アスペルガー症候群とは、発達障害の一種であり、現在は「自閉スペクトラム症(ASD)」という診断名に統合されています。コミュニケーションや対人関係における特性、そして特定の興味や活動への強いこだわりなどが主な特徴として挙げられます。これらの特性は、その人の個性や強みとして現れることもあれば、日常生活や社会生活で困難をもたらすこともあります。この記事では、アスペルガー症候群(ASD)の定義や診断基準、大人、子供、女性に見られる具体的な特徴、高機能自閉症との違い、診断プロセス、そしてご本人や周囲の方が特性とどのように向き合い、どのような配慮ができるのかについて詳しく解説します。アスペルガー症候群(ASD)の特性を深く理解し、より豊かな関係性を築くためのヒントになれば幸いです。
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アスペルガー症候群(ASD)とは?定義と診断基準
アスペルガー症候群は、1940年代にオーストリアの小児科医であるハンス・アスペルガーによって報告された、発達障害の一種です。知的な遅れや言語発達の遅れがないにも関わらず、コミュニケーションや対人関係に困難を抱えることが特徴とされていました。
しかし、医学の進歩とともに、自閉性障害、アスペルガー症候群、広汎性発達障害といったカテゴリー分けでは個々の特性の現れ方に幅がある実態を捉えきれないことが明らかになってきました。このため、2013年にアメリカ精神医学会が出版した診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)以降は、「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの診断名に統合されています。
「スペクトラム」という言葉は、「連続体」を意味します。これは、ASDの特性の現れ方やその程度が、一人ひとり異なり、連続的な幅を持っていることを示します。つまり、非常に目立つ特性を持つ人もいれば、ぱっと見ただけでは分かりにくい、いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。アスペルガー症候群と呼ばれていた特性を持つ人も、現在はASDに含まれます。
ASDの診断は、専門家(医師、心理士など)による発達歴の詳細な聞き取り、行動観察、心理検査など、多角的な視点からの評価に基づいて総合的に行われます。単一の検査だけで診断が決まるわけではありません。
DSM-5におけるASDの診断基準
DSM-5における自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準は、主に以下の2つの領域における持続的な困難に基づいて診断されます。
-
社会的コミュニケーションと相互作用における持続的な困難:
- 様々な状況での対人関係や感情のやり取りの困難さ。
- 例:あいづちを打つタイミングが分からない、相手の表情や気持ちを読み取ることが難しい、自分の感情を適切に表現したり共有したりするのが苦手。
- 非言語的コミュニケーション行動の困難さ。
- 例:視線を合わせるのが苦手、表情やジェスチャーが乏しい、相手の身振り手振りや声のトーンから感情を読み取ることが難しい。
- 対人関係を発展させ、維持し、理解することの困難さ。
- 例:友達を作るのが苦手、年齢相応の人間関係が築きにくい、集団の中でどう振る舞えばよいか分からない、ごっこ遊びなどが苦手。
- 様々な状況での対人関係や感情のやり取りの困難さ。
-
限定された反復的な様式の行動、興味、活動:
- 常同的または反復的な運動、物の使用、または会話。
- 例:手をひらひらさせる、特定の物を並べる、エコーラリア(おうむ返し)。
- 同一性への固執、ルーティンへの融通の利かない執着、変化への抵抗。
- 例:毎日の決まった手順にこだわる、急な予定変更に強い抵抗を示す、特定の道順でないと不安になる。
- 極めて限定され、固定された、異常なほどの強度を持つ興味。
- 例:特定の分野(電車、恐竜、昆虫など)に異常なほど詳しく、それ以外の話題には関心を示さない、特定のキャラクターやテーマに強く執着する。
- 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍麻さ、あるいは環境の感覚的側面に対する異常な関心。
- 例:特定の音や光を非常に不快に感じる(感覚過敏)、痛みに非常に鈍感(感覚鈍麻)、特定の肌触りや匂いに強くこだわる、物の特定の側面(光の反射など)に異常なほど興味を示す。
