非定型うつ病は、一般的なうつ病とは少し異なる特徴を持つ病気です。「気分反応性」といって、楽しいことや嬉しいことがあれば一時的に気分が晴れるという性質があるため、「怠けているだけ」「甘えている」と誤解されやすい側面があります。
しかし、これも適切な「治し方」で回復が見込める病気です。
一人で抱え込まず、正しい知識を得て、回復への一歩を踏み出すことが大切です。
この記事では、非定型うつ病の特徴から具体的な治療法、自力でできる工夫、周囲のサポート方法まで、分かりやすく解説します。
非定型うつ病は、正式には「抑うつ障害、気分反応性または非定型的な特徴を伴うもの」に分類される精神疾患の一つです。
従来のうつ病(メランコリー型うつ病)が、気分が落ち込みっぱなしで何をしても楽しめない、朝に気分が重くなるなどの特徴を持つ一方、非定型うつ病はいくつかの特徴的な症状を示します。
非定型うつ病の主な症状(気分反応性、過眠・過食など)
非定型うつ病の最も特徴的な症状は「気分反応性」です。
これは、たとえ抑うつ状態にあっても、良い出来事や肯定的な人間関係の交流があった際には、一時的に気分が持ち直すという性質です。
一般的なうつ病では、何があっても気分が晴れないことが多いのとは対照的です。
その他の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。
- 過眠: 夜十分に寝ても日中に強い眠気を感じたり、いつもより長く眠ったりする傾向があります。一日中眠気と戦っているような状態になることもあります。
- 過食(特に炭水化物への欲求)と体重増加: ストレスを感じると、甘いものや炭水化物などを無性に食べたくなり、それによって体重が増加することがあります。食べることで一時的に気分が紛れることもありますが、後で後悔することもあります。
- 「鉛様の麻痺」: 手足が鉛のように重く感じられ、動かすのが億劫になる感覚です。特に夕方以降に強く感じやすいとされます。
- 人間関係過敏性: 対人関係において、批判や拒絶に対して過度に敏感になり、傷つきやすくなります。これにより、人との関わりを避けるようになることもあります。
- 夕方に気分が悪化しやすい: 一般的なうつ病が朝に気分が重くなる傾向があるのに対し、非定型うつ病は夕方から夜にかけて気分が落ち込みやすいとされています。
これらの症状は個人によって現れ方や程度が異なりますが、特に「気分反応性」「過眠」「過食・体重増加」「鉛様の麻痺」「人間関係過敏性」のうち、気分反応性に加えて4つ以上の症状が認められる場合に、非定型うつ病の特徴に合致すると考えられます。
非定型うつ病になりやすい人の特徴・性格
非定型うつ病は、比較的若い女性に多く見られる傾向がありますが、男性や高齢者にも発症します。
なりやすい人の特徴や性格として、以下のような傾向が指摘されることがあります。
- 繊細で傷つきやすい: 他人の言動に影響されやすく、批判や拒絶を強く受け止めてしまう。
- 完璧主義・真面目すぎる: 物事を完璧にこなそうとしすぎたり、融通が利かなかったりする。
- 承認欲求が強い: 他人からの評価や承認を得ることで自己価値を感じやすい。
- 衝動的・感情の波が大きい: 気分が高揚したり落ち込んだりするなど、感情の変動が大きい。
- ストレス対処が苦手: ストレスを感じたときに、うまく解消する方法を見つけられない。
- 幼少期の環境: 親からの過干渉や無視、否定的な関わりなど、安定した愛着関係を築けなかった経験がある。
これらの特徴はあくまで傾向であり、これらの性格だからといって必ず非定型うつ病になるわけではありません。
しかし、生まれ持った気質や育ってきた環境が、ストレスへの脆弱性につながり、発症に関与する可能性は考えられます。
非定型うつ病の診断基準
非定型うつ病の診断は、精神科医や心療内科医が、国際的な診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)などに基づいて行います。
診断は、問診を通じて患者さんの症状、経過、日常生活への影響、既往歴などを詳しく聞き取ることが中心となります。
