企業に必要なメンタルヘルス対策への視点とは?

企業に必要なメンタルヘルス対策への視点とは?

20世紀、21世紀を通じて、通信環境・交通機関を始めとした科学技術の急激な発達は、さまざまな場面で利便性を大きく向上させました。一方で、これらの恩恵を前提とした社会の発展は、あらゆる場面で素早いレスポンスが当然のように期待されることにつながり、職場で受けるストレスはかえって増大しているという見方もあります。
従業員の皆様がメンタルヘルス不調からうつ病などの精神疾患を発症しないためにも、企業のメンタルヘルスに対する理解と積極的な取り組みはとても大切なことです。
本記事は、企業のメンタルヘルス対策について、主に人事・労務担当者の方に向けて掲載しています。

企業のメンタルヘルス対策の現状

精神障害を理由とした労災認定件数の増加を背景に、ストレスチェック制度の創設など企業による従業員のメンタルヘルス対策の重要性が認識されています。

メンタルヘルス対策への企業の取組状況

図1 メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合の推移(事業所計=100%)
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所割合の推移

厚生労働省『労働安全衛生に関する調査:結果の概要』公開データより作図(注1)

厚生労働省の発表によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業の割合が、平成25(2013)年以降は60%前後を推移しています(図1)。
令和3年の厚生労働省の調査報告(注2)では、実際の取り組み内容は、「ストレスチェックの実施」が65.2%と最も多く、次いで「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」が54.7%となっています。

「ストレスチェックの結果を分析し、分析結果を活用した」事業所の割合は、令和3年は63.2%と報告されています(注3)。この報告によると、活用方法の上位3項目は、「残業時間削減、休暇取得に向けた取組」(53.3%)、「相談窓口の設置」(44.6%)、「上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備」(44.1%)となっています。

このような状況でも、令和3年の「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者」がいる事業所の割合は10.1%と、決して少なくはありませんでした。

労働者のメンタルヘルスの現状

図2 強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者割合の推移(労働者計=100%)
強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者割合の推移

厚生労働省『労働安全衛生に関する調査:結果の概要』公開データより作図(注1)

厚生労働省の発表によると、強いストレスを感じている労働者の割合は50~60%程度と高い水準で推移しており(図2)、令和2年調査における強いストレスの上位3項目は、「仕事の量・質」(56.7%)、「仕事の失敗、責任の発生等」(35.0%)、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」(27.0%)となっています。

しかしながら、「過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者」がいる事業所の割合は、平成25年で10.0%、令和3年では10.1%と改善できていません。
精神障害が理由による労災補償の支給決定件数は年々増加し、令和2年度にはついに600件を超えてしいました(図3)。

図3 精神障害の労災補償状況(支給決定件数)
精神障害の労災補償状況(支給決定件数)

厚生労働省『過労死等の労災補償状況』公開データより作図(注4)

アブセンティーイズムとプレゼンティーイズム

企業のメンタルヘルス対策にとって、休職者や退職者の問題だけが重要なわけではありません。
休退職に至る前に、「欠勤、遅刻早退などで業務につけない状態」(アブセンティーイズム)や、「出勤はしているものの、健康問題によってパフォーマンスが低下している状態」(プレゼンティーイズム)という状態があり、これらには生活習慣病やアレルギーなどの身体不調に加えて、メンタルヘルスの問題も大きく関与しています。

図4 従業員の健康関連コストの全体構造(米国金融関連企業の事例)
従業員の健康関連コストの全体構造(米国金融関連企業の事例)

出典:Healthy Workforce 2010 and Beyond(注5)

米国の金融関連企業の事例を見ると、直接的な医療費はコスト全体の一部に過ぎず、プレゼンティーイズムを筆頭とする間接的なコストが、健康関連コストの多くを占めていることがわかります(図4)。
企業・組織経営の全体最適化という視点では、医療費だけではなく、プレゼンティーイズムなども含めた健康関連コスト全体の問題を考える必要があります。メンタルヘルス対策を単純なコストとみなす「医療費適正化」の発想から脱却し、従業員を組織の「資産」として、従業員の健康維持・増進を、労働生産力を底上げする「投資」と捉える考え方が必要であると考えられています(注6)。
企業にとってメンタルヘルス対策は、病人が出たから世話をするという受動的な視点ではなく、そもそも病人を出さない職場づくりが重要であるという能動的な視点が必要です。

企業向けメンタルヘルス対策を行っています

当院では、メンタルヘルスの維持・改善に役立つ医療サービスを提供しています。
ストレスチェックで高ストレスと判定された方を始め、メンタルヘルス対策が必要な方の選択肢の一つとしてご検討ください。

光トポグラフィー検査

うつ病などが疑われる場合は、光トポグラフィー検査をおすすめしています。
光トポグラフィー検査は頭部の血流量の変化を測定することで、脳の活動状態をグラフ化する検査です。光トポグラフィー検査の結果は、疾患の見逃し防止、診断適正化の材料、治療者(医師やカウンセラーなど)と患者様間の情報共有などに広く役立ちます。

光トポグラフィー検査について
詳しくはこちら

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)

TMS治療とは、脳の機能異常に対して磁気刺激によって正常化を図るうつ病の治療法です。ほとんど副作用が無い上に、治療期間が短く、再発率も低い、メリットが大きい治療法です。

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)について詳しくはこちら

御社のご意向に合ったプランをご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。
企業のメンタルヘルス対策については、以下にお問い合わせください。

医療法人社団翔友会
担当:石田・佐川
TEL:03-6279-0090(平日9時~18時)
E-mail:mental@shinagawa.com

また、患者様ご本人の場合は、下のボタンから初診のご予約が可能です。

ストレスやうつ症状について
ぜひご相談ください!

まとめ

平成25(2013)年以降、6割の企業がメンタルヘルス対策に取り組むようになりましたが、強いストレスを感じている労働者の割合は依然高い水準で推移しています。
企業のメンタルヘルス対策を考える際には、直接の医療費や休退職者だけではなく、アブセンティーイズム(欠勤・遅刻早退)、プレゼンティーイズム(パフォーマンス低下)にも目を向ける必要があります。
企業にとってメンタルヘルス対策は、病人が出たから世話をするという受動的な視点ではなく、病人を出さない職場づくりが重要であるという能動的な視点が必要です。

脚注:

参考文献:

〈企業に必要なメンタルヘルス対策への視点とは?〉に関連する記事:

光トポグラフィー検査

TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療)

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

  • 更新

精神医学と心理学トップへ