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睡眠導入剤の種類と選び方を徹底解説|効果・副作用も紹介

不眠に悩んでいるとき、「睡眠導入剤」という言葉を耳にしたり、実際に使用を検討したりする方は少なくありません。しかし、「睡眠導入剤」と一口に言っても、その種類は多岐にわたり、それぞれ特徴が異なります。ご自身の不眠のタイプや体の状態に合わない薬を使用すると、十分な効果が得られなかったり、予期せぬ副作用が出たりする可能性もあります。

この記事では、睡眠導入剤にはどのような種類があるのか、作用時間や薬の系統ごとの特徴、効果、副作用について詳しく解説します。市販薬との違いや、自分に合った睡眠導入剤の選び方、そして医師に相談することの重要性についてもご紹介します。不眠にお悩みの方は、ぜひ最後までお読みいただき、睡眠導入剤について理解を深める参考にしてください。

「睡眠導入剤」と「睡眠薬」は、厳密な定義があるわけではありませんが、一般的に以下のように使い分けられることがあります。

  • 睡眠導入剤: 比較的短時間作用型で、主に「寝つきを良くする(入眠を助ける)」目的で使用される薬剤を指すことが多いです。
  • 睡眠薬: 睡眠全般の問題(寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めるなど)を改善するために使用される薬剤全般を指す広い意味合いで使われることがあります。

医学的な分類としては、どちらも広義の「睡眠薬(催眠鎮静薬)」に含まれます。この記事では、主に医師が処方する「睡眠導入剤」について、様々な種類を詳しく解説していきます。

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目次

睡眠導入剤の種類:作用時間による分類

睡眠導入剤を分類する際に、まず重要なのが「作用時間」です。作用時間によって、薬が効果を発現するまでの時間や、体内に留まる時間が異なり、それぞれ適した不眠のタイプが異なります。主に以下の4つのタイプに分類されます。

超短時間型睡眠導入剤

超短時間型は、服用後すぐに効果が現れ、短い時間で体から薬の成分が排出されるのが特徴です。

  • 作用発現までの時間: 非常に速い(15〜30分程度)
  • 効果の持続時間: 2〜4時間程度
  • 適した不眠のタイプ: 寝つきが悪い「入眠困難」タイプの方に適しています。効果がすぐに現れて短い時間で切れるため、翌朝まで眠気が残る「持ち越し効果」が比較的少ないとされています。
  • 注意点: 効果が急激に現れるため、服用したらすぐに布団に入ることが推奨されます。服用後に布団に入るまでの間に、一時的な記憶障害(せん妄や健忘)が起こるリスクも指摘されています。

短時間型睡眠導入剤

短時間型も寝つきを良くする効果がありますが、超短時間型よりもやや長く作用します。

  • 作用発現までの時間: 速い(15〜30分程度)
  • 効果の持続時間: 6〜8時間程度
  • 適した不眠のタイプ: 寝つきが悪い「入眠困難」に加えて、夜中に一度目が覚めるがその後眠れないといった「中途覚醒」の初期にも対応できる場合があります。一般的な不眠に対して広く使用されます。

中時間型睡眠導入剤

中時間型は、短時間型より長く作用し、夜中の覚醒や早朝の覚醒にも対応できます。

  • 作用発現までの時間: やや遅い(30〜60分程度)
  • 効果の持続時間: 10〜12時間程度
  • 適した不眠のタイプ: 夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」や、朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」に悩む方に適しています。比較的長い時間効果が持続するため、夜間の睡眠を維持するのに役立ちます。
  • 注意点: 効果が長く続く分、翌朝に眠気やだるさが残る「持ち越し効果」が現れる可能性があります。

長時間型睡眠導入剤

長時間型は、最も作用時間が長く、効果が翌日まで持続することもあります。

  • 作用発現までの時間: 遅い(60分以上)
  • 効果の持続時間: 20時間以上
  • 適した不眠のタイプ: 「早朝覚醒」のほか、日中の不安が夜間の不眠につながっている場合などにも使用されることがあります。効果が長く持続するため、安定した睡眠リズムの調整を目指す場合にも用いられます。
  • 注意点: 翌日まで薬の影響が残りやすく、日中の眠気やふらつき、集中力の低下などが起こる可能性が比較的高いため、車の運転など危険を伴う作業は避ける必要があります。高齢者の場合、転倒リスクを高める可能性もあるため、慎重な使用が求められます。
タイプ 作用発現までの時間 効果の持続時間 適した不眠のタイプ 主なメリット 主なデメリット
超短時間型 15~30分 2~4時間 入眠困難 持ち越し効果が少ない 服用後すぐに寝ないと健忘などのリスクあり
短時間型 15~30分 6~8時間 入眠困難、中途覚醒(初期) 幅広いタイプの不眠に対応しやすい 超短時間型よりは持ち越し効果の可能性あり
中時間型 30~60分 10~12時間 中途覚醒、早朝覚醒 夜間の睡眠維持に有効 持ち越し効果の可能性あり
長時間型 60分以上 20時間以上 早朝覚醒、日中の不安を伴う不眠、睡眠リズム調整 安定した睡眠維持、日中の不安緩和の可能性あり 持ち越し効果が出やすい、日中の活動への影響が大きい