DSM-5における抑うつ障害の診断基準に加え、「非定型的な特徴」として以下の基準を満たすかどうかが検討されます。
- 気分反応性: ポジティブな出来事に対する気分反応性があること(つまり、落ち込んでいる時でも、良いことがあると一時的に気分が明るくなる)。
- 以下の症状のうち、2つ以上が存在すること:
- 過眠
- 鉛様の麻痺: 手足が重い、鉛のように感じられる。
- 顕著な体重増加または食欲増加
- 長期にわたる対人関係における拒絶に対する過敏性: これによって職業上または社会的な機能に重大な障害が生じている。
- 非定型的な特徴は、メランコリー型うつ病の特徴や緊張病を伴ううつ病の基準を満たしている期間中のみに生じるものではないこと。
これらの基準に加え、他の精神疾患や身体疾患の可能性を除外することも診断において重要です。
自己判断せず、必ず専門医の診察を受けるようにしましょう。
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非定型うつ病の治し方・治療法を解説
非定型うつ病の治療は、一般的なうつ病と同様に、専門家による治療と自力で取り組める生活改善を組み合わせることが基本となります。
症状の重症度や個人の状況に応じて、適切な治療法が選択されます。
焦らず、根気強く治療に取り組むことが回復への鍵となります。
専門家による治療の選択肢(病院での治療)
非定型うつ病の治療の主体は、精神科医や心療内科医による専門的なアプローチです。
主に薬物療法と精神療法が用いられます。
薬物療法
非定型うつ病の薬物療法では、主に以下の種類の抗うつ薬が用いられます。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI): 脳内の神経伝達物質であるセロトニンの量を増やし、気分の落ち込みや不安を和らげる効果が期待できます。非定型うつ病に対して第一選択薬として用いられることが多いです。副作用として、吐き気、頭痛、眠気、性機能障害などがありますが、多くは一時的なものです。
- 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI): セロトニンに加え、ノルアドレナリンの量も増やします。意欲低下やだるさといった症状にも効果が期待できることがあります。SSRIと同様の副作用に加え、血圧上昇や動悸などが現れることもあります。
- ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA): セロトニンとノルアドレナリンの放出を促進することで効果を発揮します。SSRIやSNRIと異なる作用機序を持ち、効果が出るのが比較的早いという特徴があります。眠気や体重増加といった副作用が出やすい傾向があります。
- モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI): 非定型うつ病に対して特に有効性が示唆されている薬ですが、特定の食品や他の薬との飲み合わせに注意が必要など、使用に際しては専門的な知識が求められます。日本ではあまり広く使われていません。
薬物療法の注意点
- 効果が出るまで時間がかかる: 抗うつ薬は服用を開始してから効果が実感できるまでに、通常2週間から数ヶ月かかることがあります。すぐに効果が出なくても焦らないことが大切です。
- 自己判断での中止は危険: 症状が改善したと感じても、自己判断で薬を中断すると再発のリスクが高まります。必ず医師の指示に従って減量・中止してください。
- 副作用: 薬には副作用がつきものです。気になる症状が現れた場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。
- 個人差: 薬の効果や副作用には個人差があります。複数の薬を試して、自分に合った薬を見つけることもあります。
精神療法(認知行動療法など)
薬物療法と並行して行われることが多いのが精神療法です。
特に認知行動療法(CBT)は、非定型うつ病を含むうつ病の治療に有効であることが多くの研究で示されています。
