「誰もいないはずなのに、人の姿が見える」「知り合いや家族が見える」といった経験は、ご本人にとってはもちろん、周りのご家族にとっても非常に不安で、どのように対応すれば良いか分からないと感じるかもしれません。
このような「実際には存在しないものが見える」という体験は、「幻視」と呼ばれる幻覚の一種です。
なぜ幻視、特に人が見えるという現象が起こるのでしょうか?そこには、いくつかの原因が考えられます。
この記事では、「幻覚で人が見える」ことの背景にある可能性のある病気や、病気以外の要因、そして大切な方やご自身に幻覚が見える場合の対処法について解説します。
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幻覚と幻視について
「幻覚」とは、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)のいずれかで、実際には存在しないものを知覚する体験です。
例えば、誰も話していないのに声が聞こえる(幻聴)、嫌な匂いがする(幻嗅)、触られていないのに触られているように感じる(幻触)などがあります。
幻覚の種類と幻視の特徴
幻覚の中でも、目で見える形で現れるものを「幻視」と呼びます。今回のテーマである「人が見える」という幻覚は、この幻視に該当します。
幻視の内容は人によって、また原因によって様々です。例えば、
具体的で鮮明な幻視: 知り合いや家族の顔がはっきり見える、見慣れた部屋の中に人が座っている、小さな子どもたちが遊んでいる、小動物や虫が見えるなど。レビー小体型認知症などでよく見られる特徴です。
漠然とした幻視: 人影や形だけが見える、色や光が見えるなど。統合失調症やせん妄などで見られる場合があります。
奇妙な幻視: 現実にはありえない生物や、意味不明な光景が見えるなど。統合失調症などで見られることがあります。
「人が見える」という幻視は、特に具体的で鮮明なものとして現れることが多いのが特徴です。
見えている人に対して、話しかけたり、一緒に何かをしたり、という反応が見られることもあれば、ただそこにいるのを眺めているだけで、特に気にしないといった反応が見られることもあります。
幻覚と錯覚の違い
幻覚と似た言葉に「錯覚」がありますが、これらは異なります。
幻覚: 実際には何も存在しないのに、何かを知覚することです。例えば、誰もいない部屋に人が立っているのが見える、という場合です。
錯覚: 実際に存在するものを誤って知覚することです。例えば、暗闇の中でハンガーにかかった服が人影のように見える、壁のシミが顔のように見える、といった場合です。
錯覚は比較的健康な人でも起こりうる現象ですが、幻覚は脳機能の異常や精神状態の変化と関連していることが多いため、区別することが重要です。特に認知症やせん妄の状態では、幻覚と錯覚の両方が見られることもあります。
幻覚(幻視)で人が見える主な原因となる病気
「幻覚で人が見える」という現象は、様々な病気の症状として現れることがあります。特に脳の機能障害や、精神状態の不安定さと関連が深いです。
ここでは、代表的な原因となる病気について解説します。
幻覚で人が見える病気とは
人が見える幻視は、特に特定のタイプの認知症や精神疾患、神経疾患でよく報告されます。また、全身の体調不良が脳機能に影響し、「せん妄」という状態を引き起こし、その症状として幻視が現れることもあります。
重要なのは、幻視が見えるという事実だけで病気を断定することはできないため、正確な診断には専門医の診察が必要だということです。
レビー小体型認知症による幻視
「人が見える」幻視の最も代表的な原因の一つが、レビー小体型認知症です。アルツハイマー型認知症に次いで多いタイプの認知症で、脳の神経細胞に「レビー小体」という異常なたんぱく質が蓄積することで起こります。
レビー小体型認知症の幻視の特徴