※上記は一般的な目安であり、個人差があります。

睡眠導入剤の種類:薬剤の系統による分類

睡眠導入剤は、作用時間による分類だけでなく、薬の化学構造や作用の仕方(作用機序)によっても分類されます。代表的な系統には、以下のようなものがあります。

ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤

ベンゾジアゼピン系は、かつて睡眠導入剤の主流だった系統です。脳の興奮を抑える神経伝達物質GABA(γ-アミノ酪酸)の働きを強めることで、催眠作用、鎮静作用、抗不安作用、筋弛緩作用などを発揮します。

ベンゾジアゼピン系の作用と特徴

  • 作用: GABA受容体に結合し、GABAの作用を増強することで、脳の活動を抑制します。
  • 特徴: 即効性があり、強力な催眠作用や鎮静作用を示します。不眠だけでなく、不安や緊張が強い場合にも有効なことがあります。
  • メリット: 比較的速やかに効果が得られ、様々な不眠のタイプに対応できる薬剤があります。
  • デメリット: 依存性や耐性が形成されやすい傾向があります。また、筋弛緩作用によるふらつき、記憶障害(特に高用量やアルコールとの併用時)、せん妄、反跳性不眠(中止した後に不眠が悪化すること)などの副作用が起こる可能性があります。長期連用には注意が必要です。

ベンゾジアゼピン系の主な薬剤名(超短時間型)

主に寝つきの悪さに使用されます。

  • トリアゾラム(商品名:ハルシオン)
  • ブロチゾラム(商品名:レンドルミン)※厳密には短時間型に分類されることもあります。

ベンゾジアゼピン系の主な薬剤名(短時間型)

入眠困難や中途覚醒の初期に使用されます。

  • リルマザホン(商品名:リスミー)

ベンゾジアゼピン系の主な薬剤名(中時間型)

中途覚醒や早朝覚醒に使用されます。

  • エチゾラム(商品名:デパス)※厳密にはベンゾジアゼピン系とは少し異なりますが、同様の作用を持つチエノジアゼピン系として扱われることが多いです。抗不安作用も強いです。
  • ロルメタゼパム(商品名:エバミール、ロラメット)

ベンゾジアゼピン系の主な薬剤名(長時間型)

早朝覚醒や日中の不安を伴う不眠、睡眠リズムの調整などに使用されることがあります。

  • フルラゼパム(商品名:ベノジール、ダルメート)
  • クアゼパム(商品名:ドラール)
  • ジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)※抗不安作用や筋弛緩作用も強いです。

非ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤

非ベンゾジアゼピン系は、ベンゾジアゼピン系と同様にGABA受容体に作用しますが、その結合部位や作用の仕方がベンゾジアゼピン系とは異なります。これにより、催眠作用に特化し、筋弛緩作用や抗不安作用が比較的少ないとされています。

非ベンゾジアゼピン系の作用と特徴

  • 作用: GABA受容体の中でも、特に睡眠に関わる部位に選択的に作用することで催眠効果を発揮します。
  • 特徴: ベンゾジアゼピン系と比較して、筋弛緩作用や抗不安作用が少なく、依存性や反跳性不眠のリスクも低いと考えられています。主に催眠作用がメインです。
  • メリット: ベンゾジアゼピン系のデメリットとされる筋弛緩作用やそれに伴うふらつき、転倒リスクが比較的低いとされます。依存性も比較的低いと言われています。
  • デメリット: ベンゾジアゼピン系と同様に健忘などの副作用が起こる可能性はあります。また、超短時間作用型が中心のため、中途覚醒や早朝覚醒にはあまり適さない場合があります。

非ベンゾジアゼピン系の主な薬剤名(ゾルピデムなど)