認知行動療法では、ものの捉え方(認知)と行動に働きかけることで、気分や感情の落ち込みを改善することを目指します。
具体的には、以下のようなアプローチを行います。
- 自分の思考パターンの特定: ストレスを感じたときや落ち込んだときに、自分がどのような考え方をしているかに気づく練習をします。例えば、「どうせ自分は何をやってもうまくいかない」といった否定的な考え(自動思考)を見つけます。
- 思考の歪みの修正: 特定した否定的な考えが、現実からどの程度ずれているのかを検討し、より現実的でバランスの取れた考え方に修正していきます。
- 行動の活性化: 落ち込んでいると活動量が減りがちですが、少しずつでも楽しいと感じることや達成感を得られる活動を増やすように促します。これにより、気分や意欲の改善を目指します。
- 問題解決スキルの向上: 日常生活で直面する問題を解決するための具体的なスキルを学びます。
- 対人関係スキルの向上: 人間関係過敏性がある場合、対人関係でのコミュニケーションの取り方や、他人の評価を気にしすぎない方法などを学びます。
認知行動療法は、医療機関で行われるもののほか、専門のカウンセラーから受けることもあります。
複数回のセッションを通じて、うつ病の症状を引き起こす考え方や行動のパターンを変えていくことを目指します。
その他の治療法(光療法など)
季節性うつ病(特定の季節、特に冬に症状が悪化するタイプ)と非定型うつ病は症状の一部に類似点があり、過眠や過食が共通して見られることがあります。
そのため、光療法が検討されることもあります。
光療法は、高照度の光を一定時間浴びることで、体内時計を調整し、気分の落ち込みや過眠などの症状を改善しようとする治療法です。
通常、朝に毎日30分程度、特別な光療法器を用いて行われます。
その他、医師が必要と判断した場合には、運動療法やマインドフルネスなどの補完的なアプローチが提案されることもあります。
これらの治療法は単独で行われるよりは、薬物療法や精神療法と組み合わせて行われることが多いです。
自力で取り組める生活改善策
専門家の治療を受けながら、日常生活の中で自分でできる工夫も非定型うつ病の回復には非常に重要です。
これらの生活改善は、治療の効果を高め、再発予防にもつながります。
生活リズムの確立
非定型うつ病では過眠の症状が出やすいですが、不規則な睡眠はかえって心身の調子を崩しやすくします。
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけることで、体内時計が整い、気分の安定につながります。
休日も平日と大きく変わらない時間に起きるのが理想的です。
朝日を浴びることも、体内時計をリセットするのに役立ちます。
食事と運動の工夫
- 食事: 過食や偏食は、血糖値の急激な変動を引き起こし、気分の不安定につながる可能性があります。バランスの取れた食事を規則正しく摂ることが大切です。特に、タンパク質、ビタミン、ミネラルをしっかり摂り、過度な糖分や脂質の摂取を控えるように意識しましょう。炭水化物への欲求が強い場合は、精製されたものよりも、玄米や全粒粉パンなどの複合炭水化物を選ぶのがおすすめです。
- 運動: 適度な運動は、ストレス解消や気分転換になり、心身の健康に良い影響を与えます。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、無理なく続けられる運動を見つけましょう。最初は短時間から始め、徐々に時間を増やしていくのが良いでしょう。
ストレスマネジメント
非定型うつ病はストレスに敏感な特徴があります。
自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
- 趣味や好きな活動に時間を使う。
- リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、筋弛緩法など)を試す。
- 信頼できる人に話を聞いてもらう。
- 自然の中で過ごす時間を設ける。
- ジャーナリング(日記を書く)で感情を整理する。
