50代のストレスとうつ病



親の介護、親との死別、子供の独立──50代では、人間関係の大きな変化をはじめとした、さまざまなストレスに襲われる機会があります。また、自分自身の老化を自覚する機会が増え、老後の生活が現実味をおびてくるのもこの頃です。職場では役職定年を含め、仕事内容が変化することもあります。
こういったストレスをきっかけに、気分が落ち込んだり、不安を感じたりということは、よくあることです。しかし、そのような感情や状態が長期間続いたり、頻繁に起こったりするような場合は、何らかの対処が必要となる可能性があります。
この記事では、50代のストレスの要因・症状やその対処方法、うつ病に発展した場合などについて解説します。
ライフステージとしての50代
2025年現在での50代は、1966年(昭和41年)~1975年(昭和50年)生まれの人が該当します。
国立社会保障・人口問題研究所の『人口統計資料集』によると、高校等への進学率は1980年(1966年生まれの人が中学を卒業するのが1982年ごろ)には約94%に達している一方で、大学への進学率は1985年(1966年生まれの人が高校を卒業するのが1985年ごろ)時で26.5%、1995年(1975年生まれの人が高校を卒業するのが1994年ごろ)時で32.1%です。短期大学への進学率は1985年で11.1%、1995年時で13.1%です[1]。
50代の学歴をまとめると、約95%が高卒以上で、3割前後の人が大卒、12%前後が短大卒です。
世代的にはバブル世代に入りますが、後半生まれの団塊ジュニア世代(第二次ベビーブーム世代:1971~1974年生まれ)は就職氷河期の初期世代にあたります。
この世代が、多感な10代後半から20代前半を過ごした1980年代・1990年代は、昭和の末期から平成初期にあたります。
- 国内:東京ディズニーランド開園(1983)、「平成」改元(1989)、消費税3%導入(1989)、Jリーグ開幕(1993)、平成の米騒動(1993)、地下鉄サリン事件(1995)
- 国際:ブラックマンデー(1987)、ベルリンの壁崩壊(1989)、バルセロナ五輪開催(1992)、長野冬季五輪開催(1998)、EU統一通貨「ユーロ」発足(1999)
- 科学・技術:アップルコンピュータ「マッキントッシュ」発売(1984)、つくば万博開催(1985)、ハレー彗星の接近(1986)、マイクロソフト「ウィンドウズ95」発売(1995)、ヤフージャパンサービス開始(1996)、トヨタ「プリウス」発売(1997)
- 災害・事故:日航機墜落事故(1985)、チャレンジャー号爆発事故(1986)、チェルノブイリ原子力発電所事故(1986)、六四天安門事件(1989)、阪神・淡路大震災(1995)
- 娯楽:任天堂「ファミリーコンピュータ」発売(1983)、ソニー「プレイステーション」発売(1994)、バンダイ「たまごっち」発売(1996)、「だんご3兄弟」大ヒット(1999)
50代は、昭和・平成・令和の3つの元号を横断する中で、進路選択の変化、就職市場の大量採用から崩壊、そして冷戦終結と昭和の終わりという歴史的転換を、青少年期に連続的に体験した世代です。
この世代のストレス構造は、こうした世相的摩擦の中で形成されており、うつ病などの精神疾患、自殺などのメンタルヘルスの諸問題に影響を与えている可能性があります。
40代までと50代の違い
50代によくあるストレス
50代が直面しやすいストレス要因には以下のようなものがあります。
- 上司や部下などの職場での人間関係
- 夫婦や親子などの家庭内の人間関係
- 引っ越し・転職・配置転換・離婚など環境の大きな変化
- 失業・借金・子供の学費など、経済的な不安
- 同年代内での経済的・社会的格差
- 親の介護
- 家族・友人やペットの病気や死別
- 体力の衰え・生活習慣病・関節痛・更年期障害などの健康不安
- 白髪・抜け毛・しわ・老眼・難聴など老化の自覚
