コラム

WAISとは? 検査でわかること・4つの指標・受ける目的や限界

「努力をしているのに、なかなかうまくいかない」
「職場になじめず、いつまでも疎外感を感じる」
「どうも、得意不得意の差が激しいように感じる」
「どんな仕事が向いているのだろうか」
「自分自身を深く知りたい」
「もしかして発達障害かも……」

近年、知能は複数の知的能力の集合であるという考え方が有力になっています。
《ウェクスラー成人知能検査(WAIS)》は、そのような知能を多面的に測定するために設計された検査で、世界中で広く用いられています。1955年に発表されたこの検査は、さまざまな精神的能力を評価することで、個人の強みと弱みについての洞察を提供します。

この記事では、《ウェクスラー成人知能検査(WAIS)》の内容や特徴、利点や限界などについて解説します。

ウェクスラー成人知能検査(WAIS)とは

《ウェクスラー成人知能検査(WAIS)》とは、心理学者デビッド・ウェスクラーによって1955年に発表された成人用の知能検査です。WAISは、“Wechsler Adult Intelligence Scale”の略称で、「ウェイス」と読みます。

WAISは、16歳0カ月~90歳11カ月の青年/成人を対象とした、知能と認知能力を測定するための検査です。複数指標のスコアの高低から、知能の全体的な水準と、かたよりの特徴を導き出すことが可能です。
現在、日本で用いられているWAISは、第4版にあたるWAIS-IV(ウェイス・フォー)です。日本版は海外版を単純に翻訳したものではなく、日本語環境に応じた課題の再編・再構成が行われたものです。

WPPSIとWISC:バリエーション

ウェクスラー式知能検査は、対象年齢に応じてバリエーションが存在しています。

  • WPPSI(ウィプシ):幼児用(2歳6カ月~7歳3カ月)
  • WISC(ウィスク):児童用(5歳0カ月~16歳11カ月)

それぞれ対象年齢に重複があります。どちらを使うかは発達の度合いや検査目的に応じて専門家(医師や公認心理師など)が判断します。

WAISの特徴

WAISは、受検者と同年代の人々と比較可能な総合得点(IQ)を提供します。
また、複数領域を検査するため、知能の個人内差(得意不得意)も測定できます。個人内差をはかることで検査時点での個人の特性を把握し、心理・教育・就労・福祉的な支援に役立てることが可能になります。
検査時間は1時間以上、長ければ2時間くらいかかります。
なお、WAISでは言語能力や文化的背景が検査結果に影響するため、本人が十分に理解・表現できる言語で実施することが基本です。

WAISを受ける目的

WAISを受ける理由や目的はさまざまで、たとえば以下のような場面で利用されます。

  • 自分自身の得意不得意を知りたい
  • 仕事や勉強で困難を感じている
  • 向いている仕事や、能力を生かしやすい環境を知りたい
  • 客観的な自己分析データがほしい
  • 発達障害の可能性について知りたい

なお、WAISの結果だけで発達障害の診断がなされることはありません。あくまで補助資料として用いられます。

全検査IQと4つの指標

WAIS-IVでは、複数の検査で知能を多面的に評価します。
検査結果から、4つの指標得点(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)と、総合的な全検査IQを算出します。

全検査IQ(FSIQ)

WAIS-IVで測定される知的能力の全体的な水準を表します。
WAIS-IVは(ほかの知能検査と同じく)知能のあらゆる面を網羅しているわけではなく、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4指標を総合して数値化したものです。

言語理解指標(VCI)

言葉の理解、言葉による推理、意見や考えを言葉で伝える能力です。
言葉の共通点の把握、教養的な知識量など、言語を使った思考力や知識の深さに関わる指標です。
この指標が高い人は、抽象的な概念を理解し、豊富な語彙でわかりやすく説明することが得意な可能性があります。

知覚推理指標(PRI)