また、完璧主義や人間関係過敏性といった性格傾向がストレスの原因となっている場合は、認知行動療法などでものの捉え方を変える訓練をすることも有効です。
小さな成功体験を積む
抑うつ状態にあると、何事も億劫になり、自己肯定感が低下しがちです。
回復のためには、小さなことでも良いので「できた」という成功体験を積むことが重要です。
例えば、「朝起きて着替える」「歯を磨く」「短い時間散歩する」「部屋の一角を片付ける」など、ハードルの低い目標を設定し、達成できたら自分を褒めてあげましょう。
リスト化してチェックをつけていくのも良い方法です。
小さな成功を積み重ねることで、少しずつ自信を取り戻し、活動範囲を広げていくことができます。
非定型うつ病は完治する?回復の見通し
非定型うつ病は、適切な治療と本人の取り組みによって十分に回復が見込める病気です。
多くの人が、症状が改善し、元の生活に近い状態を取り戻すことが可能です。
ただし、「完治」の定義は難しい側面があります。
一度症状が改善しても、ストレスや体調の変動などによって再発する可能性はあります。
そのため、症状が落ち着いた後も、医師と相談しながら服薬を続けたり(維持療法)、精神療法で学んだスキルを実践したり、生活習慣を維持したりすることが、再発予防には非常に重要となります。
回復には個人差があり、回復までの期間も人それぞれです。
数ヶ月で改善する人もいれば、年単位で治療を続ける人もいます。
焦らず、自分のペースで治療に取り組み、小さな変化を見逃さずに喜びながら進んでいくことが大切です。
回復のプロセスは、一般的に以下の段階を経て進むと考えられています。
- 急性期: 症状が最もつらい時期。休息と治療が中心。
- 回復期: 症状が徐々に和らぎ、活動量が少しずつ増えてくる時期。無理のない範囲で日常を取り戻していく。
- 維持期: 症状がほぼ消失し、安定した状態を保つ時期。再発予防に努める。
- 寛解: 症状がほとんどない状態。
この回復の道のりは直線的ではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進むこともあります。
途中で落ち込むことがあっても、それは回復の過程の一部であると理解し、諦めずに治療を続けることが重要です。
非定型うつ病の方への適切な接し方・避けるべき禁句
非定型うつ病の方の回復には、周囲の理解とサポートが非常に大きな力となります。
しかし、病気への誤解や不適切な対応が、かえって患者さんを傷つけ、病状を悪化させてしまうこともあります。
正しい知識を持って接することが大切です。
患者さんへの基本的な接し方
- 共感と傾聴: 何よりも大切なのは、患者さんのつらい気持ちに寄り添い、話をじっくりと聞くことです。安易な励ましやアドバイスではなく、「つらいね」「大変だね」といった共感の言葉を伝え、ただそばにいる姿勢を示すことが安心につながります。
- 病気への理解を示す: 非定型うつ病は「怠け」や「甘え」ではないことを理解し、それを言葉や態度で伝えましょう。「病気だから仕方ないんだね」と、本人を否定せず病気として受け止める姿勢が重要です。
- 休息の必要性を尊重する: 過眠や気分の波があるため、休息が必要な時があります。無理に活動させようとせず、本人が必要とする休息を尊重しましょう。
- 小さな変化を認める: 患者さん自身は回復の過程に気づきにくいことがあります。少しでも気分が良くなった、少しだけ活動できた、といった小さな変化に気づき、「前より顔色が良くなったね」「今日は少し歩けたんだ、すごいね」など、具体的に伝えて褒めてあげましょう。これは「小さな成功体験を積む」ことのサポートにもなります。
- 治療をサポートする: 病院へ付き添ったり、薬の飲み忘れがないか声をかけたりするなど、治療を続けられるようにサポートすることも大切です。
- 回復を焦らせない: 回復には時間がかかります。焦らず、患者さんのペースに合わせて見守ることが大切です。
非定型うつ病の人に言ってはいけない禁句
非定型うつ病の特徴である「気分反応性」や、症状の波から、「本当に病気なの?」と疑ったり、安易に励ましたりする言葉は、患者さんを深く傷つけてしまう可能性があります。