- 老後(定年後)の心配
ある出来事へのストレスの感じ方には個人差があります。
また、すべてのストレスが常にネガティブに働くとは限らず、むしろ適度なストレスは私たちの成長をうながし、生活を充実させるものです。
しかし、慢性的なストレスは、健康面の問題を引き起こす可能性が高く、適切な対処が必要です。
50代のストレスの兆候・症状
50代のストレスの兆候・症状は、以下のような形で現れます。
- 寝付けない、変な時間に目が覚める
- 食が進まない、食事がおいしくない
- だらしない印象になった
- 笑顔がなくなった、趣味をしなくなった
- 落ち込んでいる、ふさぎ込んでいる
- 理由もなく涙が出る
- イライラし、不安が消えない
- ミスが増えた、仕事のパフォーマンスが落ちた
- 口が重い、動きが重い
- 原因の分からない痛みが続く
- 自殺願望や自分を傷つける考えを持つ
50代のストレスとの付き合い方
ストレスに負けないためには、日頃からストレスと上手に付き合っていく必要があります。規則正しい日常生活を送り、毎日を楽しく過ごすことは、年代に関わらずストレスとうまく付き合う上で重要です。
睡眠の改善
規則正しい生活習慣の基本は睡眠のコントロールです。毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにしましょう。特に起床時間は重要です。朝目が覚めたら、まず朝日を浴びてください。
必要な睡眠時間は個人差が大きく、何時間が最適とはいえませんが、日中に居眠りしてしまう、週末には昼まで寝てしまうというような場合は、そもそも普段の睡眠時間が足りていない可能性があります。
身体を動かす
運動には、ネガティブな気分を発散させる作用があることが分かっています。
日中に適度に運動し軽く疲労することで、夜にぐっすり眠れるうえ、記録力・思考力の改善にも役立ちます。運動習慣がない場合は、まずは近所の散歩から始めましょう。しばらく運動から遠ざかっていた場合は、特に怪我に気を付けてください。
食事と水分補給
栄養バランスのとれた食事を、1日3回、規則正しくとりましょう。エネルギー補給という意味だけではなく、決まった時間の食事が、体のリズムを整えてくれます。特に朝食は重要です。
また、人体の60%は水からできています。こまめに水分補給をしましょう。
アルコールは適量にとどめ、寝酒は絶対にやめましょう。
リラックスできる時間を作る
ゆっくりとお風呂に入る、本を読む、音楽を聴く、お気に入りの香りをかぐ、自然と触れ合う──リラックスした快い時間を過ごすのは、代表的なストレス解消法です。マッサージやストレッチなども効果的です。集中することに疲れたときは、無理をせずに気分転換することも大切です。
以下の記事でストレスの解消法を紹介していますので参考にしてください。
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精神科医がおすすめするストレス解消・発散方法、16個のヒント
ストレス社会とも呼ばれる現代、ストレス解消・発散方法を知り、実践することは、健康で充実した生活を送るために大切なことです。ストレスからうつ病などを発症しないためにも、今日からでも始められる簡単な方法を中心に、ストレスの対処法を解説します。
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相談する
普段からストレスをためないように努めていても、どうしてもストレスがたまってしまうのは仕方がないことです。
しかし、イライラして気分が不安定だったり、仕事のパフォーマンスが落ちたり、夜によく眠れなかったりなど、心身の異変を感じたときは、一人で悩み続けずに周りの人に相談してください。話を聞いてもらうだけでも気分が落ち着くこともあります。相談することは弱みを見せることではありません。
もし、異変が長期間続くようなら医師への相談を考える必要があります。
いつ受診すべきですか?
