精神科・心療内科に行ってはいけない人はいる? 誤解の背景と受診すべきサイン

「精神科や心療内科に行ってはいけない人はいますか?」
こうした疑問は、実は少なくない人が抱いています。
結論は明確で、「精神科や心療内科に行ってはいけない人」は存在しません。気になる症状があるときに受診するのは、内科や皮膚科などと同じです。「行ってはいけない」という制限はありませんし、受診したからといって不利益を受けることもありません。
それでは、なぜこのような誤解が少なくないのでしょうか?
その背景としては、偏見・情報不足・心理的抵抗など、いくつかの要因が考えられます。

この記事では、精神科・心療内科に「行ってはいけない」という誤解の背景、受診したほうがよい理由、受診を検討すべきサインなどを、医療機関の立場から解説します。

精神科・心療内科に行ってはいけない人はいる?

ときどき、「精神科や心療内科に行ってはいけない人はいますか?」というような質問があります。
その答えはとてもシンプルで、「精神科や心療内科に行ってはいけない人」は医学的には存在しません。気になる症状があるのなら、内科や皮膚科などと同じように受診してください。「行ってはいけない」と受診をためらっている間にも、症状は悪化する可能性があります。
なお、「ひとまず精神科・心療内科に行く必要がない人」という意味であれば存在します。たとえば怪我や骨折など、明らかに身体の問題が原因の場合は、まず外科や整形外科を受診するのが適切です。症状に応じて適切な医療機関を選ぶことが大切ですが、よく分からない場合はかかりつけの医師に相談しましょう。

「行ってはいけない」という誤解が生まれる5つの背景

それでは、「精神科や心療内科に行ってはいけない」という誤解は、なぜ広がってしまうのでしょうか?
その理由としては、たとえば以下のようなものが考えられます。

1.「重症の人だけが行く場所」という古いイメージ

かつて、精神科は重症者だけが行く「特別な場所」というイメージが強かった時代があります。しかし、現在の精神科・心療内科は、気分の落ち込み・ストレス・不安・睡眠の問題など、誰もが抱え得る不調に対応する医療機関です。
もちろん、病気かどうか不明な場合でも受診可能で、実際にそのような人が大勢来院されます。

2.「自分は病気ではない」という思い込み

心身の不調が思考や判断力にまで影響することは珍しいことではありません。
「自分は大丈夫」「我慢すればいい」という考えは、思考の偏りや判断力の低下による思い込みかもしれません。一時的な不調は我慢で乗り越えられるかもしれませんが、長引く場合は専門家の助けを受けるのが妥当です。

3.「大げさに思われそう」という不安

「この程度で病院なんて大げさに思われそう」と不安になることは珍しいことではありません。
しかし、うつ病などの精神疾患の回復には、早めの相談が近道です。症状が軽いうちに受診することで、深刻化を防ぐことができます。大げさかどうかを心配する必要はありません。

4.「薬漬けにされそう」という心理的抵抗

現代の精神科医療は、薬物療法だけではありません。現在は薬以外の治療(TMS治療、心理療法、生活指導など)も増えています。薬が必要な場合も、適量・最小限で慎重に処方されます。

5.「ネットで見た」情報の影響

SNSや掲示板などには医学的根拠のない情報や、個人の感想や体験談があふれています。それらが常に無益であるとは限りませんが、多くの混乱を生んでいることも否定できません。「精神科・心療内科に行ってはいけない人がいる」というのもその混乱の1つです。

精神科・心療内科に「行ってはいけない人」がいない4つの理由

精神科や心療内科に「行ってはいけない人」がいない理由としては、次のようなものがあげられます。

1.医療は開かれている

医療は誰にでも開かれているものであり、必要に応じて適切な医療を受けることは、すべての人に認められています。精神科・心療内科も例外ではありません。気になる症状があるときに受診するのは、内科や皮膚科などと同じく、ごく自然で正当な行動です。
精神科・心療内科だけが特別な医療ということはありません。

2.「疑い」があるなら受診してよい

受診する目的には、「病気かどうかを判断する」ことも含まれています。そしてその判断は専門知識を持つ医師が責任をもって行うことです。「病気かどうかわからない」「この程度で行っていいの?」というときこそ医療機関の出番です。
病気かどうかわからないという不安を含めて、治療が必要な状態かどうかを医師が判断します。