以下のような言葉は避けましょう。
- 「気の持ちようだ」「頑張れ」「怠けているだけじゃないの?」: これは病気を否定し、本人の努力不足だと責める言葉です。病気によって心身が消耗している状態では、「頑張る」こと自体が困難であり、これらの言葉は大きなプレッシャーとなります。
- 「もっと〇〇すれば?」「〇〇した方がいいよ」: アドバイスは、本人が求めている場合や、具体的な行動をサポートする文脈で行うべきです。一方的なアドバイスは、「それができない自分はダメだ」と自己否定感を強めたり、「分かってもらえない」と孤立感を深めたりすることがあります。
- 「そんなことで落ち込むの?」「大げさだよ」: 患者さんの感情や苦しみを軽視する言葉です。本人にとっては非常に深刻な悩みであり、それを否定されることは信頼関係を損ないます。
- 「前はあんなに楽しそうだったのに」「病気じゃない時はできたでしょ」: 気分反応性があるため、一時的に明るく振る舞えることがあります。しかしそれは回復したわけではなく、病気の中での一時の変化です。過去の状態と比較したり、気分反応性があることを理由に病気を疑ったりする言葉は避けましょう。
- 「いつになったら良くなるの?」「早く治してよ」: 患者さん自身が一番回復を願っています。いつ治るか分からない不安を抱えている中で、回復を急かす言葉はプレッシャーとなり、追い詰めてしまいます。
- 「みんな同じように大変なんだから」: 患者さんの苦しみを一般化し、矮小化する言葉です。病気による苦しみは、健康な時の大変さとは異なります。
これらの言葉は、善意から発せられることもありますが、非定型うつ病という病気の特性を理解していないために、かえって患者さんを孤立させ、治療への意欲を削いでしまう可能性があります。
周囲の家族・友人ができるサポート
家族や友人は、患者さんにとって最も身近で大切な存在です。
できるサポートは様々です。
- 病気について学ぶ: 非定型うつ病について正しい知識を持つことが第一歩です。この記事のような情報源や、患者さんが受診している医師から話を聞くことも有効です。
- 医療機関との連携: 可能であれば、患者さんの同意を得て、診察に同席したり、日頃の様子を医師に伝えたりすることも役立ちます。
- 日常生活のサポート: 料理や掃除、買い物など、患者さんが困難を感じている家事を手伝ったり、通院に付き添ったりするなど、具体的なサポートを提供できます。ただし、何でも代わりにやってあげるのではなく、本人が自分でできること、やりたいことを見つけて、それをサポートする姿勢が大切です。
- 無理のない範囲での交流: 患者さんが引きこもりがちになっている場合でも、無理に外に連れ出すのではなく、家で一緒に過ごしたり、短い時間だけ散歩に誘ったりするなど、本人の負担にならない範囲で交流を保ちましょう。
- 自分自身のケアも大切にする: 患者さんをサポートする側も、大きな負担を感じることがあります。一人で抱え込まず、他の家族や友人、地域の相談窓口などを利用して、自分自身の心身の健康も守ることが重要です。共倒れになってしまっては、患者さんを支えることも難しくなります。
- 緊急時の対応を知っておく: 万が一、患者さんが自殺をほのめかすなど緊急性の高い状況になった場合に、どのように対応すべきか(救急連絡先、かかりつけ医への連絡など)を事前に把握しておきましょう。
患者さんと家族・友人の関わり方のポイントを表で整理
ポイント | 適切な関わり方 | 避けるべき言動 |
---|---|---|
理解と共感 | 「つらいね」「大変だね」と気持ちに寄り添う | 「気の持ちようだ」「頑張れ」「大げさだ」 |
病気への認識 | 病気だから仕方ない、と本人を責めずに病気として受け止める | 「怠け」「甘え」と見なす、病気を疑う言葉 |
休息と活動 | 必要な休息を尊重する、無理のない範囲で活動を促す | 無理に外に連れ出したり、活動を強制したりする |
評価 | 小さな良い変化に気づき、具体的に褒める | 過去の状態と比較する、できていないことを指摘する |