仕事で失敗する、人間関係で問題が起きる、体力の衰えに直面する、などはっきりした理由があって数日落ち込んだり、寝付きが悪くなったりしてもあまり心配する必要はありません。50代に限らず、このような体験で一時的に落ち込んでしまうのはごく自然なことです。
しかし、夜眠れない、食欲がわかない、ずっと疲れが取れない、集中力や仕事のパフォーマンスが低下した、遅刻や欠勤が増えるなど、日常生活への支障が数週間以上続いている場合は、うつ病を発症している可能性があります。そのような場合は、医療機関を受診してください。
うつ病は治療や適切な対処なしに自然に改善することはほとんどなく、放置することで長引く傾向があります。早期の対処が早期の回復にもつながります。
50代のうつ病の特徴
一般に、うつ病は元気を失ってふさぎ込んでいるイメージで知られています。50代のうつ病は、気分の落ち込みや意欲低下、不眠、食欲低下といった典型的な症状が現れやすいです。
気分が落ち込む、趣味をしなくなる、仕事のミスが増える、朝早く目が覚める、食欲がわかず食事がおいしくないなど、日常生活に支障が出る症状が複数ある場合は、うつ病を発症している可能性があります。
うつ病は早期発見・早期対処が重要です。「うつ病かも……」と心配なようでしたら、セルフチェックの結果に関係なく、精神科・心流内科にご相談ください。
50代のうつ病の治療
50代のうつ病への治療法としては、《休養・環境調整》《心理療法・精神療法》《薬物療法》《電気けいれん療法(ECT)》《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》などがあげられます。
休養・環境調整
うつ病治療において休養や環境調整はとても大切です。ストレスに満ちた環境では心も休まらず、うつ病の治療どころではありません。《休養》はとにかく休むこと、《環境調整》はストレスフルな環境をストレスの少ない環境に修正することです。どちらにせよ、発症前よりもストレスを減らすことが重要です。
さらに、一日の中でリラックスできる時間を確保するなど、意識的に休息をとりましょう。
状況によっては休職する必要があるかもしれません。医師と相談しましょう。
心理教育・精神療法
《精神療法・心理療法》は、主に心理学的介入によって、患者個人が抱える問題の軽減・解消を目指す治療法を指し、多くの場合は他の治療法と組み合わせて用いられます。
薬物療法
薬物療法は《抗うつ薬》を中心とした治療法で、現在のうつ病治療の主流です。薬物療法の基本は、十分な量の抗うつ薬を、十分な期間服用することです。
一方で、副作用や服薬中断時の症状に悩まされる患者が少なくないことも事実です。症状が改善した後も、薬を中止すると中断症状(離脱症状)が出たり、うつ病が再発したりする可能性が高いため、2~3年は服薬を維持することが望ましいとされており、治療期間は長くなりがちです。
電気けいれん療法(ECT)
《電気けいれん療法(ECT)》は、頭部への通電によって人為的にけいれん発作を誘発することで、精神症状の改善をはかる治療法です。重度のうつ病や統合失調症などに高い治療効果を発揮します。
ECTには重大な副作用として記憶障害があります。また治療時に絶飲食や入院が必要など、他の治療法と比べると実施のハードルは高めです。
緊急的なケース(自殺や拒食などの生命の危機がある場合)以外は、重症患者や薬物治療が効かないときに選択されます。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)
《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》とは、磁気による誘導電流で脳の特定部位を刺激し、うつ症状の改善をはかる治療法です。うつ病治療としては治療期間が短いことと副作用がほとんど無いことが大きな特徴です。
また、TMS治療は認知機能への悪影響がほとんど認められていません。短期間で仕事に復帰できる可能性とあわせて、仕事に忙しい50代の治療にも適していると考えています。基本的に入院も不要で、通勤しながらの治療も可能です。
品川メンタルクリニックのTMS治療
品川メンタルクリニックではTMS治療を行っています。
現在のうつ病治療の主流は抗うつ薬による薬物治療ですが、スッキリと効果が現れるうつ病患者は全体の3分の1くらいで、3分の1の人にはほとんど効果が望めないという報告があります。
当院のTMS治療では5~6割の人が寛解(症状がほとんどなくなること)し、全体の8割程度の人の症状が軽くなっています。
前述の通り、TMS治療は副作用もほとんど無く、仕事への影響は最小限になることが期待できます。
50代でも通いやすい
品川メンタルクリニックは、50代の方でも安心して通院できるように、さまざまなサポート体制を準備しております。
- 仕事帰りでも通いやすい、夜の19時まで診療
- 土日も診療
- JR品川駅から徒歩5分圏内
- 商業ビル内なので人目の心配が無い
仕事などが忙しい50代の方でも予約しやすいように、ネット予約は24時間受付しております。スマートフォンやパソコンからネット予約が可能です。日中は電話やLINEでも予約受付しておりますので、必要に応じてご利用ください。
まとめ
50代が直面しやすいストレス要因には、職場や家庭の人間関係、経済的な問題、環境の変化、健康不安、老化の自覚など、さまざまなものがあります。これらのストレスは、「寝付けない」「食欲がわかない」「趣味をしなくなった」「理由もなく涙が出る」など、さまざまな症状を生じさせます。
ストレスに負けないためには、規則正しい日常生活を送る、毎日を楽しく過ごすなど、日頃からストレスと上手に付き合うことが大切です。
慢性的なストレスにさらされ続けるとうつ病を発症する可能性があります。そのような場合は、医療機関に相談してください。
50代のうつ病治療には、《休養・環境調整》《心理療法・精神療法》《薬物療法》《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》などの選択肢があり、当院は副作用のほとんど無いTMS治療を専門的に行っています。通勤しながらの治療も可能です。


品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。