レビー小体型認知症の幻視は、非常に具体的で鮮明であることが大きな特徴です。
内容: 小さな子ども、動物(犬、猫、虫など)、知らない人、亡くなった家族や友人、部屋の隅にいる人影など、様々なものが見えます。特に「人が見える」という幻視は、本人にとって見慣れた環境(自宅の部屋など)に、そこにいるはずのない人がいる、といった形で現れることが多いです。
鮮明さ: まるでそこに実在するかのように、はっきりとした色や形、動きを伴って見えることが多いです。
本人の反応: 見えているものに対して、驚いたり怖がったりすることもありますが、多くの場合、比較的無関心で、そこに人がいることを自然に受け入れているように見えることがあります。話しかけたり、一緒に何かをしようとしたりすることもあります。
出現パターン: 夕方から夜にかけて見えやすくなる(薄暮症候群)傾向があります。また、日によって見えたり見えなかったり、内容が変化したりするなど、症状が変動しやすいことも特徴です。
レビー小体型認知症では、幻視の他にも、現実と幻覚・妄想の区別がつきにくくなる「認知の変動」、手足が震えたり動きが鈍くなったりする「パーキンソン症状」、寝ている間に夢の内容に合わせて体が動く「REM睡眠行動障害」などの特徴的な症状を伴うことが多いです。
他の認知症との関連
アルツハイマー型認知症でも、病状が進むと幻覚や妄想が見られることがありますが、レビー小体型認知症のように具体的で鮮明な幻視(特に人が見える)が初期から頻繁に現れることは比較的少ないとされています。アルツハイマー型では、主に「物を盗まれた」といった「もの盗られ妄想」や、見当識障害による混乱が目立ちます。血管性認知症などでも幻覚が見られる可能性はありますが、原因や症状の現れ方が異なります。
統合失調症による幻覚
統合失調症は、思考、感情、行動などをまとめる脳の働きが低下し、現実とそうでないことの区別がつきにくくなる精神疾患です。統合失調症の代表的な症状の一つに幻覚があります。
統合失調症の幻覚の種類
統合失調症で最もよく見られる幻覚は「幻聴」です。誰もいないのに声が聞こえる、悪口や命令が聞こえるなど、様々な内容の幻聴が本人を苦しめることがあります。
幻視も統合失調症の症状として現れることがありますが、レビー小体型認知症の幻視とは少し質が異なる場合があります。
内容: 漠然とした人影や、奇妙な形、無気味な光景などが見えることがあります。具体的な知人や家族が鮮明に見えるというよりは、不鮮明で捉えどころのない幻視が多い傾向があります。しかし、病状によっては具体的で不快な内容(怖い人物が見えるなど)の幻視が見られることもあります。
本人の反応: 幻視の内容に不安や恐怖を感じたり、混乱したりすることがあります。幻聴と合わせて現れることも多く、幻覚の内容に影響されて奇妙な行動をとることもあります。
統合失調症では幻覚の他に、「考えがまとまらない」「何を話しているか分からなくなる」といった思考の障害、意欲の低下、感情の平板化、対人関係の回避などの様々な症状が現れます。
せん妄による幻覚
せん妄は、病気や薬剤、環境の変化などが原因で、急激に意識障害や認知機能の低下が起こり、興奮や幻覚、妄想などを伴う精神状態です。特に高齢者に起こりやすいですが、年齢に関係なく起こりえます。
高齢者にせん妄が多い理由
高齢者は、様々な身体的な病気を抱えていることが多く、薬を複数服用している場合も少なくありません。また、脳機能の予備能が低下しているため、少しの体調の変化や環境の変化(入院や引っ越しなど)が、脳の機能に影響を及ぼし、せん妄を引き起こしやすいと考えられています。
せん妄の主な原因
せん妄の主な原因には、以下のようなものがあります。
身体的な病気: 感染症(肺炎、尿路感染症など)、脱水、電解質異常、発熱、痛み、心不全、呼吸不全、脳卒中、頭部外傷、手術後など、様々な全身の病気が原因となります。
