TMS治療の経過と目標~うつ病はどのようによくなるのか~

「今日は調子が良いな」
「久しぶりにぐっすり眠った」
「朝からしんどい……」
「今日はもう家から出たくない」
「本当に良くなっているのかな……」

うつ病治療は時間経過につれて右肩上がりに回復するわけではありません。
治療完了までに良くなったり悪くなったりと、波があるのが普通です。これは薬物治療やTMS治療など治療手段を問わず変わりません。
とはいえ、思ったように治療が進まなければ不安を感じるのは無理もないことと思います。
うつ病治療の経過と着地点には個人差があり、典型的といえるほどパターン化できるわけではありませんが、私たちが経験してきた多くのTMS治療の経過と着地点を参考に、少しでもイメージしやすいようにいくつかモデルを紹介したいと思います。

この記事は、TMS治療の経過と目標について解説します。
治療前だけではなく、治療中に困ったり迷ったりしたときにも読み返していただければ幸いです。
「継続は力なり」の言葉通り、コツコツと治療を続けることはとても大切なことです。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)とは

《TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)》とは、磁気刺激を介して脳の機能異常の正常化をはかる治療法です。ほとんど副作用が無いうえ、治療期間が短く、再発率も低いというメリットがあります。
すでにうつ病治療として確立しているほか、さまざまな精神疾患への適応が研究されています。

治療の経過には個人差があります

うつ病治療の例にもれず、TMS治療の経過には個人差があります。治療早期から効果を自覚する方もいますが、多くの場合は、ある程度の回数を重ねることで治療効果を実感できるようになります。
どちらの場合でも一直線に(右肩上がりに)改善するのではなく、良くなったり悪くなったりの波を繰り返しながら少しずつ良くなっていきます。

TMS治療は効果の感じ方も個人差が大きいので、思うように治療が進んでいないと感じることがあるかもしれません。そのようなときは、一人で悩み続けずに、遠慮なくご相談ください。

治療効果を感じない

TMS治療には副作用がほとんど無いため、治療効果を自覚できないと、本当に何一つ変化していないように感じ、「本当に良くなっているのかな?」と不安になるかもしれません。
次のような変化はありませんか?

  • なんとなく寝つきが良くなった。
  • 朝まで眠れるようになった。
  • 頭がスッキリした。
  • 身だしなみを気にするようになった。
  • ごはんがおいしく感じられるようになった。
  • 治療帰りに寄り道した。
  • 久しぶりに趣味を再開した。
  • 不安を感じることが少なくなったり、強い不安を感じたりということが減った
  • 深く落ち込むことが減り、落ち込む時間が短くなった気がする。
  • 顔色が良くなったと周りから言われた。

小さな変化は見逃されがちですが、変化の積み重ねが大切です。

良くなったり、悪くなったり

体調に波があるのは当たり前のことです。
思い出してください。うつ病になる前も、「今日は不調だな」ということはあったはずです。
どんな治療を選んでも、うつ病の治療中は健康に向かって一直線に回復するなるわけではありません。良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、徐々に底上げするように全体的に改善していくというのがよくある治療経過です。
「今日は調子が悪いかな」という日があっても過度に心配する必要はありません。それは健康な人でもよくあることです。

良くなったので治療をやめたい

良くなったと自覚できたからといって、うつ病が治ったとは限りません。
良くなったときに自己判断で治療を中断し、結果として悪化するというのは(TMS治療に限らず)うつ病治療では本当によくある話です。良くなったと感じても、自己判断で中止せずに、まずはご相談ください。

中断後の再開

さまざまな事情から、一時的に治療を中断せざるを得ないときもあると思います。
中断してペースが乱されたからといって、治療をやめてしまう必要はありません。中断することで一時的に治療は停滞してしまうかもしれませんが、完全に治療前まで戻ってしまうというわけではありません。

他方で、良くなって通院が遠のいた結果、また調子を崩してしまうということは珍しいことではありません。気まずい気持ちがあるかもしれませんが、そういう方は大勢いらっしゃいますので、心配する必要はありません。うつ病は罪悪感という誘惑で、あなたを治療から遠ざけようとしますが、悪いのはうつ病です。安心して再開してください。

良くなるためには「治したい」という、あなた自身の気持ちが大切です。私たちはその気持ちに寄り添い、向き合いたいと常に思っています。一人で悩んだり不安になったりする必要はありません。迷ったとき、不安に思うときは、まずはご相談ください。

TMS治療の目標

うつ病治療の目標は、基本的には「〈症状が軽快すること〉に加えて〈家庭・学校・職場における「病前の適応状態」へ戻ること〉[1]です。
ただし、これは必ずしも「完全に元の状態に戻ること」ではありません。「完全に元の状態に戻る」ということは、あなたがうつ病を発症してしまった状態に戻るということです。それでは、病気がいつ再発するかわからない不安定な状態に戻るということになります。

