=半年以上」服用することが必要とされています。
治療の途中で勝手に抗うつ薬を減らしてしまったり、飲むのをやめてしまったりすると、症状が改善しないまま慢性化してしまうこともあるのです。

一度治療を始めたら、自己判断で治療をやめないことが、早期回復への近道であることを肝に銘じましょう。

終わりに

うつ病の治療は一朝一夕でできるものではありません。
まとまった時間と、それを続ける忍耐が必要になります。
しかし、忘れないでほしいのは「うつ病は治る病気」ということ。
きちんと治療していくことでゴールが訪れますので、焦らず、気持ちをゆったりとさせて治療に臨んでいきましょう。
治療はうつ病の方を苦しめるものではなく、助けるためにあるものです。
わからないことや不安なことがあればすぐに専門の医師に相談し、自分に合った治療法を見つけていきましょう。

初村 英逸

監修

初村 英逸(はつむら ひではや)

2009年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック梅田院院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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