- 常同的または反復的な運動、物の使用、または会話。
これらの基準に加え、症状が早期発達期に出現すること、症状が社会生活や職業生活において臨床的に意味のある障害を引き起こしていること、他の精神疾患ではうまく説明できないことなどが診断の際に考慮されます。診断は、これらの特性が総合的に判断された上で行われるため、専門家にご相談いただくことが重要です。
アスペルガーの主な特徴【3つのポイント】
アスペルガー症候群(ASD)の主な特徴は、前述のDSM-5の診断基準にも示されているように、大きく3つのポイントにまとめることができます。これらの特性が、その人の日常生活や社会との関わり方に様々な影響を与えます。
特徴①:コミュニケーションの困難さ
ASDのある人は、言葉によるコミュニケーションだけでなく、言葉以外のコミュニケーションにおいても特徴的な困難を抱えることがあります。これは、単に「話すのが苦手」ということではなく、コミュニケーションそのものの性質を理解したり、状況に合わせて適切に使い分けたりすることが難しいという側面を含みます。
会話における特徴
- 一方的な話し方になりがち: 自分の興味のある話題については、相手の関心に関係なく一方的に話し続けてしまうことがあります。相手が退屈しているサインや、話題を変えたいと思っている気持ちに気づきにくい傾向があります。
- 言葉を文字通りに解釈する: 比喩、皮肉、冗談、慣用句などの抽象的な表現を理解するのが難しいことがあります。「頭を冷やしてきなさい」と言われると、本当に頭を冷やしに行ってしまったり、「猫の手も借りたいほど忙しい」と言われても、猫が何の役に立つのか理解できなかったりすることがあります。
- 場の空気に合わない発言をしてしまう: 会話の流れや、その場の雰囲気、相手の感情などを察することが苦手なため、不適切なタイミングで場違いな発言をしてしまい、周囲を戸惑わせてしまうことがあります。
- 質問の意図を理解しにくい: 相手が質問する意図や背景を読み取るのが難しく、質問されたことに対して正確に答えようとしすぎるあまり、かえって会話がスムーズに進まなくなることがあります。
- 遠回しな表現が理解できない: 日本語には「〜した方がいいんじゃない?」のような遠回しな依頼や、「ちょっと考えておきます」のような曖昧な断り方などが多くありますが、これらの真意を理解するのが苦手なことがあります。ストレートで直接的な表現を好む傾向があります。
非言語的なサインの理解の難しさ
コミュニケーションは言葉だけでなく、表情、声のトーン、ジェスチャー、姿勢、視線など、非言語的なサインも重要な役割を果たします。ASDのある人は、これらの非言語的なサインを読み取ったり、自分で適切に使ったりすることが難しい場合があります。
- 表情や声のトーンから感情を読み取るのが苦手: 相手が怒っている、悲しんでいる、喜んでいるといった感情を、表情や声のトーンだけでは察しにくいことがあります。そのため、相手の気持ちに気づかず、不適切な対応をしてしまうことがあります。
- 視線を合わせるのが苦手: コミュニケーション中に相手と視線を合わせ続けることが難しい、あるいは逆に不自然なほどじっと見つめてしまうことがあります。
- ジェスチャーや身振り手振りが少ない、あるいは不自然: 会話中に自然なジェスチャーを交えるのが苦手だったり、逆に定型的なジェスチャーを反復的に行ってしまったりすることがあります。
- 場の空気を読み取れない: 会議中の真剣な雰囲気、パーティーでの賑やかな雰囲気など、言葉になっていないその場の雰囲気を察知することが苦手なため、場にそぐわない行動や発言をしてしまうことがあります。
これらのコミュニケーションの困難さは、悪気があるわけではなく、脳の特性によるものです。周囲の人は、コミュニケーションのスタイルに特性があることを理解し、分かりやすく、明確な言葉で伝えるなどの配慮をすることで、お互いの理解が深まる可能性があります。
特徴②:対人関係の困難さ
コミュニケーションの困難さは、そのまま対人関係の築き方や維持の困難さにつながることがよくあります。集団の中での立ち振る舞いや、友人・知人との関係性において、以下のような特徴が見られることがあります。
暗黙の了解や場の空気が読めない
社会には、言葉で明文化されていない「暗黙の了解」がたくさん存在します。例えば、「初対面の人にはプライベートな質問をしすぎない」「人が集まる場では、自分だけ目立つ行動をしない」「忙しそうな人に長話で引き止めない」などです。ASDのある人は、このような暗黙のルールを察知したり、経験から学んだりすることが難しい場合があります。