治療へのサポート | 通院への付き添い、服薬の確認などを行う(本人の同意を得て) | 治療を軽視する、自己判断での中断を勧める |
期待と焦り | 回復には時間がかかることを理解し、患者さんのペースを見守る | 回復を急かす言葉をかける、「いつ治るの?」と聞く |
アドバイス | 本人が求めた場合に、具体的なサポートに繋がるアドバイスを行う | 一方的なアドバイス、「〇〇すれば?」の連発 |
自分自身のケア | サポートする側も休息を取り、相談相手を持つ | 一人で全て抱え込み、無理をする |
非定型うつ病の主な原因は?(親など)
非定型うつ病の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
特定の「親」のせいと断定できるものではなく、様々な要素が相互に影響し合います。
主な原因として考えられているのは以下の要素です。
- 生物学的要因:
- 脳内の神経伝達物質のバランスの崩れ: セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質の働きに異常が生じている可能性が指摘されています。
- 遺伝的要因: 家族の中にうつ病やその他の気分障害を患った人がいる場合、非定型うつ病になるリスクがやや高まることが分かっています。ただし、遺伝だけで決まるものではありません。
- 脳の構造や機能の変化: ストレスやうつ病によって、脳の特定の領域(扁桃体や海馬など)の構造や機能に変化が生じることが研究で示されています。
- 心理的要因:
- 性格傾向: 前述したような、繊細さ、完璧主義、承認欲求の強さ、ストレス対処の苦手さなどが発症に関与することがあります。特に、対人関係での拒絶に過度に敏感な傾向は、人間関係過敏性として非定型うつ病の特徴の一つとされています。
- 認知の歪み: 物事を否定的に捉えがちな思考パターン(認知の歪み)が、抑うつ状態を維持したり悪化させたりすることがあります。
- 環境的要因:
- ストレス: 進学、就職、異動、人間関係のトラブル、失恋、大切な人との別れなど、様々なライフイベントや慢性的なストレスが発症の引き金となることがあります。特に、対人関係におけるストレスが強く影響することが多いとされます。
- 生育歴: 幼少期の虐待、ネグレクト、不安定な養育環境、親からの否定的な関わりなどが、後のストレス耐性や自己肯定感に影響を与え、発症リスクを高める可能性が指摘されています。親との関係性が全ての原因となるわけではありませんが、自己肯定感や対人関係のパターン形成に影響を与える重要な要素の一つとなり得ます。
- 社会的要因:
- 孤立、サポートの不足、経済的な問題、社会的な偏見なども、ストレスを増加させ、発症や回復の妨げとなることがあります。
これらの要因が単独で作用するというよりも、複数の要因が組み合わさって、特定の人が非定型うつ病を発症すると考えられます。
例えば、遺伝的に脆弱性がある人が、強いストレスを経験し、さらにストレス対処スキルが低いといった複数の要因が重なることで発症する、といったイメージです。
原因を特定することも治療においては重要ですが、それ以上に、現在の症状に対して適切な治療を受け、ストレスへの対処法を学び、自己肯定感を高めていくアプローチが回復には不可欠となります。
非定型うつ病に関するよくある質問(Q&A)
非定型うつ病について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
非定型うつ病の人は自分を責める傾向がありますか?
はい、非定型うつ病の人も自分を責める傾向があります。
特に、気分反応性によって一時的に調子が良くなることがあるため、調子が良い時に「自分は本当は病気ではないのではないか」「怠けていただけではないか」と感じて、自分自身を責めてしまうことがあります。
また、人間関係過敏性から、他者からの批判や拒絶を強く受け止めてしまい、「自分が悪いんだ」と自分を責めることにつながりやすいです。
うつ病全般に言えることですが、自己肯定感が低下し、「自分がダメだ」と感じやすい状態にあります。
非定型精神病と非定型うつ病は同じですか?