薬剤: 睡眠薬、向精神薬、鎮痛薬、ステロイド、一部の抗生物質や抗ヒスタミン薬など、多くの種類の薬がせん妄を引き起こす可能性があります。複数の薬を同時に服用している場合もリスクが高まります。
環境の変化: 住み慣れた場所から病院や施設に移る、夜間の睡眠が妨げられる、見慣れない環境に置かれるなど。
離脱症状: アルコールや特定の薬剤を常用していた人が、急に摂取をやめた場合に起こる離脱症状としてせん妄が現れることがあります。
せん妄に伴う幻覚(幻視)は、レビー小体型認知症ほど鮮明でない場合が多いですが、不鮮明な人影や動物、奇妙なものなどが見えることがあります。幻視の内容は時間によって変化しやすく、本人は見えているものが現実かどうかの区別がつきにくく、混乱している様子が見られます。興奮したり、逆にぼんやりしたりと、意識レベルも変動しやすいのが特徴です。せん妄は原因を取り除くことで改善する可能性がありますが、原因の特定と早期の対応が重要です。
その他の精神疾患・神経疾患
上記以外にも、幻覚(幻視)が見られる可能性のある精神疾患や神経疾患があります。
うつ病: 特に重症のうつ病では、現実検討能力が低下し、幻覚や妄想を伴うことがあります。罪悪感や貧困に関する妄想とともに、幻視が見られることもあります。
双極性障害: そう状態やうつ状態の際に、病相と関連した幻覚や妄想を伴うことがあります。
パーキンソン病: 病状が進行したり、パーキンソン病の治療薬(特にL-DOPA製剤やドパミンアゴニスト)の副作用として幻視が現れることが比較的よくあります。小さな子どもや動物、人影などが見えることが多いとされています。
てんかん: てんかんの発作の一部として、視覚的な幻覚(光が見える、形が見えるなど)や、複雑な幻視(人物や風景が見えるなど)が現れることがあります。
脳腫瘍: 脳の視覚野など特定の部位に腫瘍ができると、その刺激によって幻視が見えることがあります。
脳血管障害(脳卒中): 脳梗塞や脳出血が特定の部位で起こると、幻覚や錯覚の原因となることがあります。
身体的な病気が原因の場合
精神疾患や神経疾患だけでなく、全身の様々な身体的な病気が脳機能に影響を与え、幻覚を引き起こすことがあります。
脳疾患
脳そのものに異常がある場合です。
脳炎: 脳の炎症が原因で、意識障害や幻覚、精神症状が現れることがあります。
脳血管障害(脳梗塞、脳出血): 脳の血流障害が、脳の機能に影響を及ぼし、特に視覚野の障害などによって幻視が見られることがあります。
頭部外傷後遺症: 頭部外傷の後に、脳の機能障害として幻覚が見られることがあります。
内科的な疾患
脳以外の臓器の機能が低下し、脳に影響を与える場合です。
重度の肝臓病・腎臓病: 肝機能や腎機能が著しく低下すると、体内に有害物質が蓄積し、脳機能に影響して肝性脳症や尿毒症といった状態になり、幻覚や意識障害を引き起こすことがあります。
内分泌疾患: 甲状腺機能異常、副腎機能異常、糖尿病の重症化などが、脳機能に影響し精神症状や幻覚を引き起こすことがあります。
代謝異常: 低血糖、高血糖、電解質バランスの異常(ナトリウム、カリウムなどの異常)なども、脳機能に影響しせん妄や幻覚の原因となります。
高熱: 特に子どもや高齢者では、高熱によって一時的に幻覚やうわごとが見られることがあります。
栄養不足: ビタミン(特にビタミンB群)の欠乏などが、脳機能に影響し幻覚を引き起こすことがあります。
これらの身体的な病気が原因で幻覚が見えている場合、原因となる病気を治療することが幻覚の改善につながります。
病気以外の原因・要因
幻覚が見えることは、必ずしも重篤な病気が原因とは限りません。一時的な要因や、病気とまではいえないような体調の変化によっても起こりうる可能性があります。
ストレスや疲労
