うつ病治療をやめたくなったときはどうすればいい?



「なんか、全然よくならないなあ」
「薬の副作用がしんどい」
「あと何カ月通えばいいの……」
「調子もよくなってきたし、治療が面倒だな……」
うつ病の治療を続けていて、ふと、本当にこれでいいのかと疑問を感じたり、嫌になってしまったりという瞬間は誰にでもあることです。これはうつ病に限らず、あらゆる疾患の治療を通じて珍しいことではありません。
現在のうつ病治療は抗うつ薬による薬物治療が中心ですが、やはり「治療をやめたい」と思う人は珍しいものではなく、実際にやめてしまう人も当然います。しかし、自己判断での治療中断は症状の悪化や再発のリスクを高めます。
この記事では、現在主流の薬物治療を中心に、うつ病治療をやめたいと思う理由や、その対処法を解説します。
うつ病そのものについて知りたい場合は、以下をご覧ください。
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うつ病
気分が落ち込む、趣味が楽しめない、眠れない、食欲がない、などの症状が数週間続く場合は《うつ病》の可能性があります。うつ病は、今や非常に身近な病気ですが、治療もどんどん進歩しています。うつ病の症状・原因と治療方法・経過などについて解説します。
うつ病
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以下は同じテーマの動画ですので、こちらも必要に応じてご覧ください。
治療をやめたいと思う理由
うつ病患者が治療継続を迷う理由はさまざまです。
例えば以下のような理由があげられます[1][2]。
うつ病への認識不足
自分自身が、治療が必要な状態であることを認められない、認めたくないことから治療中断を考えます。
つらい副作用
薬の副作用がつらく、日常生活に影響していることなども治療中断の理由になります。
個人差はありますが、抗うつ薬の効果が発現するまでは、早くとも1~2週間がかかります。一方で、副作用は効果を待たずにすぐに現れ始めます。この「効果はないのに副作用はしっかりある」時間差も治療中断の一因となります。
治療への不信感
治療を続けても効果・改善が実感できない場合、治療中断の理由になります。治療そのものに限らず、医師と話が合わないなど、医師や医療機関への不信感が関係することもあります。
治療の意味喪失
症状が落ち着き、改善することで治療の必要性が感じられなくなり、治療をやめたいという人は少なくありません。また、環境や状況が変化することで、治療を続ける意味がなくなったと感じることもあります。
感情的な要因
うつ病であることが恥ずかしいという気持ち、周囲に変な目で見られるのではという恐れ、孤独感などから治療を避けることがあります。家族の理解を得られないことが原因になる場合もあります。
通院による負担
立地や通院スケジュールが自分の生活とあっておらず、時間や体力的に負担が大きい場合や、経済的な負担が理由の場合もあります。薬物治療では、半年から数年単位で通い続ける必要があることが多く、これを負担に感じる人は少なくありません。
アドヒアランス
前述のような理由で「治療をやめたい」と感じることは、専門的には《アドヒアランス》不良や《コンプライアンス》不良といわれます。
《アドヒアランス》は、患者が自主的に治療に取り組む積極性の程度のことです。患者が医師の服薬指示に従う受動的な《コンプライアンス》よりも「患者の積極性」に着目した用語で、現在はコンプライアンスよりもアドヒアランスが重視されています。
アドヒアランスの低下には往々にして医療者側の説明不足や配慮不足が関係しており、アドヒアランス向上のためには、患者と医療者が協働することが大切です。アドヒアランスが向上することで、自己判断での薬の中断や、不規則な服薬などが防止できると考えられています。
実際の治療中断に関する研究としては、以下のような報告があります。
- オーストラリアの大規模調査(AGDS)では、うつ病と診断され抗うつ薬を服用した約2万人のうち、36.9%が副作用を理由に少なくとも1種類の薬剤を中止したと報告されています[3]。
- 米国での研究では、初回の抗うつ薬処方後90日以内に治療を中断した割合は約24%とされています[4]。
- オランダの外来患者調査では、6ヶ月以内に治療を中断した割合は14.5%でした[5]。
「治療をやめたい」と思うのはあなただけではありません。やめたいと思うこと自体は異常なことではありませんので安心してください。
治療をやめたいときと感じたときの対処法
異常ではないとはいえ、自己判断による治療中断には小さくないリスクもあり、避けるべきなのも確かです。
治療をやめたくなったときには、自己判断でやめてしまう前に次のようなことを試してください。
主治医に相談する
自己判断での治療中断には、症状の悪化や再発のリスクがあります。
医師に「治療をやめたい」ことを伝え、医師の判断をあおいでください。医師はあなたのように治療に悩む人を大勢みてきていますから、あなたに合いそうな次の選択肢を提示してくれるでしょう。
例えば副作用がつらい場合、薬を変えることで解決するかもしれません。また、精神療法を組み合わせる、TMS療法に変更するなど、やり方を変えることで解決する可能性もあります。
一人で悩まずに医師に相談しましょう。
立ち止まってじっくり考える
