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不安や恐怖症を克服!暴露療法(エクスポージャー)とは?効果とやり方

「暴露療法」という言葉を聞いたことがありますか? 不安や恐怖を感じる状況や対象にあえて身を置くことで、それらを克服しようとする心理療法です。
この記事では、暴露療法とは何か、その効果や種類、具体的なやり方、どのような心の悩みに適用されるのか、そして治療を受ける上での注意点などを詳しく解説します。

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目次

暴露療法とは?定義と基本原理

暴露療法(エクスポージャー療法とも呼ばれます)とは、不安や恐怖を感じる特定の状況、場所、物、あるいは記憶など(これらを「不安トリガー」と呼びます)に、安全な環境下で段階的または集中的に直面することで、不安や恐怖に「慣れる」ことを目指す行動療法の一種です。

この療法の基本原理は、「学習理論」に基づいています。私たちが何かを怖いと感じるとき、その対象を避けることで一時的に不安は和らぎますが、根本的な恐怖心は残ったまま、むしろ強化されてしまうことがあります。
暴露療法では、不安トリガーにあえて繰り返し直面し、「実際には恐れていたような悪い結果は起こらない」という経験を重ねることで、不安や恐怖が自然と弱まっていくことを学習します。これは「消去学習」や「馴化(じゅんか)」と呼ばれるプロセスです。

暴露療法の目的と期待できる効果

暴露療法の主な目的は、不安や恐怖によって制限されている日常生活や社会活動を取り戻し、生活の質(QOL)を向上させることです。具体的に期待できる効果としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 特定の対象や状況に対する不安・恐怖感の軽減
  • 回避行動の減少
  • 自己効力感の向上
  • 不安や恐怖に対する誤った認知の修正
  • 生理的な反応(動悸、発汗など)の低減

これらの効果を通じて、患者さん自身が不安や恐怖をコントロールできる感覚を得て、より自由で充実した生活を送れるようになることを目指します。

暴露療法の主な種類と具体的なやり方

暴露療法にはいくつかの種類があり、対象となる疾患や個人の状態、不安の特性に合わせて、治療者と相談しながら最適な方法が選択されます。

段階的暴露療法(系統的脱感作法)

段階的暴露療法は、最も一般的に用いられる方法の一つで、系統的脱感作法とも呼ばれます。
まず、患者さんと治療者が協力して、不安を感じる状況や対象をリストアップし、それらを不安の強さの順に並べた「不安階層表(不安階層リスト)」を作成します。
そして、不安度の低いものから順番に、実際に直面(曝露)していきます。各段階で不安が十分に低減するまで繰り返し行い、慣れてきたら次の段階に進みます。
多くの場合、曝露と並行してリラクセーション法(深呼吸、筋弛緩法など)を習得し、曝露中に高まる不安を自分でコントロールできるように練習します。

やり方の例(高所恐怖症の場合):

  • 低い段差に立つ
  • 窓から1階下の景色を見る
  • エスカレーターに乗る
  • 数階建ての建物のベランダに出る
  • 観覧車に乗る

フラッディング法

フラッディング法(洪水療法とも呼ばれます)は、不安階層表の高いレベルの刺激、あるいは最も強い不安を感じる刺激に、最初から長時間直面する方法です。例えば、極度の高所恐怖症の人に対し、安全を確保した上で、いきなり高層ビルの展望台に長時間滞在させるといった形です。
強い不安反応が一気に引き起こされますが、その不安が時間とともに自然に減少していくことを体験的に学習します。非常に強力な効果が期待できる反面、患者さんにとっては大きな苦痛を伴うため、実施には慎重な判断と、治療者との強固な信頼関係、そして十分な動機付けが必要です。必ず専門家の指導のもとで行われます。

イメージ暴露療法

イメージ暴露療法は、実際に不安トリガーに直面するのではなく、それを頭の中で鮮明にイメージ(想像)することで曝露を行う方法です。特に、過去のトラウマ体験(PTSDの原因となるような出来事)や、現実には再現が難しい状況(例:飛行機事故を恐れる人が実際に事故に遭う状況など)に対する曝露に適しています。
治療者は、患者さんがトラウマ記憶や恐怖イメージを詳細に語ることを促し、その際に生じる感情や身体感覚に注意を向けさせます。安全な治療環境の中で繰り返し想起することで、徐々に苦痛が和らいでいくことを目指します。