- 場の空気に合わない行動: 会議中に立ち歩く、図書館で大声で話すなど、その場のルールや雰囲気に合わない行動をしてしまい、周囲から浮いてしまうことがあります。
- 冗談が通じない、または真に受ける: 相手が冗談で言ったことを真に受けてしまい、不機嫌になったり混乱したりすることがあります。逆に、自分が冗談を言っても、相手にその意図が伝わらなかったり、不適切に受け取られたりすることもあります。
- 相手の気持ちや意図を察することが苦手: 相手の表情、声色、置かれている状況などから、相手が何を考えているのか、何を求めているのかを察するのが難しいことがあります。そのため、相手が求めていないアドバイスをしたり、傷つけるようなことをうっかり言ってしまったりすることがあります。
一方的な関わりになりがち
自分の興味や関心に基づいた一方的な関わり方になることも、対人関係の困難さの一因となることがあります。
- 自分の話ばかりしてしまう: 自分の好きな話題になると、相手の反応に関わらず一方的に話し続けてしまい、会話のキャッチボールが成り立たないことがあります。
- 相手の興味に関心を持ちにくい: 相手がどのようなことに興味があるのか、どのような経験をしてきたのかといったことに関心を持つことが苦手な場合があります。そのため、会話の幅が広がりにくく、深い人間関係に発展しにくいことがあります。
- 人間関係の距離感が独特: 親しくない相手にもプライベートな話をしたり、逆に親しい相手でも一定の距離を置いてしまったりと、人との距離感の取り方が定型発達の人とは異なることがあります。
- 友達を作るのが難しい: 遊びのルールを理解できなかったり、集団の中でどう振る舞えばいいか分からなかったりするため、子供の頃から友達を作ることに難しさを感じる場合があります。大人になっても、共通の趣味や関心がないと人間関係を築きにくいことがあります。
これらの対人関係の困難さは、本人が「人とうまくやりたくない」と思っているわけではなく、社会的な状況を理解したり、他者の視点を想像したりすることに特性があるために生じます。具体的なルールや期待される行動を明確に伝えることや、少人数の落ち着いた環境での交流を促すことなどが有効な場合があります。
特徴③:限局された興味やこだわり
ASDのある人は、特定の物事や活動に対して非常に強い興味を示したり、特定のやり方やルーティンに強くこだわったりする傾向があります。これは、その人の能力や知識を驚異的に深める原動力となることもありますが、時に柔軟性を欠き、日常生活に支障をきたすこともあります。
特定の対象への強い関心
特定の分野やテーマに対して、他の人が驚くほど強い関心を持ち、膨大な知識を蓄えることがあります。
- マニアックな知識: 電車、恐竜、天文学、特定の歴史上の人物、特定のキャラクター、特定のゲームなど、興味を持った対象について、年齢や性別に関わらず驚くほど詳細な知識を持っています。専門家顔負けの知識を持っている人も少なくありません。
- 集中力の高さ: 興味のあることに関しては、時間を忘れて没頭し、高い集中力を発揮します。この集中力は、特定の分野で才能を発揮する上での強みとなることがあります。
- 興味の範囲が狭い: 興味の対象が非常に限定されており、それ以外の分野にはほとんど関心を示さないことがあります。学校の勉強や仕事でも、興味のある分野以外は全く手につかないという人もいます。
ルーティンへの強いこだわり
毎日決まった手順で行動したり、物事を特定のやり方で行ったりすることに強くこだわる傾向があります。予期せぬ変化や、いつもと違うやり方に対して強い不安や抵抗を示すことがあります。
- 決まった手順にこだわる: 朝起きてから家を出るまで、学校や職場での休憩時間、家に帰ってからの過ごし方など、一日の流れや行動の手順が細かく決まっており、それが崩れると混乱したりパニックになったりすることがあります。
- 変化への抵抗: 慣れ親しんだ環境や状況が変わることに対して強い抵抗を示します。引っ越し、転職、クラス替え、店のレイアウト変更など、大きな変化だけでなく、些細な変更にも戸惑うことがあります。
- 特定の物や場所にこだわる: いつも同じ服を着る、いつも同じ席に座る、いつも同じ道を通るなど、特定の物や場所に強く執着することがあります。
- 感覚過敏・鈍麻: 音、光、匂い、味、肌触りなどの感覚刺激に対して、極端に敏感である(感覚過敏)か、または極端に鈍感である(感覚鈍麻)場合があります。特定の音を非常に不快に感じて耳を塞ぐ、特定の食べ物の食感が苦手で食べられない、痛みに鈍感で怪我に気づきにくい、特定の素材の服しか着られないなど、感覚特性は一人ひとり異なります。この感覚特性が、日常生活における「こだわり」として現れることもあります。例えば、特定の肌触りの服しか着られない、特定の音を避けるために特定の場所に行かないなどです。