目で見た情報を、論理的に処理する能力です。
パズルを解いたり、図形の法則や関係性を導き出したりなど、視覚的・空間的な分析や推論に関わる指標です。
この指標が高い人は、ジグソーパズル、地図やグラフの読み取りが得意な可能性があります。

ワーキングメモリー指標(WMI)

一時的に情報を維持し、頭の中で処理・操作する能力のことです。
短期の記憶力や注意力、情報を処理する能力に関わる指標です。
この指標が高い人は、暗算や口頭による指示を実行することが得意な可能性があります。

処理速度指標(PSI)

単純な視覚情報を素早く正確に処理する能力です。
この指標が高い人は、黒板の文字を素早くノートに書き写したり、テストを時間内に仕上げたりすることが得意な可能性があります。

WAISの利点

WAISは、信頼性が高く、十分に確立した検査であるため、世界中で広く利用されています。
WAISの主な利点としては、以下のようなものがあげられます。

  • 自己理解:WAISは複数の指標によって知能を評価するため、自分自身の得意不得意を把握することにつながり、自己理解を深める手助けになります。
  • 個別化されたフィードバック:検査結果をもとに、専門家が個人に合わせたフィードバックやアドバイスを提供します。そのため、仕事・学習・日常生活などにおける個人の課題解決に役立てることができます。
  • 仕事や学習の方向性の指針:自分自身の強みと弱みを知ることで、仕事や学習における、自分の特性と、環境や方法との相性を考える際の参考になります。
  • 認知特性の把握:認知機能の特徴や得意不得意を把握することで、適切な支援や対処法を検討する際の参考になります。
  • 診断補助:WAISの結果は、発達障害などの診断や支援方針を検討する際の補助資料として活用されます。

WAISの限界

残念ながら完璧な検査はありませんから、WAISにも短所はあります。
WAISの限界には以下のようなものがあります。

  • ほかの知能検査と同様に、この検査は知能のすべての要素を網羅しているわけではありません。
  • この検査は相対的な指標にはなり得ますが、個人の能力や才能、潜在能力などを完全に把握できるものではありません。
  • この検査は、検査を受けた時点での認知能力を反映したものであり、ストレス・疲労・病気など一過性の要因による影響を排除できていない可能性があります。
  • この検査単独で、発達障害の診断ができるわけではありません。

品川メンタルクリニックのWAIS

当院はWAISの専門施設ではありませんので、初診を受ける際に直接WAISを予約することはできません。希望や診察内容を踏まえ、検査を受けることができます。
当院のWAISは、公認心理師がマンツーマンで検査を実施します。
結果レポートのお渡しは後日ご来院いただきます。その際、担当心理師がレポートの見方などを丁寧に解説します。このフィードバック面談では、結果内容についての質問以外にも、「日常でどう活かすか」といった相談も可能です。
検査からフィードバック面談までは、通常1~2週間程度です。

  • 所要時間:1時間~2時間程度
  • 料金:22,000円(税込)
  • 料金にはフィードバック面談および結果レポート1部の料金を含みます。

まとめ:WAISで得手不得手を知る

《ウェクスラー成人知能検査(WAIS)》とは、16歳0カ月~90歳11カ月の青年/成人を対象とした知能検査です。複数の検査を組み合わせて多面的に知能を評価するもので、4つの指標得点(言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度)と、総合的な全検査IQを算出します。
複数領域を検査するため、同年代との比較だけではなく、知能の個人内差(得意不得意)も測定できます。

WAISは、自分自身の得意不得意を把握することで、仕事や学習における自分自身の特性や、環境・方法との相性を考える際の参考にしたり、個人の課題解決や支援に役立てたりなど、さまざまに活用されています。
一方で、検査は知能のすべての要素を網羅しているわけではなく、個人のすべての特性を明らかにするものではありません。
当院でも必要に応じてWAISを行っています。

記事監修

院長 渡邊 真也

品川メンタルクリニック
院長 渡邊 真也

2008年大分大学医学部卒業。現在、品川メンタルクリニック院長。精神保健指定医。
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