3.早期受診が回復を早める

うつ病などの精神疾患は、早期の治療が早期の回復につながります。「行ってはいけない」という誤解から受診が遅れると、発見が遅れ、治療も遅れることになります。

4.受診して「治療不要」とわかれば安心につながる

受診の結果、治療が不要な状態であるとわかれば、それはそれ以上心配しなくてよいということです。
受診は決して無駄足ではありません。

受診をためらう人にこそ相談してほしい

メンタルの不調は、「自分の状態を正しく判断する力」を弱めます。そのため、「迷っている時点で受診したほうがよい」というケースはとてもよくあります。
不調が何週間も続き実生活に支障が出ている状態は、すでに健康とはいえず、放っておけばさらに重い症状に苦しむことになる可能性があります。「自分はまだ大丈夫」「たぶん気のせい」「なんかこわい」と我慢し続けることは、さまざまなリスクにつながります。

  • 仕事や家庭、人間関係に支障が出る
  • 身体症状(頭痛・胃痛・動悸など)が悪化する
  • うつ病や不安障害などに進行する

膝や腰の激痛を無視して歩き続けたり、動き続けたりはしないと思います。
それが気持ちや心の問題の場合は、我慢してしまうということがよくあります。しかし、精神疾患は気合や我慢で治るというものではありません。適切な治療や対処が必要です。
迷っているならなおのこと、医療機関にご相談ください。一人で悩み続ける必要などないのです。

精神科・心療内科を受診したほうがよいサイン

あなたが心身の不調を感じ、日常生活に支障がでているなら、それは精神科・心療内科を受診したほうがよいというサインです。
受診を考える目安となる症状には、以下のようなものがあります。

  • 気分が落ち込む。
  • 不安が大きくて苦しい。
  • 何をするのもおっくうに感じる。
  • なかなか寝付けない、途中で目が覚めてしまう。
  • 食欲がない、食事がおいしくない。
  • 勉強・仕事や会話などに集中できない。
  • 悪い考えが止まらない。

判断に迷う場合はセルフチェックも役立ちます。ご自身の状態を客観視する助けになります。

より詳しい受診の目安や基準は以下の記事で解説しています。

早期受診・早期治療が早期回復のカギ

いざ受診しようと決心したあとは、どうすればよいのでしょうか?
今では多くの医療機関がインターネット上に問い合わせ先や受診方法などを掲載していますので、そちらで確認するとよいでしょう。
当院でも、「初めての方へ」に予約方法などをまとめてあります。

現代はストレス社会といわれるように、職場・学校・家庭と、どこにいてもストレスにさらされるリスクを常に抱えています。そのストレスに心身がむしばまれるということは珍しいことではありません。
うつ病などの精神疾患は早期発見・早期治療が非常に大切です。受診の遅れが重症化や慢性化につながりますので、不調を感じたら、遠慮せずに精神科・心療内科を受診してください。

まとめ:受診は、あなたの苦しさを軽くするための第一歩

精神科や心療内科に行ってはいけない人はいません。
「行ってはいけない」という誤解の背景には、偏見・情報不足・心理的抵抗など、いくつかの要素がかかわっています。心身に不調を感じているのなら、遠慮せずに早めにご相談ください。
受診はあなたの感じている苦痛をやわらげるための大切な第一歩です。

よくある質問

  1. 周囲にあまり知られたくありません。大丈夫ですか?
  2. 病名をつけられたくない。
  3. この程度で受診していいの?
周囲にあまり知られたくありません。大丈夫ですか?

医療機関には守秘義務がありますので、周囲に知られることはありません。

病名をつけられたくない。

病名はあなたを縛るものではなく、治療のための情報です。なお、精神疾患を特定することは必ずしも容易ではなく、病名がはっきりするまで時間がかかる場合もあります。

この程度で受診していいの?

はい、もちろんです。受診する目的には、「病気かどうかを判断する」ことも含まれています。病気かどうかわからないという不安を含めて、治療が必要な状態かどうかを医師が判断します。

渡邊 真也

監修

渡邊 真也(わたなべ しんや)

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。

品川メンタルクリニックはうつ病かどうかが分かる「光トポグラフィー検査」や薬を使わない新たなうつ病治療「磁気刺激治療(TMS)」を行っております。
うつ病の状態が悪化する前に、ぜひお気軽にご相談ください。

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