これらのこだわりや限定された興味は、本人の安心感を保つために重要な役割を果たしている場合もあります。無理にやめさせようとするのではなく、なぜそれにこだわるのか、その理由や背景を理解しようと努めることが大切です。また、変化が必要な場合は、事前に丁寧な説明を行い、段階的に慣らしていくなどの配慮が有効です。
【年代・性別】アスペルガーの特徴
アスペルガー症候群(ASD)の特性は、子供の頃から見られますが、成長とともにその現れ方が変化したり、社会的な経験を通してカモフラージュするスキルを身につけたりすることもあります。また、男女でも特性の現れ方に違いがあると言われています。
子供に見られる特徴
幼少期から学齢期にかけて、特に集団生活の中でASDの特性が目立ちやすくなります。
集団行動や友達との関わり
- 集団遊びに参加しにくい: ルールのある遊びや、友達と協力して行う遊びにうまく参加できないことがあります。一人遊びを好んだり、他の子供たちの輪に入れなかったりすることがあります。
- 遊びのルールにこだわる: 遊びのルールを融通なく守ろうとしたり、自分が決めたルールを友達に押し付けようとしたりすることがあります。
- 一方的な関わり: 自分の好きな話題(特定のキャラクターや乗り物など)について一方的に話し続け、友達の関心を引きつけられないことがあります。
- 感情表現の苦手さ: 自分の気持ちを言葉で伝えたり、相手の気持ちを察したりするのが苦手なため、友達との間で誤解が生じやすくなります。
- いじめの対象になりやすい: 空気が読めない、変わった行動をするなどの理由から、他の子供からからかわれたり、いじめの対象になったりするリスクがあります。
特定の遊びや物への執着
- 特定の遊びを反復する: 同じ遊びを飽きずに繰り返したり、特定のブロックやミニカーなどを延々と並べたりすることがあります。
- 特定の物への強い愛着: 特定のおもちゃや本、服などに強く執着し、それがないと不安になったり、手放すことを嫌がったりします。
- 特定のテーマへの強い興味: 電車、恐竜、昆虫など、特定のテーマに強い関心を持ち、図鑑を読み込んだり、関連する物を集めたりします。
その他にも、感覚過敏(特定の音が苦手、特定の服のタグを嫌がるなど)や、急な予定変更にパニックを起こすなどの特徴が見られることがあります。学校の先生や保護者が、子供の特性を理解し、適切なサポートを行うことが重要です。
大人に見られる特徴
大人になると、社会生活や職業生活の中で特性による困難が顕在化したり、あるいは子供の頃からあった特性に自分なりに対処する術を身につけていたりします。診断に至らず、長年「生きづらさ」を感じながら過ごしている人も少なくありません。
大人のコミュニケーションの特徴(会話、言葉の解釈例)
- 会議や雑談が苦手: 職場の会議で議論のポイントを掴めなかったり、非公式な雑談で周囲にうまく溶け込めなかったりすることがあります。
- 敬語や社交辞令が難しい: 状況に応じた適切な言葉遣いや、本音と建前を使い分ける社交辞令の理解が難しい場合があります。
- 曖昧な指示が理解できない: 「よしなにやっておいて」「だいたいこんな感じで」といった曖昧な指示が理解できず、困惑することがあります。具体的で明確な指示を求める傾向があります。
- 相手の感情を読み取り損ねる: 相手の表情や声のトーンから、怒っている、困っているといった感情を察知できず、関係が悪化してしまうことがあります。
- 正直すぎる発言: 相手を気遣うことなく、思ったことをそのまま口にしてしまい、無神経だと思われてしまうことがあります。
大人の対人関係の特徴(あるある例)
- 職場の人間関係に悩む: 部署内での連携がうまくいかない、上司や同僚とのコミュニケーションに誤解が生じる、飲み会など非公式な場での振る舞いが分からないなど、職場の人間関係に困難を抱えやすいです。
- 友人関係が狭い、または特定の相手と深い関係を築く: 多くの人と広く浅く付き合うよりは、特定の趣味や関心を共有できる少数の人と深い関係を築くことを好む傾向があります。
- 距離感が近すぎる、または遠すぎる: 初対面の人にもプライベートなことを質問したり、逆に家族や恋人にも気持ちを共有するのが苦手だったりと、対人関係の距離感に特性が見られることがあります。
- 騙されやすい: 相手の真意を読み取るのが苦手なため、悪意のある人に利用されたり、騙されたりするリスクがあります。