主に寝つきの悪さに使用される超短時間型の薬剤が多いです。

  • ゾルピデム(商品名:マイスリー)
  • ゾピクロン(商品名:アモバン)
  • エスゾピクロン(商品名:ルネスタ)※ゾピクロンの改良版で、苦味が少ないとされます。

メラトニン受容体作動薬

メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンで、「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、体内時計を調整し自然な眠りを誘う働きがあります。メラトニン受容体作動薬は、このメラトニンの働きを補強することで睡眠を改善します。

メラトニン受容体作動薬の作用と特徴

  • 作用: 脳内のメラトニン受容体(MT1受容体、MT2受容体)に結合し、メラトニンと同様の作用を発揮します。これにより、生体リズムを整え、自然な眠気を引き起こします。
  • 特徴: ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系のように脳の活動を直接抑制するのではなく、体内時計に働きかけて自然な眠りをサポートするため、依存性や離脱症状のリスクが非常に低いとされています。催眠作用は比較的穏やかです。
  • メリット: 依存性や耐性がほとんどなく、長期使用しやすい薬剤です。高齢者にも比較的安全に使用できるとされています。体内時計の乱れによる不眠(例:時差ボケ、交代勤務)にも有効な場合があります。
  • デメリット: 即効性はありません。服用してから効果が現れるまでに時間がかかるため、主に体内時計の調整を通じて不眠を改善することを目指します。そのため、一時的な不眠や強い不眠にはあまり向かない場合があります。また、効果の感じ方には個人差が大きいです。

メラトニン受容体作動薬の主な薬剤名

  • ラメルテオン(商品名:ロゼレム)

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシンは、脳の視床下部から分泌される神経伝達物質で、覚醒状態の維持に関与しています。オレキシン受容体拮抗薬は、このオレキシンの働きをブロックすることで、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行しやすくする新しいタイプの睡眠導入剤です。

オレキシン受容体拮抗薬の作用と特徴

  • 作用: 脳内のオレキシン受容体(OX1受容体、OX2受容体)に結合し、オレキシンの結合を阻害することで、覚醒系の働きを抑制します。
  • 特徴: これまでの睡眠導入剤とは異なる作用機序を持ちます。自然な睡眠・覚醒メカニズムに働きかけるため、ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系に見られる筋弛緩作用やそれに伴うふらつき、依存性、離脱症状のリスクが比較的低いと考えられています。
  • メリット: これまでの薬で効果が不十分だった場合や、依存性や副作用のリスクを避けたい場合に選択肢となります。自然な眠りへの移行をサポートすることが期待されます。
  • デメリット: 比較的新しい薬のため、長期使用に関するデータは他の系統に比べてまだ少ないです。悪夢や金縛り、入眠時幻覚などの副作用が報告されています。効果が現れるまでに少し時間がかかる場合があるため、超短時間型のような即効性は期待できないことがあります。

オレキシン受容体拮抗薬の主な薬剤名

  • スボレキサント(商品名:ベルソムラ)
  • レンボレキサント(商品名:デエビゴ)

その他(バルビツール酸系など)

過去にはバルビツール酸系の睡眠薬が広く使用されていましたが、少量でも重篤な呼吸抑制を引き起こすリスクが高く、依存性も非常に強いことから、現在ではてんかんや麻酔など限定的な場合を除いて不眠症の治療に用いられることはほとんどありません。

この他、抗うつ薬や抗精神病薬の一部に、副作用として眠気をもたらす性質を利用して、不眠治療に用いられる場合があります。これらは不眠の原因に underlying disease(背景にある病気)がある場合に有効なことがあります。また、一部の抗ヒスタミン薬(市販の睡眠改善薬の主成分)にも眠気を誘う作用がありますが、これらはあくまで一時的な不眠に対する対処であり、慢性の不眠症治療には適していません。

睡眠導入剤の強さについて

「この睡眠薬は強いですか?弱いですか?」という疑問を持つ方は多いですが、睡眠導入剤の「強さ」を単純に比較することは難しいです。なぜなら、薬の効果は「作用時間」「作用機序(効き方)」「用量」「個人の体質や不眠の原因」など様々な要因によって異なるからです。

  • 作用時間: 超短時間型や短時間型は「早く効いて早く切れる」ため、寝つきを良くする効果は強くても、睡眠を持続させる効果は限定的です。一方、長時間型は「ゆっくり効いて長く効く」ため、寝つきの改善効果は穏やかでも、睡眠を持続させる効果は強いと言えます。
  • 系統: ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系は脳の活動を抑制する作用が比較的強力なため、催眠効果を実感しやすいかもしれません。一方、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は自然な眠りをサポートするタイプであり、効果の発現が穏やかなため、「効きが弱い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、これは「強さ」ではなく「効き方の違い」です。
  • 用量: 同じ薬剤でも、用量を増やせば効果は強くなる傾向がありますが、同時に副作用のリスクも高まります。