「治療をやめたい」と医師に相談すると「怒られるんじゃないか」「あきれられるんじゃないか」と不安に思うかもしれません。もちろん、普通は「治療をやめたい」と相談しても怒ったりはしませんが、あなたが不安に思う気持ちもわかります。そのような場合は、治療を継続しながらもう少し考え、中断の決断を先延ばししましょう。相談する勇気が出るまで、治療を受けながら考えるのです。
信頼できる人に相談する
どうしても医師に相談しにくい場合は、ひとまず家族や友人など信頼できる人に相談するのもよいでしょう。話を聞いてもらうことで、「治療をやめたい」という不安が解消する可能性もあります。
大切なのは、自己判断で治療をやめてしまわないことです。
セカンドオピニオンを受ける
現在の治療に不安を感じたり、納得がいかなかったりするとき、本来は主治医に相談するのがベストですが、治療の経過によっては、主治医との相談に気乗りしないかもしれません。多くの場合はどうしようかと悩みながら治療している間に良くなっていくと思いますが、現在の不安が日常生活を脅かしているような場合は、忍耐強く様子を見続けることが難しいということもあるでしょう。
そのような場合は、セカンドオピニオンを受け、現在の治療方針の参考にするとよいでしょう。セカンドピニオンはすべての医療機関で行っているわけではないので、受診前に念のため確認しておきましょう。
当院はセカンドオピニオンも受け付けております。お困りの場合はご相談ください。
うつ病の非薬物療法
「治療をやめたい」という気持ちは、現在の治療があっていないことから生じている可能性もあります。
一般に、3割くらいの方は最初の抗うつ薬で効果を確認できます。これらの方々は、最初の2~3週間で効果を実感でき、およそ3ヶ月までに寛解(症状がほぼなくなった状態のこと)するといわれています。逆に3分の1の方は4種類以上試しても寛解できないという報告もあります。
うつ病の治療法は薬物療法以外にも選択肢があります。薬物療法が有効でないからといって改善をあきらめる必要はありません。
うつ病の非薬物療法には、以下のような治療法があります。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)
《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》は、磁気を介して脳の特定部位を刺激することで、うつ症状の改善をはかる治療法です。TMS治療では患部(脳)を直接治療するため、副作用がほとんど無いことが大きな特徴です。副作用がつらくて薬物治療が続けられないという人には、TMS治療はおすすめです。
また、TMS治療は薬物療法とは異なるメカニズムでうつ病に働きかけるので、薬の効果が無い人にも有効である可能性があります。特に2剤目の抗うつ薬も効果が無かった場合は、TMS治療を試す価値は高いでしょう。
休養・環境調整
うつ病治療において休養や環境調整はとても大切です。ストレスに満ちた環境では心も休まらず、うつ病の治療どころではありません。《休養》はとにかく休むこと、《環境調整》はストレスフルな環境からストレスの少ない環境に修正することです。発症前よりもストレスを減らすことが重要です。
さらに、一日の中でリラックスできる時間を確保するなど、意識的に休息をとりましょう。
精神療法・心理療法
《精神療法・心理療法》は、主に心理学的介入によって、患者個人が抱える問題の軽減・解消を目指す治療法を指し、多くの場合は他の治療法と組み合わせて用いられます。
電気けいれん療法(ECT)
《電気けいれん療法(ECT)》は、頭部への通電によって人為的にけいれん発作を誘発することで、精神症状の改善をはかる治療法です。重度のうつ病や統合失調症などに高い治療効果を発揮します。
ECTには重大な副作用として記憶障害があります。また治療時に絶飲食や入院が必要など、他の治療法と比べると実施のハードルは高めです。緊急的なケース(自殺や拒食などの生命の危機がある場合)以外は、重症患者や薬物治療が効かないときに選択されます。
まとめ
うつ病の治療を続けていて「治療をやめたい」と感じることはよくあることです。
現在のうつ病治療は抗うつ薬による薬物治療が中心ですが、やはり「治療をやめたい」と思う人は珍しくはなく、実際にやめてしまう人もいます。しかし、自己判断での治療中断は症状の悪化や再発のリスクを高めます。
うつ病患者が「治療をやめたい」と考える理由には、うつ病への認識不足、薬の副作用がつらい、治療を続けても効果・改善が実感できない、良くなった・治った、恥ずかしい、通うのが大変など、さまざまなものがあります。
「治療をやめたい」と考えること自体は異常なことではありませんが、中断にはリスクがあるため、やめてしまう前に「主治医に相談する」「立ち止まってじっくり考える」「信頼できる人に相談する」「セカンドオピニオンを受ける」などを試してください。
現在は薬物療法とは異なるメカニズムでうつ病に働きかける《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》などもあり、薬物治療がうまくいかない、やめたいというときもあきらめる必要はありません。
当院はセカンドオピニオンも受け付けています。お困りのようならご相談ください。


品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。