大人の興味・こだわりの例
- 仕事に関連する専門分野への没頭: 興味のある分野の仕事に就くと、驚異的な集中力と知識を発揮し、その分野で突出した成果を上げる人もいます。
- 趣味への強い没頭: 特定の趣味に膨大な時間とお金を費やし、その分野では専門家以上の知識やスキルを持つことがあります。
- ルーティンワークの得意さ: マニュアル化された作業や、決まった手順で行う作業を正確にこなすことに長けている人もいます。
- 変化への適応が難しい: 部署異動、引っ越し、仕事内容の変更など、環境や状況の変化に強いストレスを感じ、適応に時間がかかることがあります。
大人の感覚過敏・鈍麻
子供の頃から感覚特性を抱えている場合、大人になってもその影響が続きます。
- 特定の音や光が苦手: オフィスの蛍光灯の音、人の話し声、混雑した場所の騒音などが非常に不快で、集中力を維持できないことがあります。
- 特定の素材の服が着られない: 肌触りの悪い素材、タグ、縫い目などが気になり、特定の服しか着られないことがあります。
- 特定の匂いが苦手: 香水、食べ物の匂い、洗剤の匂いなどに耐えられず、体調を崩すことがあります。
- 痛みに鈍感: 怪我や病気の初期症状に気づきにくく、発見が遅れてしまうことがあります。
大人の仕事における特徴(軽い症状も含む)
ASDの特性は、仕事の適性にも影響を与えることがあります。
- 得意なこと:
- ルールや手順が明確な定型業務
- データ分析や研究など、高い集中力と深い知識が必要な専門業務
- 特定の分野における知識を活かす仕事
- 一人で黙々と取り組める作業
- 苦手なこと:
- 臨機応変な対応が求められる仕事
- チームでの連携や頻繁なコミュニケーションが必要な仕事
- 複数のタスクを同時にこなすマルチタスク
- 抽象的な指示や不明確なルールが多い仕事
- 変化が多い環境
特性が軽い場合でも、職場環境とのミスマッチによって困難が生じることがあります。適切な配慮や環境調整を行うことで、ASDのある人も能力を最大限に発揮できる可能性があります。
過剰適応や二次障害のリスク
ASDのある人は、社会に馴染もうとして、自分の特性を無理に抑え込んだり、周囲に合わせて振る舞おうとしたりすることがあります。これを「カモフラージュ」や「過剰適応」と呼びます。カモフラージュは一時的に社会生活を円滑にするかもしれませんが、本来の自分を偽り続けることは大きな精神的負担となり、燃え尽き症候群や、うつ病、不安障害、適応障害などの二次障害を引き起こすリスクを高めます。
女性に見られる特徴
ASDの特性は、男性に比べて女性では気づかれにくい、あるいは現れ方が異なる場合があると言われています。これは、女性は男性よりも社会的な関係性を重視する傾向があり、コミュニケーションや対人関係における困難さを補うために、周囲を観察して学習したり、頑張って定型発達の人に合わせて振る舞ったり(カモフラージュ)するのが得意な人がいるためと考えられています。
- カモフラージュが得意: 周囲の人の話し方や振る舞いを真似て、定型発達の人らしく見せることが巧みな場合があります。しかし、内面では強いストレスを感じて疲弊していることがあります。
- 人間関係の複雑さに悩む: 女性同士の微妙な人間関係や、感情的なやり取り、共感を求められる状況などに難しさを感じ、悩むことがあります。
- 特定の人物への強いこだわり: 恋愛対象や特定の友人に対して、依存的になったり、過度に執着したりすることがあります。
- 感覚過敏による生活の困難: 化粧品や洗剤の匂い、特定の素材の服、下着の締め付けなど、感覚過敏が日常生活の多くの場面で困難を引き起こすことがあります。
- 診断が遅れやすい: 特性が目立ちにくいため、幼少期に診断されず、大人になってから、あるいは二次障害を発症してから診断に至るケースが多く見られます。
ASD女性に言われる「顔つきの特徴」といった俗説も存在しますが、科学的な根拠は乏しいと言えます。特定の顔つきがASDと直接的に関連しているわけではありません。むしろ、特性からくる表情の硬さや、感情表現の乏しさが、外見上の印象に影響を与えている可能性は考えられます。重要なのは外見ではなく、本人の抱える困りごとや特性を理解することです。
アスペルガー症候群と高機能自閉症の違い
かつて、「アスペルガー症候群」と「高機能自閉症」は、それぞれ異なる診断名として使われていました。主な違いは、知的な遅れの有無と、幼児期の言語発達の遅れの有無でした。
- アスペルガー症候群: 知的な遅れがなく、幼児期の言葉の発達も概ね正常であるとされていました。