ときどき、病気になる前の状態が「毎日何時間も残業していた」「睡眠時間を削って受験勉強にはげんでいた」というような場合がありますが、そういう方がその水準まで戻ろうとすると、再び消耗しきって再発してしまう危険性があります。

日常というのは切り取られた一瞬のことではなく、継続的・持続的にコツコツと営まれるものです。過酷な状況は心身にとっては大きな負担となり、とても長続きするものではありません。できる限り健康的な日常が過ごせる水準を目指すことも治療の一部です。
どのような場合にせよ、私たちは患者様のQOLの改善に一緒に取り組みます。

QOLとは

QOLとは“quality of life”の略で、「生活の質」「生命の質」「人生の質」などと訳されます。生活や人生に対する満足度・充実度や幸福感と関連する概念です。QOLは、健康、気分、仕事や学業、娯楽、人間関係など、さまざまな領域に及びます。

治療を支える過ごし方

治療するにあたり、休養はとても大切です。ストレスに満ちた環境からの一時的な退避(休職・休学・入院など)は、悪化を防ぐためにも重要です。
治療の初期は、まずは休養で心身のエネルギーを回復させることを重視します。

ある程度回復した後、復帰を見据えての第一歩は、日常生活を整えることです。
とはいえ、前述の通り、うつ病は右肩上がりに回復するわけではありません。良くなったり悪くなったりと、ふらふらと浮き沈みするものです。
当然、無理は禁物ですので、「今日は調子が悪いな」「ちょっと頑張りすぎたかな」と感じたときは素直に休息しましょう。

睡眠習慣を整える

不眠は多くの精神疾患に共通する症状であり、特にうつ病では、その80~85%に不眠が認められます。うつ病から回復した後に不眠が残っている場合は、再発率が高いといわれています。
睡眠をコントロールするには、就寝時間よりも起床時間が重要です。決まった時間に起床し、目覚めたらすぐに朝日を浴びましょう。

バランスの取れた食事を規則正しくとる

1日3回、栄養バランスを考えたおいしい食事を規則正しくとりましょう。食事はエネルギー補給という意味だけではなく、決められた時間にとることで身体のリズムを整えてくれます。
特に朝食は重要です。どうしても食欲がわかない場合は少量でも構いませんし、スープや牛乳を飲むだけでも構いません。

身体を動かす

少し気力が出てきて調子の良い日は、ウォーキングやストレッチ・筋トレなど、適度に身体を動かすようにしましょう。まずは近所の散歩でも構いません。
軽く疲労することで、夜の睡眠に良い影響を与えることも期待できます。

必要に応じて、ご家族への説明も行います

TMS治療は、残念ながらまだまだ知名度のある治療ではありません。
よくわからないため、あなたのご家族が「何か怪しい治療なのではないか」「本当に効果あるの?」と心配して治療に反対することがあるかもしれません。そのようなときに上手に説明することが難しい場合(うつ病ではよくあります)、当院にご相談ください。
うつ病治療には、ご家族の理解と協力が不可欠です。
当院は、患者様ご自身の「治したい!」という気持ちを大切にしていますので、治療の有効性や回復への可能性を、ご家族にもきちんとご説明させていただきます。

品川メンタルクリニックのTMS治療

品川メンタルクリニックではTMS治療を行っています。
現在のうつ病治療の主流は抗うつ薬による薬物治療ですが、薬物治療の効果がスッキリと現れるうつ病患者は全体の3分の1くらいで、3分の1の人にはほとんど効果が望めないという報告があります[2]
当院のTMS治療では5~6割の人が寛解(症状がほとんどなくなること)し、全体の8割程度の人の症状が軽くなっています。
TMS治療は副作用もほとんど無く、仕事や勉強への影響を最小限に抑えることが期待できます。うつ病やうつ病治療でお困りの場合は、ご予約の上ご相談ください。

まとめ

TMS治療に限らず、うつ病は右肩上がりに順調に回復するわけではありません。良くなったり悪くなったりと、紆余曲折しながら良くなっていくのが普通です。良くなったと感じ、自己判断で治療を中断することで悪化してしまうこともあります。
良くなったと感じても自己判断で中止せずに、ぜひ相談してください。

うつ病治療の目標は、「完全に元の状態に戻ること」とは限りません。病気を引き起こした状態ではなく、健康的な日常が過ごせる状態へ戻ることを目指します。
TMS治療は知名度のある治療ではありませんので、ご家族の理解と協力を得るためにご家族に説明することも可能です。うつ病やうつ病治療でお困りの場合は、ご予約の上ご相談ください。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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