VRS(仮想現実暴露療法)

VRS(Virtual Reality Exposure Therapy:仮想現実暴露療法)は、コンピュータグラフィックスで作られた仮想現実(VR)空間を利用して行う暴露療法です。VRゴーグルなどを装着することで、まるで現実のような没入感のある環境で、安全かつコントロールされた形で不安トリガーに直面することができます。
例えば、飛行機恐怖症の方向けにリアルな飛行機の離着陸や飛行中のVR環境を再現したり、対人恐怖のある方向けに大勢の前でスピーチをするVR環境を再現したりします。現実での曝露が困難な場合や、より安全に、より段階的に刺激を調整したい場合に有効な選択肢となります。

暴露療法が適用される主な疾患

暴露療法は、様々な不安障害やストレス関連障害の治療に有効性が示されています。

強迫性障害における暴露反応妨害法(ERP)

強迫性障害(OCD)の治療では、暴露反応妨害法(Exposure and Response Prevention: ERP)という特殊な形の暴露療法が中心となります。

強迫性障害は、不合理だとわかっていても頭から離れない考え(強迫観念)と、それによって生じる不安を打ち消すために繰り返される行為(強迫行為)を特徴とします。

ERPでは、まず患者さんが不安を感じる状況や対象(汚いと思うものに触れる、鍵を確認しないなど)にあえて直面し(暴露)、その際にいつも行っている強迫行為(手を何度も洗う、何度も鍵を確認するなど)をしないように我慢します(反応妨害)。これにより、「強迫行為をしなくても不安は時間とともに自然に減っていく」「恐れていたことは実際には起こらない」ということを学習します。

非常に効果が高い治療法ですが、実践には苦痛を伴うため、専門家による適切な指導とサポートが不可欠です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDは、命の危険を感じるような強いショック体験(トラウマ)の後に、その記憶がフラッシュバックしたり、トラウマに関連する刺激を極端に避けたりするなどの症状が現れる疾患です。

PTSDに対する暴露療法では、主にイメージ暴露療法や、トラウマに関連する現実の場所や状況への段階的な暴露(in vivo exposure)が行われます。トラウマ記憶に安全な環境で向き合うことで、恐怖や無力感といった感情を処理し、記憶にまつわる苦痛を和らげることを目指します。

パニック障害・広場恐怖症

パニック障害は、予期しないパニック発作(動悸、息苦しさ、めまいなどの強い身体症状を伴う強烈な恐怖感)を繰り返し経験する疾患です。広場恐怖症は、パニック発作が起きそうな場所や、発作が起きた時に逃げられない・助けが得られないような特定の状況(例:電車、人混み、閉鎖空間など)を恐れて避けるようになる状態を指し、パニック障害に伴って発症することが多いです。

これらの疾患に対しては、パニック発作の身体感覚そのものに慣れるための曝露(例:わざと息を速くしてみる、ぐるぐる回ってみるなど)や、避けている場所や状況に対する段階的な暴露療法が有効です。

社交不安障害(SAD)

社交不安障害(SAD)は、他者から注目される可能性のある社交場面(人前で話す、会食する、初対面の人と会話するなど)で、恥をかいたり否定的な評価を受けたりすることに強い不安や恐怖を感じ、そうした場面を避けようとする疾患です。

SADに対する暴露療法では、苦手な社交場面をリストアップし、段階的にそれらの場面に身を置いていくことで、対人恐怖を克服していきます。ロールプレイング形式で行われることもあります。

暴露療法と認知行動療法の違い

暴露療法と認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)は、しばしば関連付けて語られますが、両者は異なる概念です。

認知行動療法(CBT)は、私たちの気分や行動が、出来事そのものではなく、その出来事をどのように受け止めるか(認知)によって影響されるという考えに基づき、不適切な認知のパターンをより現実的で適応的なものに変え、それによって問題となる行動や感情を改善していく心理療法の総称です。

暴露療法は、この認知行動療法という大きな枠組みの中で用いられる具体的な技法の一つです。特に、不安や恐怖といった感情と、それに伴う回避行動に焦点を当て、直接的な体験を通じて「行動」を変えていくアプローチと言えます。