- 高機能自閉症: 知的な遅れがないが、幼児期に言葉の発達に遅れが見られたとされていました。
しかし、どちらも社会性やコミュニケーションの困難さ、限局された興味やこだわりといった中核的な特性は共通していました。特性の現れ方には個人差が大きく、これらの診断名の境界線が曖昧であったこと、そして知的な遅れや言語発達の遅れの有無だけで区分することの限界から、現在は知的な遅れや言語発達の有無に関わらず、「自閉スペクトラム症(ASD)」という一つの診断名に統合されることになりました。
つまり、現在ではアスペルガー症候群や高機能自閉症という診断名は医学的には使われず、どちらもASDの一部として捉えられています。
重要なのは、かつての診断名にこだわることではなく、「自閉スペクトラム症」という連続体の中で、その人がどのような特性をどのような程度で持っているのか、そしてその特性によってどのような困りごとを抱えているのかを具体的に理解し、その人に合った支援や配慮を行うことです。診断名はあくまで理解のための入口であり、個々の特性に焦点を当てることが最も重要です。
アスペルガー(ASD)の診断について
アスペルガー症候群(ASD)の診断は、専門家(医師や心理士)によって慎重に行われます。自己判断や、インターネット上の情報だけでの判断は避けるべきです。
診断のプロセス
ASDの診断は、単一の検査や短い面談だけで決まるものではなく、複数の情報源や専門的な評価ツールを用いて総合的に判断されます。一般的な診断プロセスは以下のようになります。
- 予診・問診: 本人(子供の場合は保護者)から、生育歴、家族歴、現在の困りごと、対人関係の様子、興味・関心、こだわりなどについて詳しく聞き取りを行います。子供の場合は、母子手帳や幼稚園・学校での様子を記録した連絡帳なども診断の手がかりとなることがあります。
- 行動観察: 診察場面や、必要に応じて専門的な施設などで、本人のコミュニケーションの取り方、対人相互作用、行動の特徴などを観察します。
- 心理検査: 知能検査(WAIS, WISCなど)を行い、知的な発達の状況を評価します。また、ASDの診断に特化した構造化面接や行動評価ツール(ADOS-2, ADI-Rなど)が用いられることもあります。これらは、専門家が一定の基準に基づいて対人交流やコミュニケーション、限定された行動などを評価するためのツールです。
- 他の専門家との連携: 必要に応じて、学校の先生や職場の同僚、家族など、本人をよく知る第三者からの情報収集を行うことがあります。また、医師と心理士、作業療法士などが連携して診断を進めることもあります。
- 総合的な診断: これらの情報に基づいて、医師が総合的に判断し、DSM-5の診断基準に照らし合わせて診断を確定します。ASD以外の可能性(他の精神疾患や発達障害など)も考慮して鑑別診断が行われます。
診断には時間を要することもあり、複数回の受診が必要になることが一般的です。診断を受けることで、自身の特性を理解し、適切な支援や社会的なサービスに繋がる道が開けることがあります。
診断テストとは
ASDの診断においては、いくつかの専門的な評価ツールが用いられますが、これらはあくまで診断を補助するためのものであり、単体で診断が下されるわけではありません。
- ADOS-2(自閉症診断観察尺度 改訂版): 専門家が本人との特定の課題や遊びを通して、コミュニケーションや対人相互作用、限定された反復行動などを観察し、評価するためのツールです。
- ADI-R(自閉症診断面接 改訂版): 保護者や、本人を幼少期からよく知る養育者に対して、生育歴や現在の状況について構造化された質問リストを用いて行う面接です。特に幼少期の特性に関する情報を得るのに役立ちます。
AQテストなどセルフチェックについて
インターネット上には、「AQテスト(自閉症スペクトラム指数)」や「アスペルガー診断チェックリスト」といった、セルフチェックや簡易的な検査ツールが存在します。これらは、
- AQテスト: イギリスのサイモン・バロン=コーエン博士らが開発した質問紙形式のテストで、成人版と子供版があります。社会性、コミュニケーション、想像力、注意の切り替え、こだわりといった側面から、ASDの特性傾向を測ります。
- その他のセルフチェック: 様々な機関やウェブサイトが独自のチェックリストやテストを提供しています。
これらのセルフチェックは、
アスペルガーの特性への向き合い方・周囲の接し方
アスペルガー症候群(ASD)は、「治る」というものではなく、その人の神経学的な特性です。重要なのは、特性を否定するのではなく、理解し、その上でどのように特性と向き合い、社会生活を円滑にしていくかを考えることです。