過度な精神的ストレスや、極度の肉体疲労は、脳の機能を一時的に不安定にさせることがあります。特に、心身が極限状態にある場合や、感受性が高まっている時には、実際にはないものが見えたり聞こえたりすることがあります。これは一時的なものであり、休養をとったりストレスが軽減されたりすることで改善することが多いです。しかし、ストレスや疲労が長期にわたって続くと、精神的な不調につながり、幻覚が見えやすくなる可能性もあります。
薬の副作用
処方薬や市販薬の中には、副作用として幻覚(特に幻視や錯覚)を引き起こす可能性があるものがあります。特に高齢者は薬の代謝や排泄機能が低下しているため、少量でも副作用が出やすい傾向があります。
幻覚の副作用が知られている薬の例:
精神科の薬: 抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬など、特に高齢者や感受性の高い人では注意が必要です。
パーキンソン病治療薬: ドパミンを補充したり作用を強めたりする薬は、幻視の副作用がよく知られています。
ステロイド: 高用量を服用したり、長期にわたって服用したりした場合に精神症状(幻覚、妄想、抑うつなど)が出ることがあります。
抗コリン薬: 消化器系の薬、風邪薬、花粉症の薬、めまい止めなど、様々な薬に含まれており、特に高齢者でせん妄や幻覚の原因となることがあります。
一部の抗生物質、抗ウイルス薬
一部の心臓の薬、血圧の薬
新たに幻覚が見えるようになった場合、最近飲み始めた薬や、量が変わった薬がないか確認することも重要です。ただし、自己判断で薬を中止するのは危険です。必ず医師や薬剤師に相談してください。
睡眠不足や入眠時・覚醒時の幻覚
極端な睡眠不足は、覚醒状態での幻覚を引き起こす可能性があります。脳が疲弊し、現実と非現実の区別がつきにくくなるためと考えられます。
また、睡眠と覚醒の間の移行期には、比較的健康な人でも幻覚を体験することがあります。
入眠時幻覚: 眠りに入る直前に見る幻覚です。怖い映像(人影、虫など)や音、声など様々で、現実感があり、金縛りを伴うこともあります。
覚醒時幻覚: 目覚める直前に見る幻覚です。入眠時幻覚と同様に、視覚や聴覚、触覚など様々な感覚の幻覚が見られることがあります。
これらの幻覚は、脳が完全に覚醒していない状態で、夢の内容が現実と混ざり合って知覚されるようなものと考えられています。一時的なもので、病的なものではないことが多いですが、頻繁に起こる場合や、日中の眠気が強いなどの症状を伴う場合は、ナルコレプシーなどの睡眠障害の可能性も考えられるため、専門医に相談すると良いでしょう。
幻覚が見える場合の対処法
ご自身や大切な方に幻覚が見えるようになった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。最も重要なのは、安易な自己判断をせず、専門家の助けを求めることです。
まずは専門医に相談する
「幻覚で人が見える」という体験は、様々な原因が考えられます。原因によっては早期に適切な治療を開始することで症状が改善したり、進行を遅らせたりできる可能性があります。そのため、まずは専門医に相談することが非常に重要です。
何科を受診すべきか?
精神科: 統合失調症、うつ病、せん妄など、精神疾患が疑われる場合に適しています。
神経内科: レビー小体型認知症、パーキンソン病、脳血管障害など、脳や神経系の病気が疑われる場合に適しています.
心療内科: ストレスや心身症と関連している可能性も考えられる場合に選択肢となります。
かかりつけ医: 普段から診てもらっている医師にまず相談してみるのも良いでしょう。必要に応じて適切な専門医を紹介してもらえるでしょう。
もの忘れ外来/認知症専門外来: 認知機能の低下が見られる場合に適しています。
複数の科が考えられる場合や、原因がはっきりしない場合は、まずはかかりつけ医に相談するか、精神科や神経内科を受診することを検討しましょう。
いつ相談すべきか?