いいえ、非定型精神病と非定型うつ病は異なる概念です。
「非定型精神病」は、主に統合失調症や双極性障害などの典型的な精神疾患の診断基準には完全に合致しないものの、精神病症状(幻覚や妄想など)や著しい精神運動興奮・抑制を示す精神疾患を指す古い用語です。
現在ではあまり使われなくなり、他の診断名が用いられることが多いです。
一方、「非定型うつ病」は、この記事で解説している通り、うつ病の一種で、気分反応性や過眠、過食といった特徴的な症状を持つものを指します。
両者は全く異なる病気です。
非定型うつ病は男性にも見られますか?
はい、非定型うつ病は男性にも見られます。
ただし、統計的には女性、特に比較的若い女性に多い傾向があります。
男性の場合、うつ病の症状がイライラや攻撃性といった形で現れることもあり、非定型うつ病の特徴も女性とは少し異なる現れ方をすることもあるかもしれません。
しかし、過眠や過食、手足の重さといった非定型うつ病の典型的な症状は男性にも起こり得ます。
性別に関わらず、当てはまる症状がある場合は専門医に相談することが重要です。
思い出して泣くのは非定型うつ病の症状ですか?
思い出し泣きは、うつ病の典型的な症状として挙げられるものではありません。
しかし、非定型うつ病では感情の波が大きく、過去の辛い出来事や喪失体験を思い出した際に、感情が強く揺さぶられて涙が出てしまうことはあり得ます。
これは、感情のコントロールが難しくなっている状態や、心に抱えている悲しみや苦しみが溢れ出す現れの一つとして考えられます。
病気の症状というよりは、抑うつ状態や精神的な不安定さの中で起こりうる現象として捉える方が適切かもしれません。
つらい感情に圧倒されてしまう場合は、その感情にどう対処していくかを精神療法などで学ぶことも有効です。
【まとめ】非定型うつ病の治し方について
非定型うつ病は、気分反応性、過眠、過食、鉛様の麻痺、人間関係過敏性といった特徴的な症状を持つうつ病の一種です。
これらの症状から「怠けている」「甘えている」と誤解されがちですが、これは脳機能のバランスの崩れなども関与する病気であり、本人の意思だけではどうすることもできません。
しかし、非定型うつ病は適切な「治し方」によって、十分に回復が見込める病気です。
治療の中心は、精神科医や心療内科医による薬物療法(SSRIなどがよく用いられる)と精神療法(特に認知行動療法)です。
これらの専門的な治療に加え、生活リズムの確立、バランスの取れた食事、適度な運動、効果的なストレスマネジメント、小さな成功体験を積むといった自力での取り組みも回復には非常に重要です。
回復の道のりは人それぞれであり、症状の波を経験することもありますが、焦らず、粘り強く治療を続けることが大切です。
また、家族や友人の理解と適切なサポートも、患者さんの回復を大きく後押しします。
病気を正しく理解し、患者さんの気持ちに寄り添い、適切な距離感でサポートすることが求められます。
安易な励ましや批判は避け、共感的な姿勢で接しましょう。
非定型うつ病の原因は複合的で、遺伝的要因、心理的要因、環境的要因、社会的要因が絡み合って発症すると考えられています。
過去の経験や性格傾向も影響しますが、原因探しに囚われすぎず、現在の症状への治療と、今後の再発予防に焦点を当てることが重要です。
もし、ご自身や大切な人が非定型うつ病かもしれないと感じたら、まずは一人で抱え込まず、精神科や心療内科などの専門医療機関に相談してください。
専門家の診断と適切な治療を受けることが、回復への第一歩となります。
適切なサポートと治療を受ければ、必ずより良い状態へ向かうことができます。
諦めずに、回復への道のりを歩み始めましょう。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、診断や治療を推奨するものではありません。個々の症状や状況については、必ず専門の医療機関にご相談ください。記事内の情報は、執筆時点での一般的な医学的知見に基づいています。