本人が特性と向き合うためのヒント
診断を受けた人も、そうでない人も、自身の特性を理解することは、生きづらさを軽減するための第一歩となります。
- 自己理解を深める: 自分がどのような状況で困難を感じやすいのか、どのようなことに強い興味を持つのか、どのような感覚特性があるのかなど、自身の特性を客観的に理解する努力をしましょう。書籍や専門機関のセミナー、同じ特性を持つ人の体験談などを参考にすることができます。
- 得意なこと、苦手なことを把握する: 自分の強みや得意な分野を知り、それを活かせる環境や活動を見つけましょう。同時に、苦手なことや困難を感じやすい状況を把握し、それに対する工夫や対処法を考えましょう。
- 苦手なことへの工夫:
- コミュニケーション: 会話のルールを意識的に学ぶ、話す前に一度頭の中で整理する、筆談やメールなど文字でのコミュニケーションを活用する、曖昧な表現は確認するなど。
- 対人関係: 少人数の落ち着いた場を選ぶ、共通の趣味を持つ人との交流を深める、無理に大勢と付き合おうとしない、アサーティブな自己表現(自分の気持ちを率直かつ丁寧に伝える)を学ぶなど。
- こだわり・変化: 予定を視覚的に管理する(カレンダー、スケジュール帳)、急な変更があった場合の対処法を事前に考えておく、こだわりをポジティブに活かせる趣味や仕事を見つけるなど。
- 感覚特性: 苦手な感覚刺激を避ける工夫(イヤーマフを使う、サングラスをかける、特定の場所に行かない)、心地よい感覚刺激を取り入れるなど。
- 支援や配慮を求める: 職場や学校、家族など、周囲の人に自身の特性や困りごとについて理解を求め、必要な支援や配慮を依頼しましょう。合理的配慮(障害のある人が、障害のない人と同じように社会生活を送れるよう、個別の状況に応じて行われる配慮)を求めることは権利です。
- 専門機関に相談する: 一人で抱え込まず、医師、カウンセラー、発達障害者支援センターなどに相談しましょう。専門家からのアドバイスやサポートを受けることで、適切な対処法が見つかったり、二次障害を防いだりすることができます。
- 休息を大切にする: 社会に合わせて振る舞うことは、多くのエネルギーを消耗します。意識的に休息を取り、心身の疲労を回復させることが重要です。
周囲の人ができる配慮や工夫
ASDのある人が社会生活を送りやすくするためには、周囲の人の理解と協力が不可欠です。悪気がない行動であることを理解し、少しの配慮で大きな助けになることがあります。
- コミュニケーションにおける配慮:
- 明確で具体的に伝える: 曖昧な表現や比喩、皮肉は避け、ストレートで分かりやすい言葉で伝えましょう。「〇〇をしてください」「△△は〜なので、□□のようにしましょう」のように、具体的に、肯定的な言葉で伝えるのが効果的です。
- 一つの指示につき一つ: 複数の指示を一度に与えると混乱することがあります。一つずつ区切って、順番に指示を出すようにしましょう。
- 重要なことは文字でも伝える: 口頭での指示だけでなく、メールやメモなど、文字で伝えることで誤解を防ぎやすくなります。視覚的な情報を活用するのも有効です(図や写真など)。
- Yes/Noで答えられる質問をする: 開放的な質問よりも、Yes/Noや選択肢で答えられる質問の方が本人にとって答えやすい場合があります。
- 質問の意図を伝える: なぜその質問をするのか、質問の背景や目的を伝えることで、本人も答えやすくなります。
- 一方的な話を遮る場合は丁寧に: 本人が自分の関心のある話題について一方的に話し続ける場合、突然話を遮るのではなく、「ごめんね、ちょっと時間がないから、その話はまた後で聞かせてもらえるかな」のように、理由を添えて丁寧に伝えることで、本人への負担を軽減できます。
- 対人関係における配慮:
- 暗黙のルールを言葉にする: その場のルールや期待される振る舞いなど、普段は言葉にしない暗黙の了解を、必要に応じて具体的に伝えましょう。
- 距離感を理解する: 本人の心地よい距離感を尊重し、無理に親密な関係を押し付けないようにしましょう。
- 悪気がない行動であることを理解する: 空気が読めない発言や、不適切な行動があっても、悪気があるわけではなく特性によるものであることを理解し、感情的に責めたりせず、必要に応じて冷静に状況を説明したり、今後の対応を伝えたりしましょう。
- こだわり・変化における配慮:
- こだわりを頭ごなしに否定しない: なぜそのこだわりがあるのか、その理由や背景を理解しようと努めましょう。無理にやめさせるのではなく、代替案を提案したり、こだわりを活かせる場面を探したりすることも有効です。