医師は、「強い薬」を処方するのではなく、患者さんの不眠のタイプ(寝つきが悪いのか、夜中に目が覚めるのかなど)、不眠の期間や程度、年齢、体の状態(持病や併用薬の有無)などを総合的に判断し、最適な薬剤と用量を選択します。効果が不十分な場合でも、安易に用量を増やしたり、複数の種類の薬を併用したりするのではなく、不眠の原因を再評価したり、異なる系統の薬剤に変更したりするなど、慎重な調整が行われます。

睡眠導入剤の副作用と注意点

睡眠導入剤は不眠を改善する有効な手段ですが、いくつかの副作用や注意点があります。医師から処方された薬を使用する際には、必ず説明をよく聞き、正しく服用することが重要です。

依存性について

ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤は、長期連用により依存性が形成されるリスクが比較的高いです。依存性が形成されると、薬を中止したり減量したりする際に、不眠が悪化する(反跳性不眠)、不安、手の震え、動悸、吐き気などの離脱症状が現れることがあります。

非ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤は、ベンゾジアゼピン系と比較して依存性や離脱症状のリスクは低いとされていますが、まったくないわけではありません。メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は、依存性や離脱症状のリスクが非常に低いと考えられています。

依存性を避けるためには、医師の指示通りに服用し、自己判断で用量を変えたり、急に中止したりしないことが重要です。可能な限り短期間の使用にとどめることが望ましいですが、長期使用が必要な場合でも、定期的に医師の診察を受け、漫然とした使用にならないよう注意が必要です。

持ち越し効果(翌日の眠気)

作用時間の長い睡眠導入剤ほど、翌朝に薬の効果が残り、眠気やだるさ、集中力の低下、ふらつきなどの症状(持ち越し効果)が現れやすくなります。特に高齢者では薬の代謝が遅くなるため、持ち越し効果が出やすい傾向があります。

持ち越し効果が出ると、日中の活動に支障をきたしたり、自動車の運転など危険を伴う作業中の事故につながったりするリスクがあります。もし持ち越し効果を感じる場合は、医師に相談し、用量の調整や作用時間の短い薬剤への変更などを検討してもらいましょう。

その他副作用

睡眠導入剤の種類や個人差によって、以下のような様々な副作用が現れる可能性があります。

  • 頭痛、めまい、吐き気
  • ふらつき、転倒: 筋弛緩作用のある薬剤で起こりやすいです。特に高齢者で注意が必要です。
  • 一過性前向性健忘: 服用後にすぐに寝なかった場合に、薬が効いている間の出来事を覚えていないという状態です。ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の超短時間型・短時間型で起こりやすいとされます。服用したらすぐに寝るようにすることが重要です。
  • 奇異反応: 興奮、多弁、攻撃性、せん妄など、通常とは逆の精神症状が現れることがあります。稀ですが、注意が必要です。
  • 悪夢、金縛り、入眠時幻覚: オレキシン受容体拮抗薬で報告されることがあります。
  • 呼吸抑制: 非常に稀ですが、特に呼吸器系の持病がある方や、他の呼吸抑制作用のある薬剤(アルコールを含む)と併用した場合にリスクが高まります。

これらの副作用は、薬の種類、用量、個人の体質などによって異なります。気になる症状が現れた場合は、自己判断せず必ず医師や薬剤師に相談してください。

市販薬の睡眠改善薬について

ドラッグストアなどで手軽に購入できる「睡眠改善薬」は、医師の処方が必要な「睡眠導入剤(処方薬)」とは異なります。

処方薬との違い

項目 処方薬の睡眠導入剤 市販薬の睡眠改善薬
有効成分 ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、
メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬など
ジフェンヒドラミンなどの抗ヒスタミン薬
作用機序 GABA系、メラトニン系、オレキシン系など、
様々なメカニズムで睡眠・覚醒に作用
脳のヒスタミンH1受容体をブロックし、
眠気を誘発
効果の強さ 比較的強力で、様々な不眠タイプに対応できる 比較的穏やか
適応 慢性の不眠症や、様々な原因による不眠 一時的な不眠(寝つきが悪いなど)
購入方法 医師の処方箋が必要 薬剤師の説明を受けて購入可能
安全性 医師の診断に基づき、病状や体質に合わせて選択・管理される 一時的な使用を想定。副作用や
持病・併用薬との相互作用に注意が必要
依存性 一部の薬剤(ベンゾジアゼピン系など)でリスクあり 一般的に低いとされるが、
長期・高用量では注意が必要な場合も