幻覚が初めて見えた時
幻覚が繰り返し見えたり、頻繁になったりしてきた時
幻覚の内容が苦痛(怖い、不快など)を伴う時
幻覚以外にも、物忘れ、言動の変化、体の動きの異常、睡眠の問題など、他の症状がある時
ご本人やご家族が不安や困惑を感じている時
これらのサインが見られたら、できるだけ早く専門医に相談することが大切です。
診察時に伝えるべき情報
診察をスムーズに進めるために、以下の情報を整理しておくと役立ちます。
いつ頃から幻覚が見えるようになったか
どのような内容の幻覚か(具体的に何が見えるか、鮮明か、不鮮明か、動きはあるかなど)
幻覚はどのくらいの頻度で見えるか、一日の中で見えやすい時間帯はあるか
幻覚が見えている時の本人の様子や反応
幻覚以外に気になる症状(物忘れ、体の震え、歩き方の変化、不眠、意欲低下、気分の落ち込み、言動の変化など)はあるか
現在服用している全ての薬の名前と量(処方薬だけでなく、市販薬、サプリメントなども含む)
これまでの病歴(既往歴)、特に脳の病気、精神疾患、内科疾患の病歴
飲酒や喫煙の習慣
最近の生活の変化(引っ越し、入院、家族の状況など)
睡眠の状態(眠れているか、悪夢を見るか、寝言や体の動きはあるかなど)
可能であれば、ご家族や身近な人が診察に付き添い、本人の様子を具体的に説明することも有効です。
幻覚が見える人への接し方
幻覚を見ている本人に対して、どのように接すれば良いか悩むことがあるかもしれません。大切なのは、本人の体験を頭ごなしに否定せず、安全と安心を確保することです。
やってはいけないこと
頭ごなしに否定する: 「そんなものは見えていない」「気のせいだ」と強く否定すると、本人は理解してもらえないと感じ、傷ついたり混乱したり、怒ったりする可能性があります。本人にとっては見えている現実なので、むやみに否定するのは避けましょう。
幻覚の内容に過度に入り込む、同意する: 「あそこに人がいるんだね、どんな人?」などと、幻覚の内容に合わせて会話を深掘りしすぎると、本人の混乱を助長したり、幻覚の世界から抜け出しにくくしたりする可能性があります。
からかったり、責めたりする: 幻覚は本人が意図的に見ているわけではありません。からかったり、責めたりすることは、本人の尊厳を傷つけ、関係性を悪化させます。
望ましい接し方
本人の体験を受け止める姿勢を示す: 「あなたにはそう見えているのですね」「大変ですね」など、共感的な姿勢で耳を傾けましょう。大切なのは、見えているものを事実として受け入れるのではなく、本人が「そう感じている、そう見えている」という体験に寄り添うことです。
現実との区別を優しく促す: 本人が混乱している場合、「私には見えていないけれど、あなたには見えているのですね」と伝えたり、部屋の状況(「この部屋には今、あなたと私だけですよ」など)を優しく伝えたりすることで、現実と幻覚の区別を促すことができます。
安心できる環境を整える: 薄暗い場所や、騒がしい場所では幻視が見えやすくなることがあります。明るさを適切に調整したり、落ち着いた静かな環境を整えたりすることが有効な場合があります。
安全を確保する: 幻覚に促されて危険な行動(見えている人に話しかけようとして外に出ようとする、見えているものを避けようとして転倒するなど)をとる可能性がないか注意しましょう。転倒しやすい場所に物を置かないなど、環境整備も大切です。
話題をそらす: 幻覚について話し続けることが本人にとってつらい、あるいは混乱するという場合は、楽しい話題や日常的な話題にそらしてみるのも一つの方法です。
医療専門職に相談する: 幻覚への対応に困った場合は、医師や看護師、精神保健福祉士などの専門職に相談しましょう。具体的なアドバイスや支援を受けることができます。
幻覚の症状や原因によって、対応は異なります。特に認知症に伴う幻視の場合は、本人の不安を和らげ、穏やかに過ごせるような関わり方が重要になります。統合失調症などの精神疾患の場合は、幻覚の内容よりも本人の苦痛や感情に寄り添い、治療につなげることが大切です。
まとめ
「幻覚で人が見える」という現象は、レビー小体型認知症や統合失調症、せん妄といった様々な病気の症状として現れる可能性があります。また、ストレス、疲労、睡眠不足、薬の副作用など、一時的な要因によって起こることもあります。
この体験は、ご本人にとっても、周りの方にとっても大きな不安を伴うものです。しかし、原因を特定し、早期に適切な対処や治療を行うことで、症状が改善したり、穏やかに過ごせるようになったりする可能性があります。
「もしかしたら…」と不安を感じたら、一人で抱え込まず、まずは専門医に相談することを強くお勧めします。精神科、神経内科、心療内科、またはかかりつけ医に相談し、適切な診断とアドバイスを受けましょう。
ご本人や大切な方に幻覚が見える場合、その体験を頭ごなしに否定せず、本人の気持ちに寄り添いながら、安全を確保し、現実との区別を優しく促すような接し方が大切です。専門家のサポートも積極的に活用しましょう。
この記事が、「幻覚で人が見える」という現象に直面している方やそのご家族の不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
免責事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療を代替するものではありません。ご自身の症状について不安がある場合は、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。