- 変化は事前に予告する: 予定変更や環境の変化がある場合は、できるだけ早く、具体的に予告し、本人に心の準備をする時間を与えましょう。可能であれば、変更の理由や、新しい状況について丁寧に説明しましょう。
- 感覚特性への配慮:
- 苦手な感覚刺激を把握し、可能な範囲で減らす: 本人がどのような音、光、匂い、肌触りなどを苦手としているのかを聞き取り、可能な範囲で環境調整を行いましょう(席替え、照明の調整、特定の匂いを避けるなど)。
- 休憩やクールダウンの場所を確保する: 刺激が多い場所では疲弊しやすいため、静かで落ち着ける場所で休憩できる機会を設けることが有効な場合があります。
これらの配慮は、特別扱いではなく、「その人が能力を発揮し、安心して過ごすために必要な配慮」です。互いの特性を尊重し、オープンなコミュニケーションを心がけることが、より良い関係性を築く鍵となります。
アスペルガーについて相談できる機関
アスペルガー症候群(ASD)の特性について悩みや困りごとがある場合、一人で抱え込まず、専門機関に相談することが重要です。適切な支援を受けることで、本人の生きづらさを軽減し、周囲との関係性を改善できる可能性があります。
- 医療機関:
- 精神科・心療内科: 発達障害の診断や、うつ病や不安障害といった二次障害の治療を行います。専門医(精神保健指定医など)がいるか、発達障害の診療経験が豊富かなどを事前に確認すると良いでしょう。
- 脳神経内科: 子供の場合は小児科や児童精神科、発達外来などがあります。
- 発達障害者支援センター: 都道府県や政令指定都市に設置されており、発達障害のある本人や家族からの相談に応じ、関係機関との連携調整、情報提供、専門的な支援などを行います。診断の有無に関わらず利用できる場合が多いです。
- 児童相談所・市町村の窓口: 子供の発達に関する相談は、児童相談所や各市町村の担当窓口でも受け付けています。
- 地域の相談機関: 就労移行支援事業所、相談支援事業所、障害者基幹相談支援センターなど、地域には様々な相談機関があります。本人の年齢や困りごとの内容(就労、生活、対人関係など)に応じて、適切な機関を紹介してもらうことができます。
- ハローワークの専門援助部門: 発達障害のある人の就職支援を行う窓口です。
相談する際は、具体的な困りごとや、いつ頃からどのような特性に気づいたかなどを整理しておくと、スムーズに話を進めることができます。初めて相談する場合は、予約が必要な場合がほとんどですので、事前に連絡して確認しましょう。
まとめ|アスペルガーの特性理解のために
この記事では、アスペルガー症候群(現在は自閉スペクトラム症:ASDに統合)の主な特徴について、定義や診断基準、コミュニケーション、対人関係、限局された興味・こだわりといった3つの主要な側面から詳しく解説しました。また、子供、大人、女性それぞれの年代や性別による特性の現れ方の違いや、高機能自閉症との関係、診断プロセス、そして特性との向き合い方や周囲の接し方についても触れました。
アスペルガー症候群(ASD)の特性は、脳の機能的な違いによるものであり、決して「わがまま」や「努力不足」ではありません。その特性ゆえに、日常生活や社会生活で困難を感じることがありますが、それは本人の意思とは関係なく生じるものです。
特性を理解し、適切なサポートや環境調整を行うことで、困難を軽減し、本人の持つ能力や強みを最大限に活かすことが可能になります。特定の分野への深い知識や驚異的な集中力、高い記憶力、正直で誠実な人柄などは、ASDのある人の素晴らしい強みとなり得ます。
もしご自身や周囲の方が、アスペルガー症候群(ASD)かもしれないと感じたり、特性による困りごとを抱えていたりする場合は、一人で悩まず、ぜひ専門機関に相談してください。専門家からの適切な診断やアドバイス、そして周囲の理解とサポートが、ご本人やご家族がより安心して、自分らしく生きていくための大きな力となります。アスペルガーの特性を深く理解し、互いの違いを認め合い、より良い共生社会を築いていくことが重要です。
免責事項: 本記事は、アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症:ASD)に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や助言を代替するものではありません。個々の状況については、必ず専門の医療機関や相談機関にご相談ください。記事中の情報に基づいて行われたいかなる行為についても、当方は一切の責任を負いません。