市販薬の主な種類と特徴

市販の睡眠改善薬の有効成分は、ほとんどが「ジフェンヒドラミン塩酸塩」という成分です。これは、アレルギー症状を抑えるために使用される抗ヒスタミン薬の一種ですが、副作用として強い眠気を引き起こす性質があります。この眠気を逆利用して、一時的な不眠(特に寝つきの悪さ)の改善に用いられます。

  • 特徴: 服用後比較的速やかに眠気を誘発します。ドラッグストアで手軽に購入できる点がメリットです。
  • 注意点: あくまで「一時的な不眠」に対する対処薬であり、2~3回使用しても効果がない場合や、慢性の不眠症に使用することは推奨されません。また、抗ヒスタミン作用により、口の渇き、排尿困難、便秘、緑内障や前立腺肥大症がある方では症状が悪化するなどの副作用が現れる可能性があります。日中の眠気を引き起こすこともあります。

市販薬で対応できるのは、旅行や環境の変化による一時的な不眠など、原因がはっきりしており短期間で改善が見込める場合のみです。不眠が続く場合や、原因が不明な場合は、必ず医療機関を受診し、医師に相談することが重要です。

自分に合った睡眠導入剤の選び方

自分に合った睡眠導入剤を選ぶためには、まずご自身の不眠のタイプや体の状態を正確に把握し、医師に相談することが不可欠です。

不眠のタイプ別の選び方(あくまで目安)

不眠は、主に以下の4つのタイプに分けられます。

  1. 入眠困難: 寝つきが悪く、寝付くまでに30分~1時間以上かかる。
    適したタイプ(目安):超短時間型、短時間型(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系)
  2. 中途覚醒: 夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか眠れない。
    適したタイプ(目安):短時間型、中時間型(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系)
  3. 早朝覚醒: 予定より早く目が覚めてしまい、その後眠れない。
    適したタイプ(目安):中時間型、長時間型(ベンゾジアゼピン系、オレキシン受容体拮抗薬)
  4. 熟眠障害: 眠っている時間は十分なのに、熟睡感がない。
    適したタイプ(目安):必ずしも睡眠導入剤が適しているとは限らず、不眠の原因(睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群など)を特定し、その治療を行うことが優先されます。睡眠導入剤を使用する場合は、睡眠の質を改善する効果が期待できるオレキシン受容体拮抗薬などが検討されることがあります。

また、体内時計の乱れ(交代勤務、時差ボケなど)による不眠には、体内時計を調整するメラトニン受容体作動薬が適している場合があります。

医師に相談する重要性

上記はあくまで一般的な目安であり、どのタイプの睡眠導入剤が最適かは、不眠のタイプだけでなく、以下の様々な要因を考慮して医師が判断します。

  • 不眠の程度や期間
  • 年齢: 高齢者では薬の代謝が遅く、副作用が出やすいため、少量から開始したり、作用時間の短い薬を選択したりするなど、より慎重な配慮が必要です。
  • 持病の有無: 呼吸器疾患、心疾患、肝機能障害、腎機能障害、緑内障、前立腺肥大症などがある場合、使用できない薬剤や注意が必要な薬剤があります。
  • 現在服用している他の薬剤: 飲み合わせによっては、薬の効果が強くなりすぎたり、弱くなったり、予期せぬ副作用が現れたりする可能性があります。
  • アレルギー歴
  • ライフスタイル: 日中に眠気が出ると困る仕事をしているかなど。

自己判断で市販薬を使い続けたり、人からもらった薬を使用したり、インターネットなどで個人輸入した薬を使用したりすることは非常に危険です。必ず医療機関を受診し、医師に不眠の原因を診断してもらい、ご自身の状態に合った適切な睡眠導入剤を処方してもらうようにしましょう。医師は、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善指導(睡眠衛生指導)など、様々なアプローチで不眠の改善をサポートしてくれます。

睡眠導入剤に関するQ&A

睡眠導入剤に関してよくある疑問にお答えします。

睡眠導入剤の強い順は?