CBTでは、暴露療法だけでなく、認知再構成法(物事の捉え方を変える練習)、問題解決技法、リラクセーション法など、様々な技法が組み合わせて用いられます。暴露療法を行う際にも、多くの場合、CBTの枠組みの中で、例えば「この状況は危険だ」という認知がどれだけ現実的かを見直す作業と並行して行われます。

特徴 暴露療法 認知行動療法 (CBT)
位置づけ CBTの主要な技法の一つ 思考(認知)と行動の両面に働きかける心理療法の総称
主な焦点 不安や恐怖を感じる対象や状況への「行動的」な直面と慣れ 思考パターン、感情、行動の相互作用。特に「認知の歪み」の修正と行動変容
主な手法 段階的暴露、フラッディング、イメージ暴露、VRS、暴露反応妨害法(ERP)など 暴露療法、認知再構成法、問題解決技法、リラクセーション法、行動活性化など、多様な技法を組み合わせる
目的 特定の不安や恐怖の克服、回避行動の減少 幅広い精神疾患や心理的問題に対する症状の改善、対処能力の向上、再発予防

簡単に言えば、暴露療法はCBTという大きな道具箱の中の一つの強力なツールと理解すると良いでしょう。

暴露療法の具体的な例(疾患別)

実際に暴露療法がどのように行われるのか、フィクションの例をいくつかご紹介します。

  • 強迫性障害(汚染恐怖):Aさんの場合
    • お悩み: 外の物に触れると病気になるのではないかと恐れ、1日に何十回も手を洗ってしまう。ドアノブや電車のつり革に触れない。
    • 暴露療法の進め方(ERP):
      1. 治療者と一緒に、不安を感じる「汚いと思うもの」や「触りたくない場所」をリストアップし、不安の強さで順位付けする(不安階層表の作成)。
      2. 比較的楽なものから挑戦。例えば、「自分の部屋のドアノブに触れ、その後30分間手を洗わない」という課題を設定。
      3. 最初は強い不安を感じるが、時間とともに不安が自然に和らぐことを体験する。
      4. 徐々に難易度を上げ、「公園のベンチに座る」「公共のトイレのドアに触れる(その後、手洗いは1回だけにする)」といった課題に挑戦していく。
      5. 最終的には、強迫観念にとらわれず、日常生活をスムーズに送れるようになることを目指す。
  • PTSD(交通事故のトラウマ):Bさんの場合
    • お悩み: 半年前に交通事故に遭ってから、車に乗るのが怖い。事故の場面がフラッシュバックし、夜も眠れない。
    • 暴露療法の進め方(イメージ暴露療法と段階的暴露療法):
      1. まず、安全な治療室で、治療者のサポートのもと、事故の記憶を詳細に言葉で語る(イメージ暴露)。その時の感情や身体感覚にも注意を向けさせる。これを繰り返すことで、記憶に伴う苦痛を徐々に和らげる。
      2. 次に、車に対する恐怖を克服するため、段階的に車に慣れていく。「車の写真を見る」「駐車場で車を眺める」「助手席に5分座る」「近所を短時間運転する(最初は治療者同乗)」など。
      3. 運転できる距離や時間を少しずつ延ばしていく。
  • 社交不安障害(スピーチ恐怖):Cさんの場合
    • お悩み: 人前で話すことに極度の緊張を感じる。会議での発言やプレゼンテーションを避け続けている。
    • 暴露療法の進め方(段階的暴露療法、ロールプレイ):
      1. 不安を感じる社交場面をリストアップし、段階を設定する。
      2. 最初は治療者との1対1のロールプレイで、簡単な自己紹介をする。
      3. 次に、少人数のグループ(模擬的な聴衆)の前で短いスピーチをする。
      4. 徐々に人数を増やしたり、スピーチの時間を長くしたりする。
      5. 「失敗しても大丈夫」「人は自分が思うほど自分のことを見ていない」といった気づきを得ながら、自信をつけていく。