前述の通り、睡眠導入剤の「強さ」を単純に比較するのは難しいです。作用時間、作用機序、用量、個人の反応によって効果の出方が異なるためです。一般的には、脳の活動をより強く抑制するベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系の薬剤は、催眠効果を実感しやすいという意味で「強く効く」と感じる方が多いかもしれません。しかし、これは同時に依存性や副作用のリスクも高くなる傾向があります。メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬は、自然な眠りをサポートするタイプであり、効果の発現が穏やかなため、「マイルド」と感じる方もいるかもしれません。重要なのは、薬の「強さ」ではなく、ご自身の不眠のタイプや体の状態に「合っているか」です。

睡眠薬で一番処方される薬は何ですか?

どの睡眠薬が一番処方されるかは、医療機関の方針や医師の考え方、患者さんの状態によって異なります。ただし、近年ではベンゾジアゼピン系のデメリット(依存性、副作用リスク)が注目されており、比較的依存性や副作用が少ないとされる非ベンゾジアゼピン系(ゾルピデム/マイスリーなど)や、新しい系統であるメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン/ロゼレム)、オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント/ベルソムラ、レンボレキサント/デエビゴ)などが選択されることが増えています。特に、高齢者には非ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬が優先される傾向があります。

サイレースを処方される人はどのような人ですか?

サイレース(一般名:フルニトラゼパム)は、ベンゾジアゼピン系の中でも作用時間が長く、比較的強力な催眠作用を持つ薬剤です。また、抗不安作用も強いとされています。以前は比較的広く使用されていましたが、依存性や持ち越し効果のリスクが高く、特に悪用(犯罪への使用など)されるケースもあるため、現在は医療現場で処方される機会は減少し、慎重な使用が求められています。

サイレースが処方されるのは、他の作用時間の短い薬剤や他の系統の薬剤では十分な効果が得られない、重度の不眠症の方や、強い不安を伴う不眠の方など、限定的なケースが多いと考えられます。漫然とした長期連用は避けるべき薬剤であり、医師の指示を厳守して使用する必要があります。安易な使用や、譲渡・譲受は法律で厳しく規制されています。

まとめ

睡眠導入剤には、作用時間や薬の系統によって非常に多くの種類があり、それぞれ特徴や効果、副作用が異なります。ご自身の不眠のタイプ(寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めるなど)や、年齢、持病、併用薬などを考慮し、最適な薬剤を選択することが重要です。

睡眠導入剤の主な分類 主な特徴 適した不眠のタイプ(目安) 注意点
作用時間別
超短時間型 早く効いて早く切れる 入眠困難 健忘に注意、服用後すぐ寝る
短時間型 やや長く効く 入眠困難、中途覚醒(初期) 比較的広く使われる
中時間型 長く効く 中途覚醒、早朝覚醒 持ち越し効果の可能性あり
長時間型 最も長く効く 早朝覚醒、日中の不安を伴う不眠 持ち越し効果が出やすい、日中の活動に影響
系統別
ベンゾジアゼピン系 GABA作用増強、即効性、鎮静・抗不安作用も強い 幅広いタイプに対応 依存性・耐性、筋弛緩、健忘リスク
非ベンゾジアゼピン系 GABA作用増強(選択的)、催眠作用主体 主に入眠困難、中途覚醒(初期) 依存性・副作用リスクは比較的低いとされる、健忘リスクはあり
メラトニン受容体作動薬 メラトニン作用補強、体内時計調整 入眠困難、体内時計の乱れによる不眠 依存性・離脱症状リスク低い、即効性はなし、効果は穏やか
オレキシン受容体拮抗薬 オレキシン作用抑制、覚醒系ブロック 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒 新しい作用機序、依存性・離脱症状リスク低いとされる、悪夢などの副作用の可能性
その他(抗ヒスタミン薬) 脳のヒスタミンをブロック、眠気を誘発(市販薬) 一時的な不眠 慢性の不眠には不適、口渇などの副作用、日中の眠気

市販の睡眠改善薬は、あくまで一時的な不眠に対する対処であり、慢性の不眠症には適していません。不眠が続く場合や、市販薬で効果がない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。

医師は、あなたの不眠の原因を詳しく調べ、最適な睡眠導入剤の種類や用量を判断してくれます。薬物療法だけでなく、睡眠環境の改善や生活習慣の見直しなど、様々なアドバイスも受けることができます。不眠は放置すると心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。一人で悩まず、まずは専門家である医師に相談することから始めてみましょう。


免責事項:この記事は、睡眠導入剤の種類に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や治療法については、必ず医師の診断を受け、その指示に従ってください。この記事の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当サイトは責任を負いません。

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