これらの例はあくまで一例であり、実際には個々の状況に合わせて、より細かく計画が立てられます。

暴露療法の注意点とリスク

暴露療法は効果の高い治療法ですが、いくつかの注意点と、場合によってはリスクも伴います。

「つらい」「逆効果」「失敗」と感じる理由

暴露療法を開始した初期には、一時的に不安が増大するため、「つらい」と感じるのは自然な反応です。しかし、以下のような場合には、「逆効果だった」「失敗した」と感じてしまうことがあります。

  • 不安への準備不足・急すぎる曝露: 十分な説明や準備がないまま、あるいは不安階層を無視して強すぎる刺激に直面すると、圧倒されてしまい、かえって恐怖心が強まることがあります。
  • 自己流での実施: 専門家の指導なしに自己判断で暴露療法を行うと、適切な方法やペース配分がわからず、効果が得られないばかりか、症状が悪化する危険性があります。
  • 治療者との信頼関係の不足: 安心して不安な体験に取り組むためには、治療者への信頼感が不可欠です。不信感があると、治療に積極的に臨めません。
  • 曝露が不十分・中断してしまう: 一時的に不安が高まったところで曝露をやめてしまうと、「やっぱりダメだった」というネガティブな学習が強化されてしまう可能性があります。不安が自然に下がるまで続けることが重要です。
  • 目標設定の不適切さ: 最初から高すぎる目標を設定すると、達成できずに挫折感を味わいやすくなります。
  • 他の精神疾患の併存や重症度: うつ症状が重い場合や、他の精神疾患が複雑に絡み合っている場合など、暴露療法が適さない、あるいは慎重な導入が必要なケースもあります。

安全に暴露療法を進めるために

暴露療法を安全かつ効果的に進めるためには、以下の点が重要です。

  • 必ず専門家の指導のもとで行う: 精神科医や臨床心理士など、訓練を受けた専門家によるアセスメント(評価)と治療計画が必要です。
  • 十分な説明と同意(インフォームド・コンセント): 治療の目的、進め方、期待される効果、起こりうる苦痛やリスクについて、事前に十分な説明を受け、納得した上で治療を開始することが大切です。
  • 治療者との良好な信頼関係を築く: 何でも話し合える、安心して任せられると感じる治療者を見つけることが成功の鍵となります。
  • 丁寧なアセスメントと目標設定: 個々の状態に合わせて、無理のない、具体的な目標を設定します。不安階層表の作成は慎重に行います。
  • リラクセーション法などの対処スキルの習得: 曝露中に高まる不安を自分でコントロールするためのスキルを事前に身につけておくと、安心して取り組みやすくなります。
  • スモールステップで進める: 最初は小さな成功体験を積み重ねることが重要です。焦らず、自分のペースで進めます。
  • 曝露の記録と振り返り: 曝露を行った日時、内容、その時の不安の度合い、実際に何が起こったかなどを記録し、治療者と共有することで、客観的に進捗を確認し、次のステップを計画するのに役立ちます。
  • 体調や精神状態への配慮: 心身ともにコンディションが良い時に行うのが望ましいです。無理は禁物です。
  • 治療からのドロップアウトを防ぐ工夫: 治療の途中でつらくなって中断してしまわないよう、治療者は動機付けを高め、不安を乗り越えるサポートを行います。

暴露療法を受けるには?専門家への相談

暴露療法は専門的な知識と技術を要する治療法です。もし、あなたが不安や恐怖に悩んでおり、暴露療法に関心がある場合は、自己判断で試みるのではなく、まずは精神科や心療内科の医師、あるいはカウンセリング機関の臨床心理士・公認心理師に相談しましょう。

専門家は、あなたの症状や状態を詳しく評価(アセスメント)した上で、暴露療法が適切かどうか、もし適切であればどのような形で進めていくのが良いかを判断してくれます。また、暴露療法以外の治療法(薬物療法や他の心理療法など)がより適している場合や、それらと組み合わせる必要がある場合もあります。

治療法の選択は、あなたと専門家がよく話し合い、納得して決めることが最も大切です。一人で抱え込まず、専門家の力を借りて、つらい症状の改善を目指しましょう。


*免責事項:この記事は、暴露療法に関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断、治療を代替するものではありません。精神的な不調や疾患の治療については、必ず専門の医療機関にご相談ください。*

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